M&A BANK Copyright©idealink Inc., All rights reserved.

#23 武田薬品によるシャイアー買収、買収金額は史上最高金額だが〇〇は最高金額ではなさそう | M&A BANK

M&Aニュース

M&A BANK > M&Aニュース > 上場企業M&A > #23 武田薬品によるシャイアー買収、買収金額は史上最高金額だが〇〇は最高金額ではなさそう

2018.05.11

#23 武田薬品によるシャイアー買収、買収金額は史上最高金額だが〇〇は最高金額ではなさそう

冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

  1. HOME
  2. Twitter
  3. Facebook
  4. はてなブックマーク

武田薬、シャイアー買収で合意 生き残り賭けた7兆円の巨額買収

[東京 8日 ロイター] – 武田薬品工業(4502.T)は8日、アイルランド製薬大手シャイアー(SHP.L)の買収で合意したと発表した。買収総額は約460億ポンド(約6兆8000億円)にのぼり、実現すれば、ソフトバンクグループ (9984.T)による英ARMホールディングス買収を抜き、日本企業による過去最高額の買収案件となる。これにより、売上高は、日本の製薬企業として初めて世界トップ10入りを果たす。世界市場での生き残りを賭けた巨額買収となるが、柱となる新薬開発にうまく結び付けられるかは不透明だ。

クリストフ・ウェバー社長・CEO(最高経営責任者)は電話会議で「コストカットがメーンではない。両社が一緒になってより強くなれる。競争力を強化するためにはグローバルなプレゼンスが必要」と述べた。今回の買収で後期開発段階にある新薬のパイプラインが強化されるほか、収益性の高い米国での売上比率が高まる。しかし、本社は日本に置くと明言した。また、人員削減の可能性はあるものの、現時点で、その規模は言えないとした。

両社が同日締結した契約によると、シャイアーの株主に対してシャイアー株1株につき現金30.33米ドルおよび武田薬の新株0.839株または米国預託株式(ADS)1.678株のいずれかを割り当てる。

武田は今年3月28日に買収検討を表明。その後、金額を引き上げながら5回の提案を行い、4月24日に、1株49.01ポンドで暫定合意していた。

シャイアーの取締役会は全会一致で株主に賛成票を投じるように推奨することを決定。また、武田の取締役会も、新株発行を承認するための臨時株主総会において、賛成の投票を行うように推奨する方針を全会一致で決めた。今後は、両社の株主から賛成を得られるかどうかが焦点となる。買収は、2019年上期(1―6月期)に完了する予定。

記事引用元:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-09/P8FSRF6JIJV101

武田薬品によるシャイアー買収

5月8日、武田薬品はアイルランドの製薬大手シャイアー買収について合意したと公表しました。この買収金額が約7兆円と日系企業によるM&Aの最高金額ということもあり大きなニュースになっています。

分析記事でも書こうと思ったのですがすでにそのような記事がたくさんあってやる気をなくしたため、あえてマニアックな論点を取り上げたいと思います。

「アドバイザー報酬」も最大なのか?

下記の記事によると、本件に関する助言報酬は合計200億円規模になる可能性があると記載があります。正確な金額はおいおい明らかになるでしょう。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30251050Z00C18A5EE9000/

そもそも助言報酬とはなんぞやということですが、他にもM&Aアドバイザー報酬や仲介手数料など様々な言い方があり、要はM&Aを行う当事者に対して外部の専門家がアドバイスしたことに対する報酬です。アドバイザーには、投資銀行や証券会社などのM&Aプロジェクト全体を管理するFA(ファイナンシャルアドバイザー)と呼ばれる会社や、主に財務DDや法務DDを担当する会計士や弁護士などが含まれます。

本件では、買い手である武田薬品のアドバイザー、売りであるシャイアーのアドバイザーに対してそれぞれが支払った金額の合計が約200億円くらいになるのではと日経新聞は言っているということです。武田薬品が支払った部分がこのうちいくらかは不明ですが、通常は買い手の方が報酬金額は多くなるため、約200億というのが本当であればそのうち100億~150億程度ではないでしょうか。

過去の最高額事例

買収金額自体が歴代最高金額であれば当然アドバイザー報酬も最高かといえば、それはわかりません。
過去にさかのぼると、2006年にオリンパスがイギリスのジャイラスを約2,000億円で買収した際にアドバイザーに支払われた報酬等が約700億円というケースがあり、筆者が知る限り世界でも歴代最高額だと思います。違ったらこっそり教えてください。違和感を感じた方も多いと思いますが、これは買収金額の約3割をアドバイザーに支払っている異常な報酬水準です。実はこのときオリンパスは粉飾決算を行っており、このアドバイザー報酬はその事実を隠蔽するためのスキームを作り上げるために支払ったものだったのです。

ということでこれはノーカウントだとすると、次に考えられるのは2016年のソフトバンクによるイギリスARMの買収です。買収金額は約3.3兆円で、これまで日系企業のM&Aとしては最高額でした。買収後、ソフトバンクは取得関連費用は234億円だったと公表しており、これは主にアドバイザー報酬です。

ということで、仮に武田薬品のアドバイザー報酬が仮に150億円程度であった場合、買収金額は歴代最高ですがアドバイザー報酬金額はそうではないということになります。最も、この日経の記事は確定額ではないですし、肌感覚としては買収金額の0.5%くらいにはなるだろうと考えているのでそもそもの総額200億円は少し安いのではと感じています。また、そこまで大きな金額的インパクトはないですが会計士や弁護士に支払った報酬についても含まれていないようですので(上記ソフトバンクのケースでは含まれています)、なんとも言えない部分はあります。

現実の世界の話 ――― 一般的なM&Aでの相場


ここまで天文学的な数字のお話を繰り広げてきましたが、ほとんどの企業にとっては関係ないレベルの話でしょう。では、身近に行われるM&Aでは実際にどのくらいアドバイザーに支払われているのでしょうか。もちろんケースバイケースではあるものの、ここは具体的に書いてみたいと思います。

結論として、買収金額が5億円以下であれば、FAに支払われる報酬は買収金額の5%程度のケースが多いです。ただし、最低金額として300万や1,000万など設定しているアドバイザーも多いです。つまり買収金額が4億円であればその5%で2,000万円ということになります。買い手はさらにDDを行う必要があり、会計士や弁護士にも依頼するためこの部分が最低でも100万〜300万はかかります。ただし、FAに払う部分はほとんどが成功報酬なので実際にM&Aが成立した場合に支払われます。一方、会計士や弁護士に払う部分については買おうが買うまいがDDを行った対価として払わなければなりません。

そのため、買い手の経営者が買うかわからないのにDD費用を払うのを嫌い、DDを実施しないで実際にM&Aを行い、後で粉飾が発覚するなど事故るケースも多々あります。ちなみに、買い手が上場企業の場合は、アドバイザリー報酬を決算資料から読み取れるケースがあります。M&Aについて全く知識のない経営者にこの辺の話をすると、十中八九はめちゃくちゃ高いな、という反応をしますね。

それでもアドバイザーをつけるべきか?

ここまで見てきたようにアドバイザー報酬は安くない金額ですし、アドバイザーをつけることに法的な義務はないため、雇わないことも可能です。実際にそのようなケースも多々あります。ただし、よほどM&Aに慣れているような企業でない限りはアドバイザーをつけるべきだと考えます。たとえ金額が小さくても隠れたリスクがあるケースも多いため、基本的にはすべてのM&Aについてです。
なお、筆者はM&Aアドバイザーを業務の一つとして行っているため完全なポジショントークです。

アドバイザーを雇う上での注意点として、ほとんどのM&Aアドバイザーは「M&Aをするべきはない」というアドバイスができない点にあります。報酬のほとんどがM&Aが成約した際の成功報酬に依存しているため、買うべきor売るべきではなかったとしても中々そのようなアドバイスはできないのが現状です。
ではアドバイザーを雇いたい経営者はどうすればいいのかというと、M&Aを実行するしないに関わらずアドバイザーに報酬を払う、言い方を変えるとM&Aのアドバイザーではなく、M&Aアドバイザーとしての能力を持った経営戦略アドバイザーを雇うことが上記注意点に対する一つの解決策、少なくとも緩和策になると考えています。

ちなみに、弊社ではM&Aアドバイザーを兼ねた経営戦略アドバイザリー業務を行っていますので、何か気になることがあれば遠慮なく下記までお問い合わせください笑
https://ma-bank.jp/contact/

  1. HOME
  2. Twitter
  3. Facebook
  4. はてなブックマーク

冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。
フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。
その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。
帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。
同時に、Idealink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

新着M&Aインタビュー

もっと読む

新着M&Aニュース

もっと読む

アクセスランキング

案件情報をお探しの方 担当からすぐに連絡いたします。



連絡手段の希望:
電話メール