2018.05.16
企業再編に株式交換という選択肢を!今話題のM&Aでシナジー効果を狙う方法とは
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
経営合理化のために企業再編を行う、というフレーズは聞きなれたものになりましたが、再編の現場では支配関係をめぐる企業内対立が避けがたい問題になります。
そのような時に有効と言われるのが、株式交換による完全子会社化です。親会社と子会社それぞれの企業風土を維持しながら、シナジー効果で売上増加が期待できるという特性があります。
今回はこの株式交換について、詳しくご紹介します。
株式交換とは
株式交換とは、対象会社を100%子会社とするためのM&Aによる企業再編手法のひとつです。子会社の株主が保有する株式を、親会社の株式に交換することで実行します。
例えば株式の交換比率が1:2であれば、子会社の株主が保有する株式はこれまでの1株が親会社の2株になるわけですね。逆に親会社の株式2株を子会社の1株に交換します。
株式交換の方法
対象会社を完全子会社化するためには、対象会社の株式全てを取得する必要があります。
そのために交換する親会社の株式が無い場合には、新株を発行したり現金で支払ったりすることも可能です。あるいは親会社のさらに親会社の株式を対価とすることもできます。
株式交換の手続きの流れ
最初に、親会社と子会社との間で株式交換契約を締結します。そこで定めるのは株式交換の対価や割当方法、効力発生日などです。
次に行うのが、事前の開示手続きです。両社の株主に対して、株式交換を承認するか否かの判断をするために必要な情報を開示します。
具体的には、開示内容を記載した書面を両社の本店に備えて株主が閲覧できるようにしておきます。
その上で、株主総会の特別決議による承認を株式交換の効力発生日前日までに受ける必要があります。特別決議は議決権の過半数を有する株主が総会に出席し、株主の議決権の⅔以上が必要です。
反対株主が株式買取請求権を行使した場合には、株式の買取を行うことになります。もし委任状勧誘などによる株式交換への反対があった場合、出席株主の議決権の⅓を超えると議案は否決されます。
株主総会の特別決議で承認されれば、契約書の効力発生日をもって効力発生となり、株式交換は終了です。あとは事後の開示手続きにより、株式交換を行ったことを周知します。
もし、完全親会社が交付する株式交換の対価相当額が純資産額の⅕以下であれば、完全親会社での株主総会は必要ありません。
株式交換比率とは
買い手と売り手それぞれ1株の価値の割合をどの程度にするのか、株式交換比率によって定めます。例えば1:3とあれば、子会社の1株と親会社の3株を交換することになるわけですね。
比率は両社の交渉により決めますが、市場はその発表に反応して、株価も交換比率に近い割合に収斂していきます。また株価が動くのは通常、時価総額の少ない子会社の方になります。
対価の割当比率の決定方法は、会社法では定められていないため、企業価値を様々な側面から算出することになります。算出方法は全部で3種類です。
まずマーケットアプローチとして、市場株価法・類似会社比較法・類似取引比較法があります。
次のインカムアプローチは、将来期待できる利益やキャッシュフローに基づくものです。代表的な方法としてDCF法があります。
3つめはコストアプローチでは、貸借対照表の純資産をベースに計算します。時価純資産法と簿価純資産法とがあります。
株式交換のメリット
株式交換は、子会社化に伴う買収資金が必要ないことが大きなメリットです。現金で株式を買い取る場合、時には銀行からの借り入れや社債発行などが必要になります。
また、100%子会社化する際に、子会社の株主全ての承諾を得る必要がないこともメリットと言えます。株式を買い取る買収の場合、個別の株主と交渉しますが、一部の株主が応じない場合には完全子会社化は実現しません。
子会社側の株主としては、受け取った親会社の株式の値上がり益を得られる可能性があります。そもそも業績の効率化と向上を目指して子会社化をするので、企業価値が高まることで株価も上昇しやすくなります。
株式交換のデメリット
子会社化においては、対象企業の債務を含む全てを引き継ぐ必要があります。他にも事業には必要ない資産もそのまま引き継がなければなりません。
またメリットと表裏一体ですが、交換により取得した株式が値下がりすれば、損失につながります。親会社が新株発行により株式交換をする場合には、1株利益が希釈化するので株価下落の可能性もあるでしょう。
まとめ
株式交換は資金的なコストをかけずに手軽に対象会社を子会社化できます。ただし株主総会での特別決議が必要ですし、そのためには株主が納得するような株式交換比率を設定することも必要です。
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。
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