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2019.06.05

第三者割当増資で今の株主の影響力を小さくしたい|判例紹介 Vol.06

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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第三者割当増資とは
資金調達の手法の一つ。上場企業が新株を発行して行う「公募増資」の場合は誰でも購入できるが、こちらは特定の第三者に対して新株を割り当てて増資を行う。以前から友好的な関係や取引のある人に出資してもらうケースが多い。
既存の株主の持ち株比率に大きな影響を与えることがあるため、M&Aの手法にもなりうる。新しく発行した株を買い取って経営に加わってもらう形になるため、既存株主の株を含めた会社丸ごとを譲渡する場合に比べると、友好的に行いやすい。

 判例によれば… 
他に資金調達を必要とするまっとうな理由があれば可能

〇 資金調達の必要性が立証できれば可能
▲ 資金調達の必要性は急ごしらえできない

 

ポイント|資金調達のためor支配権を守るため、どちらが目的かを見られる

  • 現経営者の支配権を維持することが主要な目的と認められると、新株発行の差し止め請求が認められる
    …その目的か否かを判断す争点は以下の二つ。
  • 争点①支配権の争いがあり、新株発行によって持ち株比率に重大な影響が出る
    …新株発行によって、絶対数として過半数を超える株主が登場する場合はもちろん、株主総会の普通決議の成否を左右しうる株主が現れる場合も「支配試験の維持を目的とした増資」と見なされる
    …取締役の選任/解任に関わる意見の対立があっても勢力が拮抗しておらず新株発行をしなくても株主総会で現経営者に望ましい結果になる見通しが立っていた場合は、「支配権の維持を目的とした増資」にはならない
  • 争点②資金調達を必要としていた証拠となる資料や行動記録があるか
    …実際に資金調達を必要としていた証拠がなければ信用されない
    …調達予定の資金の使い道が他の情報開示と一致しない場合や、他に取れる手段があったのに行っていない場合は認められない

判例紹介|クオンツ事件(平成20年頃)

概要

  • 取締役会が二派に分裂し、それぞれが多数派を形成した際には相手陣営の取締役の解任を試みていた
    (はっきりと派閥争いがあった)
  • 次の株主総会で、少数派についている代表取締役の解任が問われることが決まっていた
  • 単独で支配権を左右できる株主がおらず、直近の株主総会の出席者は議決権ベースで41%
    議決権が行使される割合は実質41%と見通せる)
  • 新株発行が行われると、多数派の持ち株比率が20.2%になる状況

訴えた側:少数派を形成する株主
この新株発行は多数派が次の株主総会での議案を通すことを目的としているとして、差し止めを主張

訴えられた側:発行会社
社債40億円の返済を求められていたこと、2期連続で経常損失を出していたことから、資金調達の必要性を主張

判決

  • 現経営者の支配権維持が新株発行の主要な目的であると認定

不公正発行にあたると結論付けた

理由

資金調達の一般的な必要性はあったものの、返済のために保有資産を計画的に売却したり、一部弁済したり、返済計画について議論された形跡もないことから、発行会社が主張する計画があったとは認められないことに加え、
今回の新株発行が成否の見通しがつかない議案を扱う株主総会の直前に行われ、さらに会社の提案に賛成することを表明していた割当先に議決権を付与することを予定していたことから、資金調達よりも現経営者の支配権を維持することが主要な目的とされていると判断されたため。

参考文献
阿南剛・後藤高志・辻川昌徳(2015)『実務分析 M&A判例ハンドブック』商事法務

 

株主を追い出すのは簡単じゃない

今回は第三者割当増資を扱いました。
M&Aスキームの一つではありますが、判例を見るに、株主のパワーバランスを変えるための手段として用いられていることもありそうです。

経営者の方はすでにご経験かと思いますが、投資をしてもらったはいいものの、良いアドバイスをもらえないどころか、しがらみとなって経営がやりづらくなってしまい、後戻りのできない資本政策の失敗に泣く…ということはよくあるようで、
かと言って、こちらの望む条件で株を手放して(売却して)もらえるとも限らないため、第三者割当増資というを手段として用いることになるのでしょう。

初めて創業する時はそんなことを考える余裕がなかった、でも何とかしたいという方、ご参考になれば幸いです。

 

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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