フィットネスジム運営のRIZAPグループは、Jリーグの湘南ベルマーレ(神奈川県平塚市)の経営権を取得する。現在の筆頭株主と月内にも共同出資会社を設立して、出資や役員の派遣を通じてベルマーレを傘下に収める。RIZAPはスポーツ分野への事業拡大を図っており、サッカークラブの経営でフィットネスジムとの相乗効果を見込む。
月内にもベルマーレに33%出資する筆頭株主の三栄建築設計と、ほぼ折半出資の共同出資会社を設立する。三栄が持つ持ち株を共同出資会社に移転するほか、ベルマーレが第三者割当増資を実施して、共同出資会社がベルマーレの持ち株の過半数を保有する。RIZAPはベルマーレに役員の過半を派遣する方針で、実質支配力基準によりベルマーレが連結子会社となる。
RIZAPグループから2020年までに10億円を拠出して、選手の育成やクラブハウスの充実に充てる。また、RIZAPのマーケティングノウハウを活用し、ベルマーレのサポーターの拡大を支援する。
RIZAPグループは「スポーツ分野」と「フード分野」を今後の成長領域と設定し、19年までに戦略的投資を集中する方針を掲げている。21年3月期には、2分野合計で売上高1000億円以上の達成を目標に設定している。
湘南ベルマーレは17年にJ2リーグで優勝し、18年からJ1に昇格した。選手の強化に充てる資金と経営基盤の安定化を目的に、長期的なスポンサーとして16年に三栄からの出資を受け入れた。
記事引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28957960T00C18A4TJ1000/
RIZAPの湘南ベルマーレ取得
2018/04/04の日本経済新聞で、「フィットネスジム運営のRIZAPグループは、サッカーJリーグ1部(J1)の湘南ベルマーレ(神奈川県平塚市)の経営権を取得する。」との記事が掲載されました。RIZAPは2018/03/29には株式会社サンケイリビング新聞社と株式譲渡契約を締結したばかりなので、今とても勢いのある会社と言ってもいいですね。
RIZAPはサンケイリビング新聞社に対してはマーケティングの強化、湘南ベルマーレに対してはフィットネスジムとの相乗効果を見込んでいるようです。2021年までに「スポーツ分野」と「フード分野」を成長領域とし、2019年までに戦略的投資を集中する方針を掲げているため、今後もRIZAPのM&A関連のニュースを目にすることがありそうです。今後が楽しみな会社の1つですね。
そもそも湘南ベルマーレは会社なのか?
さて、ここでもう少し湘南ベルマーレの取得について掘り下げてみたいと思います。その前に、湘南ベルマーレってそもそも会社だったんだという方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明します。
スポーツチームというのは、実は社長や取締役等の役員が中心となって経営している一般的な株式会社です。例えば、読売ジャイアンツは株式会社読売巨人軍というのが社名です。社長は高橋由伸監督?と思うかもしれませんが、違います(笑)。社長は石井一夫さんという方で、読売新聞に勤めていた方です。スーツを着て仕事をしているような人ですね。読売巨人軍は読売新聞の子会社なので、読売新聞の人が社長になります。
経営権の取得方法を考える
本題に戻りますと、記事に、「月内にもベルマーレに33%出資する筆頭株主の三栄建築設計と、ほぼ折半出資の共同出資会社を設立する。RIZAPはベルマーレに役員の過半を派遣する方針で、実質支配力基準によりベルマーレが連結子会社となる。」と記載があります。実質支配力基準という聞きなれない単語かと思いますが、実はM&Aによる会社の取得方法は1つではないんですね。今回は、子会社の判定について簡単に説明します。なお、「経営権の取得」と「子会社」と2つの概念が出てきましたが、単純化すると「経営権を取得した会社」=「子会社」と理解頂ければと思います。
M&Aで経営権を取得する場合は、株式の過半数(50%超)を取得することが多いです。株式の過半数を取得することにより、株主総会での普通決議で賛成多数、反対多数というように、思い通りに会社の意思決定ができるようになるからです。(特別決議等の一部例外はありますが今回は割愛します。)このような場合に、経営権を取得したというような表現がされ、その会社を子会社と呼ぶことになります。
一方で、RIZAPの場合、「三栄建築設計とほぼ折半出資の共同出資会社」とあることから、湘南ベルマーレ株式の過半数を取得していないことがわかります。株式の過半数を取得していないのであれば、経営権を取得したとは言えないのでは?と思うかもしれません。実は、株式の過半数を取得していなくても経営権を取得したとされる場合があります。
例えば、この辺りは難しいので噛み砕いて言うと、株式を一定以上保有し、かつ①役員の過半数を派遣する場合、②息のかかった会社と合計して株式の過半数を所有している場合、③借入金の過半を貸している場合等に、実質的に経営権を取得したとみなされることがあります。
RIZAPの場合は①で役員の過半数をベルマーレに派遣していることから、経営権を取得したということですね。
このように、経営権の取得方法は、それぞれの会社に合った方法があります。M&Aの目的、方針、懐事情、力関係等様々な要因が重なり合って、それぞれの会社のM&Aの在り方が決まってくるんですね。それぞれの会社に最も適したM&Aを見つけるためにも、M&Aを検討されている場合には専門家に相談することをお勧めします。
世界をよりよくしたい男:公認会計士・中小企業診断士
M&A、事業再生、ファイナンスのアドバイザリー業務を行う。 大学院にて非常勤講師。事業再生系の著書を共著にて執筆。
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