2018.05.16
M&A用語解説:CA(Confidential Agreement:秘密保持契約書)
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
M&Aに際しては様々な書類や情報のやり取りが発生します。
最終的な実現に至るまで社内外に対して秘匿性が必要M&Aでは、CA(もしくはNDA)と呼ばれる秘密保持契約書の締結が欠かせません。
CAについて、その内容や締結時期、売り手側・買い手側が注意すべき点をまとめました。
CA(Confidential Agreement:秘密保持契約書)とは
CAとはConfidential Agreementの略で秘密保持契約書を指します。DA(Non-Disclose Agreement)と呼ばれることもあります。
M&Aの際、売り手側企業は様々な内部情報や書類をM&A仲介会社やM&A検討先に開示することになります。それらの情報や書類を、相手方の同意なく第三者に開示しないことを約束する契約書がCAです。
CAの締結先
M&Aに際しては売り手企業、買い手企業の二者のみですべてが完結するケースは少なく、金融機関、M&A仲介会社、弁護士、税理士等、様々な企業や人が関係します。
そのため、原則それらすべての関係者とCA契約を締結することが望ましいです(ただし弁護士、税理士他はその職務の特性上、法律で守秘義務が課せられています)。
CA締結の有無に関わらず、M&A関係者から情報漏れのないような体制や姿勢を取ることも必要です。
CAの記載内容
CAの一般的な記載事項は下記のとおりです。
・秘密情報の定義
・秘密情報の開示可能な範囲
・秘密情報の利用目的の制限(M&A検討に限る等)
・利用終了時の秘密情報の取り扱い
・秘密保持義務違反の場合の制裁・救済措置
・有効期間
・準拠法及び管轄裁判所
なお、CAの締結タイミングとしては、M&A仲介会社や買い手候補先がデューデリジェンスに入る前が一般的です。
また、有効期間があり、1~5年の間で定められるケースが多いです。
売り手側・買い手側の注意点
M&A検討のための情報は秘密情報の宝庫なので、秘密情報取り扱いには細心の注意を要します。
売り手側、買い手側から見たCA及び秘密情報取り扱いの注意点は下記のとおりです。
売り手側の注意点
大企業や上場会社を対象とするM&Aを除けば、CAの内容は多くの場合ドラフトが存在します。内容を確認して、売り手側に不利なものがない一般的な内容であれば、ドラフト通りにCA契約が締結されるケースが多いです。
前提として、弁護士・会計士・税理士や金融機関の役職員はCA契約の存在に関わらず守秘義務が課されているため、CAは形式的な側面もあります。
秘密情報については、契約終了時の資料の変換・破棄・データ削除もCAに盛り込むことに加え、資料などをすべて破棄したと最後に一筆入れる工程を踏むことで、より安心感を持って情報の開示が可能になります。
また、M&Aの検討を進めることで合意してCAを締結する際は、M&Aの成功を想定しがちです。しかし、M&Aが約定しない可能性もあるため、M&Aが約定しない場合も想定してCAの内容に盛り込む必要があります。
買い手側の注意点
上場企業がM&Aを検討する場合、金融機関等の内部ではプロジェクト名にコードネームが付され、企業名ではなくコードネームで社内では会話されることが一般的です。
外部からは非常に奇異に感じられる慣習ですが、上場会社の場合はM&Aを検討している(買い手、売り手いずれも)との情報が洩れるだけでも株価に影響を与える可能性があるからです。
そのため、情報の取り扱いには細心の注意が払われることになりますが、この姿勢は対象が未上場企業の場合も同様です。
ただし、売り手側から開示された情報がすべて機密情報に当たらない場合もあります。上場会社の場合、決算資料はインターネット上に開示されており機密情報には該当しません。
未上場企業の場合でも、官報に計算書類が開示されているケースもありますし、登記簿謄本は法務局で入手可能です。
上場企業・未上場企業に関わらず、売り手側企業から受領する書類のすべてが機密資料には当たるとは限らないのです。
関係者と書類などを共有する際、機密情報に該当するか否かの切り分けが必要になるケースもあるため、事前に機密情報か否かを把握すると、その後のやり取りがスムーズに進みやすくなります。
まとめ
CAやNDAと呼ばれる秘密保持契約書は、M&Aを進める際に関係者間で必ず締結されます。
M&Aプロセスの最初の第一歩ですから、どちらか一方に不利な内容の契約でない限り、CA締結プロセスであまり時間を費やすと時間の無駄になってしまいます。
合理的な内容のCAを売り手側・買い手側の双方が納得した上で締結し、スムーズにM&Aのディーデリジェンスのプロセスに移りましょう。
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。
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