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買収がうまくいく会社・いかない会社|フォーサイト総合法律事務所大村代表コラム Vol.6 | M&A BANK

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2018.07.03

買収がうまくいく会社・いかない会社|フォーサイト総合法律事務所大村代表コラム Vol.6

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ベンチャー界隈No.1との呼び声の高いフォーサイト総合法律事務所・大村代表パートナー弁護士をお招きして、ベンチャー企業経営者にとってのM&Aについてたっぷりお話しいただきました。
IPOを目指していた、またはIPOを目指しているものの、M&A(バイアウト)についても理解を深めたい経営者必見の情報が満載。普通はなかなか教えてもらえないM&Aの実情についても大公開してくださいます。

買い手にとってM&Aは「賭け」

買収はある意味賭けのようなもので、リスクも伴います。上場前にM&Aをするとなると上場審査の対象になりますし、上場したあと東証一部に行くまでの段階でM&Aをするのも、市場変更審査の対象になります
ですから、私がクライアントによくアドバイスしているのは、IPOも市場変更審査の観点からすると、基本的に余計なことをしないのが一番ですよ、ということです。余計なこととは、ベンチャー投資とか、買収のことで、そういうことをやるほど論点も、減点材料も増えます。こういった審査は減点主義ですからやめておくべきです。もちろん、早くIPOをしたり、市場を変更したりということがすべてではないと思いますし、ビジネスチャンスを優先して、IPO等のスケジュールをずらしてでも買収すべき場合もあるとは思いますが。

どうすれば「賭け」を有利に進められる?

この界隈にいるといろんな情報が目に入ります。例えばどこの会社が売りに出回っているかがわかったりします。だいたいそういう出回り物件は誰も買収しないし、出資もしません。そういう情報ではダメなので、もっと川上で探さないといけません

大量のM&Aを行って業容を拡大してきたある上場企業は、常に100社ぐらいの仲介会社や銀行や証券会社等から案件が持ち込まれるそうです。だから、「あの会社なら買い取ってくれるかもしれない」という案件がたくさん舞い込んできます。その中から一部を選んで、M&Aを進めているんです。
バイサイドは多くの接点を持って案件を見るのが大事ですが、その中で成功するM&Aの確率は一般的に言ってかなり低いと思います。そんな簡単じゃないんです。

それに、ある程度の予算も必要です。予算が100億円もあれば、案件を紹介することはいくらでもできます。上記の会社は予算をけっこう取っているはずです。そういうところに案件は集まってきます。
ですから、「買収で一発逆転したいので、どんな案件でももってきてください」というわりには予算が1億円しかない、という企業もありますが、それではバイサイドで成功することはできません。

準備できる予算には時価総額が関わってくることがありますが、IT企業などであれば利益の50倍ぐらいはつきます。最終利益2億円の場合、時価総額が100億円に届くことになります。最近のマザーズ上場企業では、時価総額何百億、おそらく600倍とかの価値がついたりすることもあります。
ただし、毎年の利益が2億円ぐらいではそんなに成長を見込めないので、最終利益で二桁億ぐらいはないと、M&Aも積極的にできません。

また、上場したから公募増資するという場合は、時価総額100億円の場合、10億円調達すると10パーセントになります。これが時価総額1000億円の企業なら、その1パーセントで10億円に達するので、時価総額によって調達できる金額は大きく変わってきます。
それに、デットで調達できるのはせいぜい10億円くらいです。なのでやはり、十分な資金調達のためには時価総額を伸ばしておく必要があります。時価総額を伸ばすためには業績を上げる必要がある。業績が上がっていないと、M&Aはできない。全部が絡みあっているんです。ですから、上場会社も上場準備会社も基本的に、本業に邁進して、アンテナを高く立てながら、マッチするM&A案件をバシバシ探していくのが一番いいです。

よくない買収戦略とは?

上場した会社の多くは資金調達をしているし利益も出ているので、BS上、現預金を持っています。私がよく言っているのは、BS(現預金)でPL(利益)を買いに行くようなM&Aは失敗するからやめなさい、ということです。

例えば、某有名金融機関から紹介された、普通のリアル店舗ビジネスで利益が出ている企業を買収したいからとデュー・ディリジェンスを依頼されたことがありました。バイサイドの企業に話を聞いてみると、新事業に対するシナジーがほとんどありませんでした。
おそらく買収先企業のオーナーは、バイアウトした後、そのうちいなくなります。そのあと誰が店舗展開や運営について判断するのかも決まっていないし、誰もその業界の知識やノウハウを持っていません。確かにその企業は利益が出ていましたが、そのオーナーが何十年かけて続けてきたから利益が出ていたのであって、オーナーが代わればそれも難しくなります。失敗するのでやめたほうがいいとアドバイスしたところ、その買収はやめになりました。
当事務所としては、法務デュー・ディリジェンスの案件を受任すればそれなりのフィーが入ってきましたが、プロとして見過ごせませんでした。弁護士の場合、職業上法務だけしかアドバイスしないという方が多く、こんなアドバイスをする弁護士はあまりいらっしゃらないと思いますが、当事務所の弁護士は、クライアントに不利益を与える状況下でフィーをとるなんてプロとして失格だと考えておりますし、過去に経験したことや実績を踏まえて法務にとどまらないアドバイスができるよう心がけております。大事なことだと思いますから、買収をする際はそういう意見をくれる人がいるといいですね。もちろん当事務所にご相談いただいても結構です(笑)。


次回更新は7月7日(土)、M&Aで専門家がチェックする重要ポイントについて、詳しく解説いただきます。

■大村 健氏:フォーサイト総合法律事務所‐代表パートナー弁護士
代表を務める法律事務所は、生え抜きの弁護士・司法書士が所属し、幅広い業種のベンチャー企業に対する法的支援業務を展開する。IPOや市場変更、M&Aの支援実績も多数。複数の上場企業で社外役員も務める。
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