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2018.05.10

#22 リクルートのGlassdoor(グラスドア)買収に見る、「筋がいいM&A」とは

冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

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リクルート、米就職支援サイト運営会社を買収、約1300億円で

リクルートホールディングスは9日、就職支援サイトを運営する米グラスドアの全株式を12億ドル(約1300億円)で取得することを決定したと発表した。買収を通じて就職支援事業の拡大を加速する。買収費用は保有する現預金で全額まかない2018年7-9月期に株式取得を完了する予定。07年に創業されたグラスドアは、給与情報など社員や求職者が提供する口コミをもとにした企業のデータをオンラインで提供している。

リクルートHは12年に米求人検索サイト「indeed(インディード)」を買収しており世界的な就職支援事業の拡大を目指している。同社は、グラスドアが持つ世界190カ国以上で投稿される77万社を超える企業のデータベースがインディードの求人検索機能を補完するとしている。

この買収により、今期(19年3月期)の売上高を160億円押し上げる見通し。買収の影響を織り込んだ今期の業績予想を15日に公表する。

記事引用元:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-09/P8FSRF6JIJV101

「筋のよさ」の言語化チャレンジ

昨日の武田薬品に続き、今日も大きなニュースが入ってきました。リクルートによるグラスドア買収です。買収金額は約1,300億円で、これはグラスドアの年間売上高の約7倍の金額です。

個人的には早くも今年のベストディール賞なんじゃないかという気がしています。理由は単純で、「これは筋がいいM&Aだな」と思ったからです。

今朝とある東証一部上場企業のM&A戦略について会議をしていたのですが、その合間の雑談でこのニュースの話をしたときに「筋がいいってどういうことですか」とクライアントの役員の方から聞かれました。また、考えてみると普段から「イケてる」とか「ダサい」とかってどういう基準で言っているのですがということを聞かれることがチラホラあります。これは筆者がクライアントに対して言語化をあまりしないという致命的な欠点からきているのだと思います。笑

そこで、今回は本件がなぜ「筋がいい」と筆者が考えたのかについて言語化チャレンジしたいと思います。

グラスドアとは

グラスドアという会社は、一般的には日本ではあまり馴染みがないかと思います。ただ、グラスドアが毎年発表している働きやすい企業ランキングは日本でも下記のようにそこそこニュースになっているので、このランキングは見たことがあるという人は多いかもしれません。
https://japan.cnet.com/article/35111568/

グラスドアは、簡単にいえば会社の口コミサイト、もしくは会社版食べログというと分かりやすいかもしれません。日本では転職会議やVorkersが類似のサービスです。
筆者がグラスドアについて知ったのは2014年でした。当時海外駐在を考えており、その時に「会社 口コミ」を検索しようと思い、ググ翻したところ「company reviews」と訳されたため、このキーワードで検索をかけたらグラスドアのwebサイトが出てきたのだったと思います。

ちなみに、現在このキーワードで検索すると1位表示がindeed、2位がGlassdoorでした。indeedは2012年にリクルートが約1,000億円で買収した会社ですので、偶然ですね。と言いたいところですがこれは偶然ではないでしょう。そこに筋がいい理由があると思っており、下記で説明します。

また、実際に筆者が勤務したオーストラリアのコンサルティングファームについてグラスドアに掲載されているレビューを退職後に見たところ、概ね正しいコメントが多かったのも印象的です。

「ビジネスがイケてる」を因数分解

M&Aの良い悪いの話になると、買収金額はいくらか、何パーセント買ったか、どのようなスキームなのかなどの議論になりがちですが、まず考えるべきはビジネスそのものだと考えています。そりゃそうだろという話ですが、意外と後回しになってるケースが多々あります。M&Aは特殊なものでスキームが重要なんですとM&Aアドバイザーに吹き込まれている経営者も多いのでしょう。

筆者はビジネスがイケてる場合、筋のいいM&Aと表現しています。そして「イケてる」を因数分解してみると、webサービスの場合は特にスタンドアロンの将来性、買い手にとってのストーリーの2点に集約されると思っています。

スタンドアロンの将来性

スタンドアロンの将来性、つまりグラスドアの事業そのものが今後伸びていく領域なのかどうかということです。webサービス以外であれば実はここは必須ではありません。なぜなら低成長であっても厳格なコストカット等の通常の経営管理手法により中長期的に利益を出せる体制を構築できる可能性があるためです。ただし、webサービスでは別サービスの登場などで一度ユーザーが離れ出すと急激に縮小していき、通常の経営管理手法では再建が難しくなります。

さて、飲食店などのローカルビジネスをメインとするYelpや旅行特化のトリップアドバイザーなど、他分野では口コミサイトは随分前から世界的に大流行しています。一方で、HR領域はまだまだ浸透しているとは言い切れず、今後拡大が確実と考えられます。なぜなら領域に関わらず、これだけ情報が溢れている中で「生の声」に対するニーズは広がっており、2Cだけでなく2BであるHR領域でもこれは変わりません。というか今後はここが伸びると考えています。

なので競合がいるとか色々あるかもしれませんが、総論としてはグラスドアの事業領域の将来は明るいと考えていました。

買い手にとってのストーリー

リクルートは、「20年までにグローバルでナンバーワンの人材企業になる」と宣言しており、M&Aを海外展開の柱としています。上記の通りindeedの買収を筆頭に数々のM&Aを行っています。このindeedはアグリゲーション求人サイトといわれ世に出回ってるほとんどの求人情報を集約しており、日本でもTVCMなど積極的なプロモーションで認知度が急拡大しています。

求人検索の面では確固たる地位を築いたようにみえるindeedですが、これでは完璧ではありませんでした。ユーザー行動を考えた時に、ユーザーはindeedで求人情報を見つけ、その後に外部の口コミサイトで求人掲載企業の口コミを見るという行動をとっていました。そしてその口コミサイトこそがグラスドアなのです。indeedにも口コミ機能はありますが、あくまでも求人情報の検索で利用している人がほとんどでしょう。

つまり、indeedとグラスドアは補完関係にあり、ユーザーが仕事を探す上でweb上で行っているプロセス全てをカバーできるようになったのです。

ちなみに、口コミサイトの場合、求人掲載企業からクレームが来る可能性があるためリクルートのような求人サイトからすればマイナスなのではという質問もされましたが、この意見は明確に間違いだと考えています。広告にまみれた情報だけではもはやユーザーは価値があると感じなくなっており、これが上述した「生の声」へのニーズにつながります。結果として、「生の声」をデータとして持っている企業が競争を制するのであり、今回の買収によるリクルート及びindeed既存事業へのマイナスは中長期的にはほとんどないと考えています。

このように、本件M&Aにはリクルートにとっての明確なストーリーがあったと考えられます。

ということでなぜ筆者が本件を筋がいいかと瞬間的に感じたかを言語化してみました。いつもはファイナンス的な観点を入れることが多いですが、今回は完全にビジネスそのものに絞りました。
特に自分の得意領域でも何か調査をしたわけではないので正確性は全くないですが、M&Aのニュースを見たときはいつもこんなことを考えています、という記事でした。

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冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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