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#19【番外編】ユーザベース社に代わりバーチャルホールディングスについて勝手に解説 | M&A BANK

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2018.05.02

#19【番外編】ユーザベース社に代わりバーチャルホールディングスについて勝手に解説

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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当社グループのバーチャルホールディングス化について

株式会社ユーザベースは、2018年5月1日から新経営体制に移行し、当社グループをバーチャルホールディングス(仮想持株会社)として組織を再構築いたしますのでお知らせいたします。

当社グループはこれまで執行役員体制を執り、各担当執行役員に権限委譲を進めることで、事業ごとに迅速な意思決定ができるようにしてまいりました。迷わず挑戦できる、「自走できる組織」であることが、当社グループの強みでもあります。

今回これをさらに推し進め、バーチャルホールディングス化することで、SPEEDA・NewsPicks・entrepedia・FORCAS・UB Venturesなど、事業単位であらゆる意思決定ができる体制を実現し、「自走できる組織」であることをより強化・加速してまいります。

記事引用元:https://www.uzabase.com/company/news/uzabase-virtual-holdings/

【番外編】グループ内組織再編の解説

5月1日、ユーザベースはバーチャルホールディングス(仮想持株会社)として組織を再構築することを公表しました。
この説明だけだとほとんどの方が理解不能でしょう。さらに上記のリリースを読んでも意味がわからないという声をちらほら聞きました。ユーザベースの社員ですらよくわからなそうです。
そこで、いつもお世話になっているユーザベース社に代わり、本件について勝手に解説したいと思います。今回は直接M&Aとは関係ないので番外編としていますが、グループ内組織再編もM&Aを検討するときにはよく出てくる論点ですので参考になればと思います。

仮想通貨ブームに乗っかって、なんとなく仮想とつけてみただけだろうと思っているそこのあなた、おそらく理由はそうではありません。組織のあり方というのはビジネス上重要な要素の一つで、その会社の経営戦略が反映されます。
また、(特に上場会社の)組織形態を議論する場合は、少なくともビジネス上の観点、法形式上の観点の二つを意識することが肝要ですので、その点も強調して書いてみます。

バーチャルホールディングス化と目的

ビジネス上の観点

まずビジネス上の観点から行われたことを整理します。バーチャルホールディングス化という抽象的な言葉を分解すると、大きく分けて以下の2つの動きがあると思います。

①グループ全社の経理や人事などのコーポレート機能をユーザベースに集結させること
②各事業に権限と責任を負わせること

①はコスト削減の文脈で考えればイメージがしやすいかと思います。②について若干補足すると、企業規模が拡大していくと事業のスピードが失われてくること、当事者意識が薄まってくるなど弊害が出てきます。
そこで各事業責任者に意思決定権を与え、併せてPL責任を負わせることでこれらの弊害に対応することができると考えられます。

法形式上の観点

ではなぜこのような方法をとったかといえば、それはホールディングス制のメリットのみを取ることができるためです。これは法形式上の観点です。
ホールディングス制とは、ざっくりいうと持株会社といわれる親会社がコーポレート機能のみを担い、各子会社で事業を行う組織体制のことです。これには上記のバーチャルホールディングスと同じようなメリットがあるのですが、一方で新会社を作るなどの事務、金銭、時間的コストがかかるというデメリットがあります。
この点、今回は法的な組織変更を行わず、ユーザベース内に持株会社の機能を持たせることでこのデメリットを回避しています。

わかりにくいので丁寧に書きますが、ホールディングス制とバーチャルホールディングス制の違いは、コーポレート機能のみを行う持株会社を新たに作るのか、ユーザベースの中に持株会社に相当する全社のコーポレート機能を作るのか、ということです。
また、仮に将来一般的なホールディングス制に移行すると判断したとしてもその下地となる組織ができているし、逆に従来の組織に戻すと判断しても法的な組織形態は変更していないため簡単に戻すことができるという経営の柔軟性を保つことができます。

ちなみに、新会社を作ったり、合併したりといった法的な組織変更は行っていないことは外部からもわかります。
もしこのような組織変更を行った場合は適時開示といわれる、投資家にとって重要な会社情報を開示するルールに基づき情報開示しなければなりませんが、今回は適時開示はなく、PR情報としてホームページに掲載されています。
参考までに、ユーザベースが2018年2月に子会社設立を決定した際は「子会社の設立及び新たな事業の開始に関するお知らせ」という形で適時開示がされています。

実は他社事例がある


ところで、このバーチャルホールディングスはユーザベースだけが取り入れている組織体制ではありません。
2017年3月に新生銀行グループは仮想グループ本社を新生銀行内に設立し、グループ各社の総務や財務などをここに集約すると公表しています。この仮想グループ本社はユーザベースのバーチャルホールディングスと実質的には同じものとだと考えられます。

これは当時の新生銀行のリリースで、とてもわかりやすいです。組織が大きい場合の方が今回のような組織変更はわかりやすいということもありますね。
http://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2016/
170322_group_headquarters_j.pdf/

ユーザベースは多分今までも事業単位で意思決定をしているし、全社のコーポレートはほぼユーザベースで行ってきてるだろうし、各事業はSPEEDA以外別会社だし、今までと何が違うのだろうという感覚を持つ人が多いと思います。ただ、今後M&Aや新会社設立などを積極的に行っていくと思いますので、今回組織変更を行った効果はそのうち効いてくるのではないでしょうか。

今回は番外編ということでユーザベースのバーチャルホールディングス化を取り上げましたが、いかがでしたでしょうか。
冒頭のユーザベースのリリース文からは、とにかくスピードと柔軟性を意識していることが伝わってきました。個人的には、これは現在の企業経営において最も重要な要素だと考えています。
以前もスタートトゥデイの解説記事で、経営戦略としてのM&Aにおいてはスピードと柔軟性(将来のオプション)を維持することが重要と書きましたが、本件もこれに通じるところがありますね。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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