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債務は承継したくないけど、商号(屋号)を使いたい|判例紹介 Vol.09 | M&A BANK

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2019.06.26

譲り受けた商号を使うと、債務も肩代わりすることになるか|判例紹介 Vol.09

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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 判例によれば… 
名称が似ていたら、基本的に債務は承継することに

〇 特殊な状況であれば回避できる
▲ ほぼ同じに見えたら、弁済責任を負うのが基本

 

ポイント|お金を出した人に弁済を期待させたらアウト

  • そもそも「商号を引き続き使用する→その商号が抱えていた債務を弁済する責任を負う」と会社法で決まっている
    債権者を保護するため
    …事業譲渡後も商号がそのまま使われるなど、営業主体が変わったことがわかりにくかったり債務ごと引き継がれていると期待してしまう場合は、お金を出した(貸した)人が確実にお金を回収する措置をとる機会を失うことになるから
  • ただし、譲受後すぐに「債務を弁済しない」と登記、または第三者に通知すれば適用されない
  • その他セーフになる例①もとの商号に「新」の文字を追加している場合
    事業に失敗した際の立て直しの手段として、いわゆる第二会社を設立し、新会社が旧会社からの営業の譲受を受けた場合、このような名前にすることが通例になっている
    …取引の社会通念上は新会社が旧会社の債務を承継しないことを示すと理解できるため、この場合は「債権者に誤解されにくい」と言える
  • その他セーフになる例②会社の人格や法的性質が明確に異なる場合
    …たとえば「株式会社○○」が「協同組合○○」になる場合は、元の会社と同じ事業・人格だとは誤解されにくいと言える
  • その他セーフになる例③もとの商号・屋号が一般的な単語で構成されている場合
    …もとの商号(屋号)が地名や商品の種類などで構成されていた場合などは、「商号の継続使用」の意図を認めにくいため、単に類似しているだけと認められる

債務の承継が認められた判例
淡路五色リゾートカントリー倶楽部事件(平成16年頃)

概要

  • ゴルフ場の営業を譲り受けた側の会社が、元の商号は使わなかったものの、ゴルフクラブの名称を用いて同じゴルフ場を経営していた

訴えた側:譲渡した側の会社に預託金(*)返還請求権を持っていたゴルフ場会員
ゴルフ場を譲り受けた会社に預託金の支払いを求めた

(*)預託金:ゴルフ場に預けられたお金を原資にゴルフ場の開発を行うという方式の、ゴルフ場会員権の一つ。通常は無利子で据え置かれ、10~20年ほどで返却される。

 

判決

  • 会員には営業主体が変わったことが伝わりにくい
  • 営業主体が変わったとしても、債務も引き継がれていると信じるのも無理はない

譲受企業は、譲渡企業の代わりに会員への預託金の返済義務を負う

理由

譲受後すぐに、譲受前のゴルフクラブの会員に対して、会員として以前と同様に扱うことがないということをわかりやすく示さなかったため、元会員が譲渡前に発生した権利が譲受後も継続しているはずと考えるのも当然と言えるため。

参考文献
阿南剛・後藤高志・辻川昌徳(2015)『実務分析 M&A判例ハンドブック』商事法務

 

債務を引き継がないために事業譲受するなら

債権者」と言うと銀行をイメージしがちですが、今回の判例のゴルフクラブの会員のように、顧客にあたる立場から資金を預かることもありえます。
商号や屋号を引き継ぐ予定の買い手(譲り受け側)の方は、銀行からの債務だけでなく、お客さんや取引先に負っている債務の有無についても確認しておくとよいでしょう。

欲しいものだけを譲り受けるために、他の手法ではなく事業譲渡(譲受)の形をとる場合は、なおさらご注意ください。

 

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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