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2018.07.18

#40 ヤフーによるdelyのM&AはExitではなくEntrance

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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ヤフー、レシピ動画「クラシル」のdelyを子会社化 —— 世界No.1目指す創業4年ベンチャー

ヤフーが料理レシピ動画サービス「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyの株式を新たに取得して、連結子会社にする。国内最大のポータルサイトの運営に加えて、ホテル・旅館の予約サイト「一休」やオフィス用品販売の「アスクル」を子会社に持つヤフーは、事業ポートフォリオを多様化する。
一方、創業4年のスタートアップ、delyはヤフーが持つメディアやコマース事業などの基盤を活用することで今後、さらなる事業の拡大を進める方針だ。
ヤフーは子会社を通じて既に15.9%のdely株式を保有していたが、同社は2018年7月11日、29.6%の株式を新たに取得する譲渡契約を締結したと発表。取得額は約93億円で、ヤフーの持ち株比率は45.6%に拡大する。ヤフーはdelyに取締役の過半数を派遣する。……

記事引用元:https://www.businessinsider.jp/post-170984

2週連続特集

先週の記事で、レシピ動画サービスのクラシルを運営するdely(デリー)社による同業のスタートアウツ社買収について書いたのですが、わずか数日後にヤフーがdelyを子会社化するというニュースが飛び込んできました。
ということで2号連続でdelyについて書きたいと思います。

まず概要をざっと説明すると、本件はヤフーによるdely既存株主からの株式取得です。もともとヤフーグループでdely株式を保有しており、今回29.6%を約93億円で追加取得することで45.6%を保有することになります。
ちなみに、議決権比率50%未満ですがなぜ子会社になるかといえば、議決権基準以外にも実質支配力基準があり、ヤフーが役員を過半数派遣するということで実質的にdelyを支配していると判断され子会社になります。

今年1月の資金調達の際のdelyの時価総額は約160億円、今回のM&Aでは約300億円と半年で約2倍になっています。売上3億、営業利益△30億の企業が時価総額300億円でM&Aされたということです。
ベンチャー業界に明るくない人にはなぜこの金額になるのかなかなか理解できないのではないでしょうか。

また、今回ヤフーに売却したdely既存株主と売却しなかった株主がいます。例えばgumiは売ってますがジャフコは売ってないです。
理由はわかりませんが、一般的に売却する理由としては、これ以上delyの成長は見込めないと判断しているケース、早くキャッシュの回収をしたいケース、買収者との相性が良くないケース(例えばヤフーの競合企業など)があります。

EXITではないM&A

本件について言いたいことは、本件は決して大型M&AでExitできてバンザイ!みたいなディールではないということです。
最近増えつつあるM&A+IPOのハイブリットExitモデルであれば、経営者兼大株主が株式のマジョリティを大企業などに売却した上で数十パーセントを持ち続け、大企業の傘下でIPOを目指す。これにより、マジョリティの売却時に経営者は一度大きなキャッシュインをした上でさらに成長を目指せるメリットがあります。

しかし、delyの堀江社長はもともと20%程度の株式を保有していますが、今回1株も売っていません。普通であればまずは少し売って数億円確保しようと思ってもおかしくないところ、堀江社長は1円も得ていないのです。
これはdelyの今後の成長に絶対の自信と覚悟を持っている証左で、事実1兆円企業を目指すと宣言しており、今回のM&Aは1兆円企業への入り口、Entranceといったところでしょうか。

ですので、一部で言われているような大企業に売却してあとは悠々自適といったM&Aとは全く異なります。20代にして恐ろしい経営者もいるものだと感心しています。

もっと恐ろしいソフトバンクグループ

実はヤフーは今年5月に傘下のYJキャピタルを通じて実名グルメサービスのrettyにも投資しています。
実は実はヤフーは料理動画メディアTastyを持つBuzzFeedと合弁会社BuzzFeed Japanを設立しています。
rettyは食べログに匹敵するグルメ情報サービスであり、Tastyは世界でトップクラスの人気を持っており、今回のdelyは料理動画領域における国内トッププレイヤーです。
ということでヤフーは料理領域において他の追随を許さないような戦力をいつの間にか手にしていました。
しかもヤフーの現経営陣は元起業家で、delyの堀江社長もいずれ中核メンバーになるかもしれません。

このようにソフトバンクグループではM&Aにより次々と新たな手を打ち、事業も人も手に入れることで競争力を維持し続ける戦略なのでしょう。
結局、何をするかわからないという意味で一番恐ろしいのはソフトバンクですね。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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