2018.09.30
#48 ユナイテッド、IPO路線のトライフォートを買収
冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士
ユナイテッドがトライフォートを36億円で買収 大竹慎太郎氏やWiL Fund、LINEなどから75%にあたる230万株を取得
ユナイテッド<2497>は、本日(9月27日)、スマートフォン向けアプリや Web サービスの開発・運営事業を行うトライフォートを買収する。同社の既存株主である大竹慎太郎氏やWiL Fund、LINE Ventures Japan、ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスなどから全株式の75%にあたる230万株を36億2200万円で取得する(デュー・デリジェンス費用含む)。譲渡実行日は10月11日となる予定。……
記事引用元:https://gamebiz.jp/?p=221065
ユナイテッドによる子会社化
9月27日、ユナイテッド社はスマホ向けゲーム開発のトライフォート社を買収すると公表しました。買収金額は約36億円で全株式の75%を取得するとのことです。
正直あまりゲーム系は詳しくないのですが、トライフォートは結構前からIPOの噂を耳にしていたのでなんとなく知ってはいます。
IPO準備はこうしてバレる
いつもさりげなく「ここは上場準備していて」みたいなことを言っているのですが、そもそもなんでIPO準備してることがわかるのでしょうか。
もちろん職業柄そのような情報を手に入れる方法はあるのですが、実は誰でも上場準備してるかを知る方法があります。
よくあるのが求人情報です。自社の採用ページや求人サイトに出している求人情報などに「IPO準備中!」みたいに書くケースです。
これを書くと何か成長してる会社感出るし色々新しいチャレンジできそうみたいな雰囲気を伝えられるので多くの上場準備企業が書いてます。
例えば「トライフォート 求人 IPO」でググったらパソナの求人サイトに「トライフォート社 ゲームUIデザイナー【IPO予定・自社/受託・自社勤務】」というのが出ました。一目瞭然ですね。
とはいえこれはあくまでも自己申告であって、実際には本気でIPO準備してるかはわかりませんよね。この本気度が高いかをある程度見極める方法があります。
それは会社のホームページです。
ただし採用ページではなく会社概要ページです。会社概要ページには、役員構成を載せている会社が多いと思います。
トライフォートの場合下記です。

(トライフォート社HP https://trifort.jp/corporate/outlineより)
たくさん役員いますね。実はこれ、上場会社の役員構成なのです。
細かい話はおいといてざっくり言うと、上場会社には取締役3名以上、監査役3名以上が必要です。
上場しない会社であれば、基本的には社外取締役や監査役などを置く必要がなく、費用がかかったり色々面倒なので普通は置きません。
しかし、上場準備に入ると、上場する1年以上前から上場企業と同じ体制作りを求められます。なので、上記の役員構成を見る限りIPOを現実的に考えられるステージであったと考えられます。
こんな感じでちょっとググるだけで上場準備しているか、どのステージなのかはなんとなくわかります。
IPOを諦めたのか
ということでトライフォートがIPOをしようとしていたというのはお分かりいただけたかと思いますが、今回ユナイテッドの子会社になったということでIPOは諦めたのでしょうか。
これまでM&A BANKの記事を全て読んでいるという奇特な方であれば答えば簡単でしょう。IPOの可能性はある、が正解です。
今回のM&A後もトライフォートの大竹社長は約25%の株式を保有し、代表としても残ります。一般的に、このようなケースでは大きく二つの可能性があります。
一つはコールオプション。今後トライフォートの業績が拡大した場合、大竹社長が所有する25%分をユナイテッドが今回買収した株価より高い一定の金額でで買い取るという契約を結ぶことです。買収者にとってはいきなり100%買収するよりもリスクを抑えられます。以前こちらの記事で紹介しました(#18 スタートトゥデイによるZOZOSUIT開発企業M&Aの結末)。
ただ今回の場合は75%買っている時点でかなりのリスクを取っていますし、ユナイテッド側からコールオプションに関するリリースもないですのでコールオプションが設定されているかはなんとも言えないです。
もう一つは、子会社上場。つまりユナイテッドの子会社としてトライフォートが上場を目指すということです。以前こちらの記事で紹介しました(#26 ExitはIPOとM&Aのどちらかしか選べないという誤解)。何気に最近は過去記事の紹介が増えてきてますが、結構コンテンツ溜まってきてる感がありますね。
トライフォートからすれば、上場準備の膨大な事務作業を上場会社であるユナイテッドから助けてもらうことができ、また足元の資金繰りを気にする必要もなくなるのでメリットは大きいです。もちろん事業サイドのシナジーが大きいとかユナイテッドの経営者に惹かれたとかもあるでしょうが。
ということで最新のM&A案件を書きました。
せっかくなので次回は今回の買い手、ユナイテッドについていってみたいと思います。
冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士
KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。
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