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2018.07.02

#36 オンライン金融事業で利益を伸ばす楽天のあゆみ

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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マレーシアでも高く評価された、楽天の金融事業

2018年3月6日、マレーシアで開催されたFintech Awards 2018で「Rekuten Trade」がグランプリを受賞しました。
楽天証券とマレーシアの大手証券会社が合弁で設立したマレーシア初のネット証券会社「Rakuten Trade」が、マレーシアの経済発展に最も貢献したフィンテック企業として認められたのです。

楽天証券は2015年に香港、2016年にはオーストラリア、そして2017年にマレーシアでの事業を展開しており、海外への事業拡大を進めています。
日本でも「楽天カード」「楽天銀行」など楽天の金融事業はどんどん存在感を増していますし、実際に楽天グループの営業利益の過半数が金融事業によるものになっています。

2000年の店頭上場後、次々とM&Aを行ってきた楽天。
今では稼ぎ頭ともなった金融事業のはじまりは、2003年のDLJディレクトSFG証券のM&Aでした。

買収の概要

楽天は2003年11月4日、三井住友銀行系のインターネット取引専門の証券会社DLJディレクトSFG証券株式会社を買収することで、三井住友銀行をはじめとする他の株主と基本合意に達した旨を発表しました。
合意内容は、DLJ社の発行済株式総数60,000株のうち、58,000株(96.7%)を譲受けるというものです。要した額は約300億円と発表しています。

実はこれと同じ年に、のちに楽天トラベルになる宿泊予約サイトも買収しています。この2つの買収を行うために楽天は10万株の公募増資を実行し、464億円を調達しています。
公募増資による新株発行は、ともすれば株価下落にもつながるリスクを抱えています。それでも行いたかったこれらの買収への本気度はよっぽどのものだったのでしょう。

楽天の三木谷社長はこの買収について、DLJディレクトSFG証券は日本の大手オンライン証券会社の中でも3本の指に入る規模であることを示し、大きな利益につながるからと語っています。
しかし本当の狙いは、楽天が保有する膨大な数の顧客を活用して、金融企業に参入することにあったと見られています。

その後:トラブルを越える価値を生み出し、大きく成長する楽天

楽天はDLJディレクトSFG証券を買収して子会社にしたあと、商号を楽天証券に変更しました。
楽天証券は、2005年には口座数59万口座と国内大手ネット証券の中では4位の規模でしたが、2011年3月期には220万口座、2017年3月期には383万口座に増やし、SBI証券に次ぐ2位となり、預かり資産も2017年2月末には4兆円を超える規模となりました。

しかし、その間には重大なトラブルも経験しています。

ブランドを棄損しかねないトラブル


2005年からの株価高騰に伴う売買高の増加にサーバーが対応できず、システム障害が起こるトラブルに見舞われています。金融庁から業務改善命令を受けるもシステム障害は続き、2009年までに3度の行政処分を受けました。

DLJディレクトSFG証券はもともと、システム面での投資を惜しまないことで知られていました。
2000年頃から株式市況が活発化したことを踏まえて、データベースシステムの刷新やアプリケーションサーバの開発などに力を入れ、その結果、取引の急増に対応できずシステムトラブルが続いていたイー・トレード証券から顧客を奪う形で売上を伸ばしていました。

しかし楽天に買収されてからは、コスト削減のためにシステム投資は縮小、自社では顧客への情報提供をメインとするフロント系システムしか扱わなくなりました。アプリケーションサーバはスケールアウトし、やがて株式市場の活況に伴ってシステムの脆弱さが露呈する形となったわけです。

元の会社の持ち味を失ってしまうようなトラブルが続いたにも関わらず、なぜ楽天証券は規模を拡大できたのでしょうか。そこにはM&Aにより楽天を大きくしていった三木谷社長の経営戦略が関わっています。

ユーザーと時流にマッチするサービスを提供

2004年に商号を変更してから、楽天証券は当時普及していた携帯電話に対応すべくサービス提供を始めていました。2005年にはNTTドコモの携帯電話FOMAに対応したiSPEEDをリリースしています。
DLJディレクトSFG証券が提供していた「Market Speed」というサービスは信用取引を行う投資家やデイトレーダーの支持を集めていたのですが、これを携帯電話で利用できるようにしたことで、どこでも取引が可能になりました。

さらに2014年にはドットコモディティを吸収合併し、国内大手のネット証券で唯一国内先物取引も可能としています。当時は新興国通貨が下落して金の取引が注目されていたので、金をはじめとする先物取引をする顧客を取り込み、多くの口座開設につながったのです。

このように次々と新たなサービスを提供して利便性を高めていったことで、トラブルを抱えながらも顧客は増えていきました。

楽天はすでにネットショップの運営で培っていた決済システムやポイントシステムも楽天証券に活用して、金融サービスの拡充を行ってきました。また、グループの楽天銀行や楽天生命などの金融事業との相乗効果も発揮しています。

システム障害などの課題を抱えながらも、まさにスピード重視で時流に乗り着実に規模を拡大してきた楽天。今後も目が離せません。

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系大手企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画を行う。IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に携わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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