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#58 ポケットコンシェルジュのクロスボーダーM&Aを支えた投資家 | M&A BANK

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2019.01.18

#58 ポケットコンシェルジュのクロスボーダーM&Aを支えた投資家

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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厳選レストラン予約・決済サービス「ポケットコンシェルジュ」、アメックスが完全子会社化
レストラン予約・決済サービス「Pocket Concierge(ポケットコンシェルジュ)」を提供するポケットコンシェルジュが、11日にアメリカン・エキスプレス・カンパニー(アメックス)により完全買収されたことが明らかになった。買収額など諸条件は開示されていない。……
記事引用元:https://thebridge.jp/2019/01/pocket-concierge-acquired-by-american-express

1月15日、アメリカン・エキスプレス・カンパニーの子会社であるアメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.は株式会社ポケットコンシェルジュの全株式を取得したことを公表しました。
筆者がいつもお世話になっているクレジットカードのアメックスによる日本企業の買収案件ということで、今回取り上げます。

ポケットコンシェルジュとは

ポケットコンシェルジュは高級飲食店に特化した飲食店予約サービスです。
他にもOpen Tableなどの類似サービスはあったのですが、高級店に関してはあまり対応しておらず、ここをポケットコンシェルジュは開拓していきました。

今回知りましたが戸門社長は元料理人で、その経歴を活かして新規高級店を獲得してきたそうです。わかりやすいストーリーですね。通常の飲食店予約サービスには登録しない高級店の店主にも、協力したいと思わせる要因の一つでしょう。

今回売却金額は開示されていません。これまでの実績を振り返ると、2017年6月に株式会社三越伊勢丹イノベーションズから約7,500万円調達した際の時価総額(評価額)はpostで約11億円です。
ちなみに、資金調達時の株価に、資金調達前の株数をかけた時価総額をPre-money Valuation(プレ) 、資金調達後の株数をかけた時価総額をPost-money Valuation(ポスト)といったりします。
更にちなみに、非上場企業の資金調達金額とか評価額などの情報はentrepediaというユーザベースが運営している有料サイトで収集していることが多いです。登記簿から自分で計算することもできなくはないのですが、面倒なのでいつもお世話になっています。
売却金額を予想することは難しいですが、前回調達時から事業が成長していれば評価額は上がっているでしょうから、売却金額も11億円以上の可能性が高いのではないでしょうか。

今回の買収理由は、自明ですが事業の親和性の高さでしょう。
アメックスは富裕層のユーザーを多く囲っており、その一部をポケットコンシェルジュに送客するだけでも大きなインパクトがありそうです。
また、ポケットコンシェルジュは訪日外国人利用者も多いそうで、その点もグローバルに展開するアメックスに評価されたのでしょう。
ちなみにが多いですが、アメックスのクレカの中でも最上級のセンチュリオンの所有者は(筆者は持ってませんが泣)、コンシェルジュに電話一本するだけでお店の探索から予約まで全て代行してもらえます。

明確な投資方針を持つ、500 Startups Japan

ところで、ポケットコンシェルジュに出資者の一つに500という海外VCがあります。
500が2015年に日本で立ち上げた500 Startups Japanの投資案件第一号が今回のポケットコンシェルジュだったそうです。
今回のニュースを見て、このVC設立時の記事に気になることが書いてあったのを思い出して過去の記事を探してみました。それがこの記事です。
https://500startups.jp/two-things-part1/

500 Startups Japan代表のJames Rineyさんが書いているもので、ここには自身が運営するVCの目的の一つに「クロスボーダーM&Aの増加に貢献したい」ということが記されていました。
そして今回アメックスによる買収ということで、そのクロスボーダーM&Aを実現したわけです。
ただの感想ですが、こういうのはカッコいいと思うんですよね。VCとして日本のマーケットの課題を感じていて、それを解決するために人があまりできていないことをやりたい(クロスボーダーM&Aを増やしたい)と言っていて、ホントに実行しちゃう。
もちろん会社を経営してるのはVCではなく経営者ですし、ポケットコンシェルジュとクレジットカード会社の相性の良さは誰の目にも明らかです。

とはいえグローバルで活躍するVCの知見やネットワークを活かした支援は、クロスボーダーM&A実現の大きな力になったのではないかなと思います。
総合商社などにも投資先のクロスボーダーM&Aというか海外進出支援を積極的に行っているところはありますが、そもそもそれなりの規模の会社でないと総合商社から投資を受けることは難しいです。
その点、500であれば設立したばかりの会社でも投資対象になりそうです。
なので、海外進出したい、海外企業から投資してもらいたいなどの考えがある経営者の方は、500 Startups Japanに相談してみるのがいいかもしれません。

ここ数年、「新しく投資部門を設立したのでいい会社あったら紹介してください」みたいに言われることが結構あるのですが、何がしたいかわからないことが多くて紹介しづらいんですよね。このような会社は軸がブレることが多いので、方針が変わって投資先に株式を買い取れなどと突然言いだすかもしれないですし(実際ありました)。そう思うと紹介しづらいんです。
この点、筆者は500と特に繋がりはないのですが、何がやりたいか明確な投資家なので安心できるわけです。

このように今後も特定領域に強い投資家や専門家など紹介していこうかなと思います。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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