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2018.05.14

#24 さが美の買収にみる錬金術としてのM&A

冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

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ベルーナ/さが美を59億円で買収

このM&Aの何が興味深いのか

5月7日、通販事業運営のベルーナは呉服専門店のさが美を買収することを公表しました。一般的にはあまりニュースになっていませんが、中々興味深いディール(M&A案件のことをディールと呼ぶとM&Aに詳しい人と思わせる効果があります)なので取り上げたいと思います。

といっても今回注目するのは買い手であるベルーナでも買収されたさが美でもなく、さが美の大株主であるバイアウトファンドについてです。

バイアウトファンドとは

そもそもファンドとは、投資家から集めた金で投資を行い、そこから生じた利益を分配するビジネスです。その中でもバイアウトファンドは、簡単にいうと未上場企業や業績不振の上場企業などの株式を取得し、企業価値を高めた上で売却することで利益を得るファンドのことをいいます。

つまり、最終的にM&Aにより売却する前提で、M&Aを行い企業の株を買うということを生業としている組織です。まさにM&Aのプロと呼ぶことができるでしょう。そして、今回のディールでもこのバイアウトファンドが登場します。

本件でバイアウトファンドは結局いくら儲けたのか?

話をさかのぼると、2016年10月、ユニー(現ユニー・ファミリーマートホールディングス、以下ファミマ)は当時子会社で、業績不振だったさが美の株式をアスパラントグループ(AG)に売却すると発表しました。AGは一株56円で2,199万4,126株購入し、購入金額は約12億円でした。そして2018年5月、今回のリリースの通りAGは一株150円で売却することになり売却金額は約33億円となりました。

つまり、AGはわずか1年半で12億円で買った株を33億円で売却し、約20億円の利益を手にすることとなりました。これこそファンドの真骨頂で、買った会社を短期間でバリューアップして高値で売却することにより大きな利益を得ることに成功しました。まさに錬金術としてのM&Aと言えます。

もちろんこれは一般的には簡単なことではありません。買収時点では将来高値で売れる保証はどこにもない中で、買収後自らの力で業績を伸ばし、そして自らの力で売却先を見つけてくる必要があるため、ファンドは大きなリスクを背負っています。

ですが、本件に関してはそうとも言い切れない気がしています。

損をしたのは誰か


そもそも、筆者はこのM&Aを賞賛することはできません。2016年10月にAGがさが美の株式を一株56円で買いたいという提案があった時に、実はニューホライズンキャピタル(NHC)という別のバイアウトファンドも一株90円で買いたいという提案をしていました。それにもかかわらず、ファミマはAGに売るという意思決定をしました。ファミマはさが美とNHCの信頼関係がないなど、色々と理由を言っていますが、これはそんな難しい話ではありません。

Aが90円、Bが56円で買うと言ってきたら、Aに売るのが当たり前だろうということです。違うのであれば少なくとも納得できる理由を株主に説明する必要があります。なぜならファミマは上場会社で多くの株主がおり、その株主に代わって経営を任せられているのがファミマの取締役なのです。そのため取締役は株主の利益を最大化する義務を法的に負っているのです。

にも関わらずファミマは低い売却金額を提示したAGにさが美株を売却し、ファミマは本来得られる利益を得られなかったことになります。結局損をしたのはファミマの株主ということになったのです。このM&Aから1年半後、AGはまんまと大きな利益を得ることになったのは上記の通りですが、AGに落ち度はありません。AGに売ったファミマの経営判断が筆者には納得できないのです。

実態はわかりませんが、外から見る限りはAGによる買収後のさが美は目新しい経営改革や業績の回復などはなかったように思います。にも関わらず1年半の間に3倍近い金額で売却できるようになるということは、やはり当初の購入金額、つまりファミマによるさが美株の売却金額が安すぎたとしか考えられないのです。

なぜファミマの経営陣がこんな判断をしたのかは不明ですが、事実としてファミマとさが美の取引銀行は三菱UFJ銀行であり、AGの投資家は三菱UFJ銀行である点は記載しておきます。

上場会社が上場会社である理由は、誰でも、簡単に、共通のルールで取引を行うことができる点に尽きます。今回の一連の取引はこのルールから逸脱しているように筆者には思えます。

ベンチャーは話が違う

少し熱くなりましたが、この記事はベンチャー経営者の読者が多いと思いますので誤解のないように説明すると、上記はあくまでも上場企業の話であって、非上場のオーナー企業については関係ありません。経営者が100%の株式を持っているようなオーナー企業が本件のような2者択一を迫られた場合は、どちらを選ぼうが経営者の自由です。なぜなら経営者自身が株主なので自分の好きなようにしていいのです。

最近あったケースで言えば、先日ベーシック社の秋山社長からフォームラン社を買収した際、ベーシックは一番高い金額のオファーではなかったという話を聞きました。フォームランはおそらく経営者が株式を保有するオーナー企業ですので、誰にいくらで売ろうが経営者の自由なのです。

これが上場企業だと、株主と経営者が別なので経営者は株主の利益を最大化するような行動をとる必要があるのです。

今日はかつてないほど真面目な話をした気がしますが、いかがでしたでしょうか。是非読者の皆さんの意見を聞いてみたいところです。

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冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。
フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。
その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。
帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。
同時に、Idealink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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