ヤフーの大株主に異変
ソフトバンクは数々のM&Aによって規模を拡大した企業として有名ですが、その躍進のきっかけになったのは米ヤフーへの出資です。
ヤフー創立者の二人が元となるウェブサイトを作った翌95年、ソフトバンクは株式公開とほぼ同時に出資を行って筆頭株主となりました。そして、読み通り大きく躍進したヤフー株を原資に積極的なM&Aに取り組み始めたのです。
しかし、今年2月ヤフーの大株主に動きがあり、ソフトバンクにとっては少し不安な状況になってきました。
これまでのソフトバンクとヤフーの関係はご存知の方も多いかもしれませんが、よく覚えていないという方のためにそこから振り返ります。
数多くの買収を可能にしたヤフーの存在
多額の有利子負債を抱える中で大型のM&Aを繰り返すことで知られるソフトバンクですが、これは1994年に株式を店頭公開してから変わりなく続いています。手に入れた企業の株式評価を担保に新たな借り入れを行い、次の企業を買収してさらに資金を調達するのが主な流れです。
はた目にはリスクの大きな戦略のようですが、ソフトバンクは買収案件で失敗はないと言えわれます。ただし最初から順調に事が運んでいたわけではありません。少なくとも上場後に繰り返した無茶なM&Aを批判され、株価は下落し倒産の危機に瀕したこともあります。
そのような中で舞い込んだのが、資本参加した会社のひとつ、ジフ・デービスの社長から紹介された米ヤフーです。インターネットの検索サービスに将来性を見出した孫社長はすぐさま200万ドルを出資、翌年には米ヤフーと共同で日本ヤフーを設立しました。そして、米ヤフーには数度に分けて追加出資を行い、筆頭株主となります。
ソフトバンクがはじめに米ヤフーに出資した額は200万ドル、1996年のプレスによると、さらに追加の出資を行い、その総額は1億825万ドルになったと発表されています。
また1998年には第三者割当増資の全額を引き受け、2億5,000万ドルを出資しています。
その後米ヤフーは孫社長が見込んだ通り、大きな成長を遂げて株価も大きく上昇しました。一時は1株1億円を突破しニュースにもなり、2015年のソフトバンク保有の時価総額は1兆円を超えています。
このヤフー株を原資に、ソフトバンクは次々とM&Aを進めました。1999年から2005年にかけて、累積で3,000億円を超える経常赤字を出していますが、このヤフー買収があったからこそ以降の事業拡大につながるM&Aを続けられたと考えられます。
その後:米ヤフーの解体とヤフー・ジャパンへの影響
2017年6月13日、米ベライゾン・コミュニケーションズが米ヤフーの中核事業を買収したと発表しました。米ヤフーは社名を「アルタバ」に変更、中国のアリババや日本法人・ヤフーの株式などを管理する投資会社となり、事実上の解体と言われました。
この背景には、ヤフーが買収したアリババのNY証券取引所への上場があります。この株式公開により、ヤフーが保有するアリババ株の価値がヤフーの中核事業の価値を上回ることになりました。
このアリババ株を売却するとなれば、その税金だけでヤフーの中核事業の時価総額を超えてしまう。そのため、株主はいかにこのアリババ株を売却するかを模索し始めました。というのも、経営難に陥っていたヤフーは2012年、保有するアリババ株40%を手放し、さらに残りはアリババ株の上場に伴って市場に放出する取り決めをしていたからです。
ソフトバンクが危惧したのは、米ヤフーが保有するヤフー・ジャパン株式35.5%です。当初はソフトバンクもヤフー買収のため交渉はしていましたが、話がまとまらずに断念。結果、米ヤフーの中核事業は米ベライゾン・コミュニケーションズの手に渡ることになりました。
ヤフー幹部はベライゾンへの売却を発表後、ヤフー・ジャパン株の売却を臭わせる発言をしています。仮に第三者がこのヤフー・ジャパン株を公開買付けで取得するとなれば、ソフトバンクにとっては大いに脅威となる可能性があります。
そして今年の2月、アルタバ(旧ヤフー)がヤフー・ジャパンの株式を売却する計画であると改めて発表しました。ヤフー・ジャパン株は大きく下落し、今後の動向に目が離せない状況となっています。
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。
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