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2018.07.11

#39 赤字のベンチャーが赤字のベンチャーを買う意味

冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

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株式会社スタートアウツの株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ

日本最大のレシピ動画サービス(※1)であるkurashiru(以下、クラシル)を運営するdely株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役:堀江 裕介)は、料理動画サービスmogoo(以下、もぐー)を運営する株式会社スタートアウツ(本社:東京都港区、代表取締役:板本 拓也)の発行済全株式を取得の上、完全子会社化することを決定しましたので、お知らせします。

 当社はこれまで、2016年2月に開始したレシピ動画サービス「クラシル」にて、サービスの拡充に取り組んでまいりました。サービス開始から約2年で、1.7万本のレシピ動画・290万人のSNSフォロワー・1,200万のアプリDL(※2)を有する日本最大のレシピ動画サービスに成長し、20代から40代の女性を中心に、多くの方々にご利用いただいております。

 この度の株式取得により、当社はもぐーのリブランディングを行うとともにクラシルとのサービス統合を予定しています。その結果、クラシルは2.1万本のレシピ動画・400万人のSNSフォロワー・1,200万のアプリDLを有する日本最大のレシピ動画サービスとなり、業界No.1(※3)としての地位を盤石なものにいたします。今後は、クラシルを通して「70億人に1日3回の幸せを届ける」という事業ミッションの実現に邁進するとともに、M&Aを積極的に行い、多角的に事業を拡大していく方針です。

記事引用元:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000019382.html

レシピメディアは戦国時代

7月5日、レシピ動画サービスのクラシルを運営するdely(デリー)社は同業のスタートアウツ社の発行済全株式を取得し、完全子会社化すると公表しました。
ここ数年レシピメディアは戦国時代と言われており、旧来型のテキストベースのクックパットに対して、デリッシュキッチン運営のエブリー社とデリーが料理動画で殴り込みをかけて利用者数が急増しており、クックパットがこれに慌てて動画にも注力しだしたという構図になっています。
ちなみに筆者はクラシル使ってます。

各社の台所事情

デリーは決算を公表しておらず、どのような業績が定かではありません。ですがエブリーは決算を公表しており、昨年は約23億円の当期純損失でした。
この点、VALUES社による昨年の調査結果によればクラシルもデリッシュキッチンもユーザー数は約300万人程度であり、両社共数十億円を資金調達してテレビCMを打ちまくる戦略をとっており、近しい損益構造なのではないかと推察します。そのため、デリーも同水準かそれ以上の赤字であると考えられます。

一方、今回買収されたスタートアウツは決算を公表していませんが、両社と近しいビジネスモデルでやや後発ですが同時期に始めているベンチャーということでやはり赤字でしょう。
買収金額は公表していませんが、スタートアウツの直近資金調達時の評価金額が約5億円程度であると考えると最低でも同水準、10億円以上という可能性も十分ありえます。

どうして買ったか

このような状況の中、デリーがM&Aを行った理由は極めてシンプルです。
それは、料理動画領域でNo.1の地位を確立するため。
まだこの料理動画市場は立ち上がってから数年ですし、テキストベースのレシピにおけるクックパットのような勝者は決まっていません。
そのため、短期的な損益よりも圧倒的なシェアをとることに注力しており、その手段の一つが今回の同業他社を獲得するというM&Aだったのでしょう。

これは経営戦略上極めて妥当な判断だと考えます。というのは、今回のM&Aが原因でデリーの経営が悪化するということはほとんどないためです。
悪化する可能性があるのは、そもそも料理動画というビジネス自体が持続可能性がないことがわかったり、競合や代替サービスが現れ大きく差をつけられたりした場合です。
もともと赤字を垂れ流して成長のために投資しており、現状維持ではどのみち未来はありません。そのため、成長の速度を上げるM&Aは基本的には正しい戦略ということになります。
また、デリーは1月にソフトバンクなどから約34億円を資金調達し、この時M&Aを検討していくと明言していたため、株主からもこの戦略でいくことに合意が取れていたのでしょう。

意外と珍しいM&A

デリーの堀江社長は20代だそうです。
最近ではハゲラボの花房さんやMomentumの大久保さんなど、20代でM&Aにより会社を売却する経営者も増えてきましたが、買い手となると実はあまり聞いたことがありません。少なくとも10億以上の買収となるとほとんどいないでしょう。
若くして大きなビジネスを展開している経営者は増加傾向に感じますし、今後は堀江さんのような若手経営者による大型買収も増えていきそうです。

一昔前は、赤字のベンチャーがM&Aとはけしからんという空気が少しありました。M&Aなんてかっこつけるのは本業で利益を出してからにしろと。
ただ、昨今のビジネスでは短期的には大幅な赤字覚悟で投資して急成長を志向することが勝率を最も高めるケースも多々あり、もはやこの論調は的外れな側面が大きいと感じています。
このように、未上場で赤字のベンチャーであっても、経営戦略の一つとして買収という手段を持つことも検討する価値があると思います。

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冨岡 大悟: TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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