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#57 普通は売ってくれない事業を買う方法 | M&A BANK

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2019.01.11

#57 普通は売ってくれない事業を買う方法

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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株式会社オーネットの全株式譲渡契約締結に関するお知らせ
楽天株式会社(代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下「当社」といいます。)は、当社連結子会社である株式会社オーネット(以下「オーネット」といいます。)の全株式をポラリス・キャピタル・グループ株式会社(代表取締役社長:木村 雄治、以下「ポラリス」といいます。)が新たに設立する会社へ譲渡することを決定し、当該会社との間で株式譲渡契約を本日締結しましたのでお知らせします。……
記事引用元:https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2018/1128_01.html?year=2018&month=11&category=corp+ir

あけましておめでとうございます。2019年もM&A BANKをよろしくお願いします。
本当であれば去年のうちに2018年のまとめ記事を書いて、新年一発目は今年のM&Aの展望とかにしたかったのですが、どうにもサボり癖が治らず全然書けなかったんですよね。
ということでそれはそのうち書くとして、今日はちょっと違う話をします。

誰もがほしい事業

突然ですが、みなさんだったらどんな事業が買いたいでしょうか?
答えは人それぞれだと思いますが、「安定的に利益が出ながらも成長してる事業」が欲しいという経営者の方はとても多いです。まあ当たり前の話ですよね。

ではM&A戦略として、「安定的に利益が出ながらも成長してる事業」を買収対象として探せばいいかというと、もちろんそんな単純ではありません。
M&Aは相手ありきですので、いい会社や事業があっても売ってもらえなければどうしようもありません。
売り手にとってみればうまくいってる事業をわざわざ売る必要性は少なく、特に上場会社であれば利益金額は株価に直結しやすいため、そう簡単に利益を生んでいる事業は売れません。
なのでこのM&A戦略は結構難しいですよね。

「普通は売らない事業を売る時」とは

では絶対に可能性がないかといえば、可能性は低いけどもないこともありません。そして可能性が高まる瞬間というものがあります。
わかりやすいのは、現金が必要な時です。何らかの事情で現金が必要になった場合、もちろん増資や融資などで資金調達する方法もありますが、事業を売却するのも一つの選択肢に入ります。

そしてどういう時に現金が必要になるかという点に関しては、下記の新年1本目のM&A BANKの動画(2019年、M&A展望大予測|Vol.120)でも少し言及していますが、不景気に備えてキャッシュポジションを高くしておくことなどがあります。

ただそれだけだと少し抽象的というか、具体的に売り手候補を絞り込むことは難しいと思います。
そこでまた質問です。皆さんならどのように絞り込むでしょうか?

絞り込みキーワードのひとつ、「投資」

ここもいくつかやり方はあるのですが、有効な手法の一つを紹介します。キーワードは「投資」です。
もし、ある企業が新規事業で大型投資を行う場合は当然その資金を確保する必要があるのですが、その方法は通常の資金調達に加え、既存事業の売却も検討対象になる可能性があります。
投資規模が大きくなればなるほど資金は必要になるわけですから、その可能性は上がります。
また、新規事業の場合は資金だけでなく人的資産も投資する必要があるため、既存事業を売却することにより、当該事業の運営を担っていた人材を新規事業にあてるケースもありえます。

2018年のケーススタディ・楽天のオーネット売却

せっかくなので実際のM&A案件を参考に考えてみたいと思います。
2018年11月、楽天株式会社は株式会社オーネットの全株式をポラリス・キャピタル株式会社に売却することを公表しました。
オーネットといえば老舗の結婚相談サービスで、一般的にも知名度は高いかなと思います。
売却金額は非開示ですが、売却益が約250億円出る見込みとのことです。
もともと2009年にオーネットが経営不振に陥っていた際に楽天が買収した事業ですので、おそらく数億もいかない金額で当時買収していたと考えられるため、今回の楽天によるオーネット株売却金額は約250億円と考えて大きなずれはないかなと思います。

そしてオーネットの業績ですが、2017年12月期は約10億円の当期純利益を出しています。
同じく結婚関連事業を展開する東証一部上場のIBJも、前期の当期純利益が約10億円ですから、10年前は経営危機にあったオーネットも楽天参加に入り急成長を遂げ、東証一部上場企業と同じ収益力を持つまでにいたっています。
ちなみに、2018年10月末時点のIBJの時価総額は約250億円でしたので(11月には300億を超えましたが)、同業種、同水準の利益金額ですからオーネットの売却金額の妥当性を示す材料として楽天は利用したものと考えられます。

考えられる「現金が必要な理由」

そんな会社をなぜ楽天が売却したかといえば、2018年に発表した携帯電話事業(MNO:移動体通信事業者)への参入が影響していると考えられます。
携帯電話事業を運営するには数千億単位の大型投資を行う必要があり、いかに楽天とはいえこの資金を用意するのは至難のはずです。
そこで、大型投資資金の一部を賄うため、グループ全体の中で売却可能な事業はないかを改めて検討した可能性は高いです。

もちろん、結婚相談サービスはECや金融事業といった楽天の本業とは強い関連性がなかったと考えられるため、選択と集中の観点でたまたま売却しただけと考えることもできるかもしれません。
ですが楽天はこれまで買収することは多々あれど、売却に関しては積極的に行っていなかった過去があるため、やはり今までとは異なる論理が働いたように思います。
このようにして、優良事業が売却されるに至りました。

いかがだったでしょうか。どんな優良企業や事業が売りに出る可能性があるか、皆さんの意見をぜひ教えてください。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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