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2018.06.19

#32 日経新聞を読む人には理解できないM&A

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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マイクロソフト、開発者向け共有サイト買収 8200億円

【シリコンバレー=白石武志】米マイクロソフト(MS)は4日、ソフト開発者が設計図(ソースコード)を公開・共有できるサイトを運営する米ギットハブを75億ドル(約8200億円)で買収すると発表した。MSは世界で約2800万人が利用するギットハブを取り込むことで、ソフト開発者向けのクラウドサービス事業を強化する。

 ギットハブは2008年の設立。スマートフォンの普及などとともに、無償公開し自由に改良できる「オープンソースソフトウエア」の開発や普及の基盤になってきた。開発者同士が情報をやりとりするソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の機能も果たしている。

 買収手続きは米国や欧州の独禁当局の認可を前提に18年中に完了する予定で、ギットハブの新たな最高経営責任者(CEO)にはMS副社長のナット・フリードマン氏が就任する。MSは買収後もギットハブの利用者が米アマゾンウェブサービスや米グーグルなどのクラウドサービスも利用できるようにするなど、ギットハブの経営の独立性は維持するという。

記事引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3136661005062018FF8000/?n_cid=SNSTW001

のちに修正された「謎の記事タイトル」

「マイクロソフト、設計図共有サイトを8200億円で買収」。
これは筆者が読んだ6月5日の日経新聞電子版記事のタイトルです(しばらく経ってからタイトルは変更されました)。

マイクロソフトによるGitHub(ギットハブ)の買収に関するニュースなのですが、このタイトルに違和感があり過ぎるということで一部で物議をよびました。GitHubはwebサービスやアプリなどソフトウェアのソースコードをサーバー上で変更履歴とともに保存・管理し、複数人で協働してソフトウェアを開発することを助けてくれるサービスです。

と言っても新聞社の上席の方には理解が難しく、こんな会話が行われたのではないかと想像しています。

上司「マイクロソフトが買収するGitHubって何だ?そもそも何て読むんだ?」
若手「ギットハブです。ソフトのソースコードを管理したり共有できるサービスです」
上司「ソースコードって何だ?」
若手「webサービスやアプリの設計図のようなものです」
上司「では設計図共有サイトと記事に書こう」
若手「。。。」

これは半分冗談ですが、GitHubをちゃんと理解している人が書いた記事ではないのは間違いないと思います。

業界外のことに鈍くなっていないか?

正確な数字実績は確認できませんでしたが、GitHubは赤字続きのようですし、なぜこの会社が8200億円なのかわからないという声を大企業の方などからちらほら聞きました。しかし、GitHubはおそらくベンチャーでエンジニアを抱えている会社であれば、ほぼ間違いなく使っているといえるほどエンジニア界隈では浸透しているサービスです。
ですが、その事実は恐ろしいほど世間には伝わっていません。筆者も2017年に自ら使うまではよくわかっていませんでした。

最近筆者が強く感じていることですが、特にIT業界を中心に、価値のある会社やサービスというものが業界外の人間からは全く理解できないというケースが多く出てきています。
日経新聞の書き手だけでなく、読者についてもこのような人たちがほとんどのように私は思います。

以前書いた下記記事ですが、エイチーム社によるキータ運営会社の買収も今回と似たようなケースと考えることができます。
https://ma-bank.jp/244/
もしもベンチャー経営者で、今回のM&Aが全く理解できないということであればちょっと気をつけた方がいいかもしれません。あれ、自分は取り残されていないかな、と。

「色がつく」のを避ける


さて、M&A関連の論点を一つ書きたいと思います。
下記はマイクロソフト買収後のGitHub次期CEOのインタビュー記事ですが、非常に印象的な表現があります。

「われわれはGitHubをMicrosoftの製品にするために買収したのではありません。〜われわれの目的はGitHubをより優れたGitHubにするために力を貸すこと」
記事引用元:https://japan.zdnet.com/article/35120609/2/

いかがでしょうか。何か違和感がありませんか。
筆者がこのインタビューを読んで感じたことはただ一つ。マイクロソフトはGitHub及びそのユーザーに対して、とんでもなく気をつかっているなということです。そこには明確な理由があります。
GitHubは世界中のエンジニアが利用する独立したプラットフォームでありコミュニティです。それがマイクロソフトに買収されることによって、マイクロソフトユーザーにだけメリットのあるような変更がなされた場合、それ以外のユーザーが離れていくリスクがあります。事実、今回のM&Aが公表されただけでGitHubの強豪サービスであるGitLabへ多くのユーザーが移行しているという報道もなされています。

このような離反を恐れているため、マイクロソフトは上記のような極端に気を使ったコメントを出していると考えられます。特にエンジニアの中にはマイクロソフトを好意的に思っていない人たちが一定数いるため、より慎重になっているのでしょう。

この論点はプラットフォームサービスの買収にはつきまといます。多くの企業にとって、ある分野でプラットフォームの立場を抑えている企業や事業は魅力的に映りますが、そのプラットフォームが一企業に属することでユーザーの離反が生じる可能性があるのです。
これは、買収者としてはどうしても自社に利益をもたらしたいがために、中立性を保っていたプラットフォーム上で自社だけを優遇したくなることからきます。極端な例ですが、ソフトバンクがFacebookを買収して、ソフトバンクユーザー以外は有料ですと言い出したらユーザーは離れてしまいますよね。

このような状況を、「色がつく」と表現することがあります。買収社1社の色に染まってしまうという意味です。
ということで、プラットフォームを買ったり売ったりするときは、色がついても大丈夫かな?という点を一度考えてみるといい気がします。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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