三菱UFJ信託 豪運用会社を買収 3000億円超
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ信託銀行は31日、オーストラリアの銀行最大手、コモンウェルス銀行(CBA)傘下の資産運用会社(9社)の全株式を取得し、買収すると発表した。買収額は約3280億円で、国内金融機関による資産運用会社の買収額としては過去最大級。買収手続きは2019年半ばに完了予定で、実現すれば三菱UFJ信託はアジア・オセアニア地域で最大の資産運用会社となる。……記事引用元:https://mainichi.jp/articles/20181031/k00/00e/020/226000c
10月31日、三菱UFJ信託がオーストラリアのコモンウェルスバンク・オブ・オーストラリア(CBA)傘下の資産運用会社9社の株式を約3,000億で100%取得すると公表しました。
読者の興味から遠い気がしていて大企業ネタはあまり書いていませんが、筆者はかつてオーストラリアに駐在していたことからなんとなく懐かしくなり今回のニュースを取り上げました。
日系金融機関のM&A
日本ではあまり知られていませんが、CBAといえばオーストラリアで1,2位を争う規模の銀行で、駐在時代は大変お世話になってました。
近年オーストラリアの金融業は活況で他にもクロスボーダーM&Aはいくつかあり、直近では2018年8月に第一生命がオーストラリアの保険会社の保険事業を約520億円で買収していました。
特にUFJ信託は積極的で、これまで2015年のUBS子会社や2018年のNeuberger Berman子会社など数十億から数百億程度の買収を行ってきました。
戦略はいたってシンプルで、日本国内での成長は期待できないから海外にうって出ようということだと思います。
旗を立てたUFJ信託
遡ること1年ちょっと前の2017年8月にこんな記事が出ており、UFJ信託の池谷社長のインタビューなのですが下記のように話しています。
今までにない1兆円規模で買収を進める。買収は米欧に加えてアジアの資産運用会社も視野に入れ、マジョリティーにこだわって実施する。
そして今回のM&Aを見てみると、欧米ではなくアジア・オセアニア地域で、従来の数百億規模を超えた約3,000億規模ということで、見事に1年前のインタビュー内容に合致しています。
そういう戦略だったんだから当たり前だろうという意見もありますが、現実は内外の環境は刻々と変化していく中で言った通りのことを実行することは中々できません。
この点、大企業は良くも悪くも違います。一度対外的に「これをやる」と言った内容を簡単には変更しません。たとえそれが変更すべきものだったとしても。
UFJ信託もこのインタビューが出たからにはとにかく買収するんだという意識が強烈に働いていたと思います。
もちろんインタビュー時点である程度今回の買収の目処が立っていた可能性もありますが。
旗を立てる効果
このように外部に宣言する、つまり旗を立てると色んな効果があります。
社内的にいえば、大企業はセクショナリズムが異常なほど発生しているケースが多く、M&Aプロジェクトを進めようと思っても社内の協力を得ることが難しいケースは多々あります。
この点、対外的に公表し、それに基づく組織や個人の目標が与えられれば、驚くほどスムーズに進むようになります。
イメージは下りのエスカレーターを頑張って登っていたのに、急に上りにスイッチが切り替わったようなものです。
対外的には、投資銀行や大手証券会社などが毎月のようにM&A案件を持ち込むようになります。
大企業には投資銀行などと毎月定例mtgを設けてM&A案件の情報を仕入れている会社がよくありますが、具体的かつ大きな規模のM&Aをやると宣言したなら投資銀行も本気になります。手数料が稼げますからね。
このようにIR資料やトップインタビューを見ていると、この会社M&Aするなというのは結構な確率でわかります。大企業はそれが顕著です。
もしも自社に関連する会社がこのようなリリースを出した際は、売り込んで見るのも一興だと思います。
冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士
KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。
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