ホワイトナイトは敵対的買収防衛策のひとつで、敵対的な買収者があらわれた際に友好的な買収者に自社を買収してもらうという方法です。ホワイトナイトに取ってもらう手段は複数ありますが、いずれも自社の経営権を他者に渡すことになる点には変わりありません。
非上場企業でも敵対的買収はあり得る
敵対的買収と聞いて「上場企業の話だ」と感じる人は少なくありません。しかし、非上場企業であっても敵対的買収の標的になってしまうことがあります。
非上場企業であっても「公開会社(※)」であれば他者が株式を買い集めることは可能で、敵対的買収のターゲットになりえます。敵対的買収を仕掛けられるリスクを回避したいのであれば、買収防衛策をあらかじめ検討しておく必要があります。
※公開会社:一部でも譲渡制限のついていない株式がある会社のこと。ある程度規模が大きい会社に多い。
ホワイトナイトは事後的にも使える買収防衛策
敵対的買収に備える買収防衛策として、「ポイズン・ピル(毒薬条項)」があります。これは、敵対的買収者があらわれたときに「買収者以外の既存株主にのみ」新株を発行することで、買収者の議決権割合を引き下げるというものです。
しかしポイズン・ピルを使うには、新株予約権をあらかじめ発行しておく必要があります。敵対的買収が起こってから既存株主にのみ新株を発行することはできません。
一方、ホワイトナイトは事後的にでも対応が可能な買収防衛策です。事前に買収防衛策を講じていない状態で敵対的買収を仕掛けられても使用できます。
ホワイトナイトでどんなことができるのか
では、ホワイトナイトを使って敵対的買収を食い止める場合、具体的にどのような手段を講じることになるのでしょうか。
友好的企業に買収してもらう
ひとつは、自社にとって友好的な立場である企業に買収してもらうという方法です。敵対的買収者が提示しているTOB価格を上回る金額で、カウンターTOBを行ってもらいます。そうすることで、敵対的買収者に「これ以上の金額は出せない」と思わせ、買収を諦めさせられる可能性があります。
しかし、カウンターTOB価格を上回ってでも買収することに意義があると捉えられればTOB合戦になることもあるでしょう。その結果ホワイトナイトの方が負けてしまえば、買収を防衛することはできません。
友好的企業に第三者割当増資や新株予約権の発行をする
もうひとつは、ホワイトナイトとなってくれる企業に第三者割当増資を引き受けてもらったり、新株予約権を発行したりする方法です。第三者割当増資や新株発行でホワイトナイトが多くの議決権を持つに至れば、敵対的買収者がいくら株式を買い集めても思うように経営しにくくなります。
ホワイトナイトが過半数の株式を持つ、拒否権を行使できる3分の1超の株式を持つ状態にできれば、買収の意義は失われるといっても過言ではありません。
ただ、ホワイトナイトになってもらうために時価よりも有利な価格で新株を発行した場合は、「有利発行にあたる」として他の株主から訴訟されるリスクがあるため、注意が必要です。
ホワイトナイトを使うことにもデメリットはある
このように、ホワイトナイトを使えば敵対的買収者に対抗することができます。しかし、ホワイトナイトは簡単には決まりません。
買収または新株購入のためには多額の資本を投じることになるため、ホワイトナイトになるかどうかはかなり慎重に判断されます。その投下資本に見あったリターンが得られるのでなければ、そう応じてもらえるものではないでしょう。
敵対的買収者のTOB期限が迫る中で、ホワイトナイトに有利な価格で新株発行せざるを得ないケースも考えられます。
また、新株発行の手段を採ったとしても、事実上ホワイトナイトに自社を買収されることに変わりはないことも理解しておきましょう。ホワイトナイトに頼る以上は、自社を売却することになるのです。
株主構成が大きく変われば、これまでと同様の経営を続けられるとは限りません。
「敵対的買収者に買われるくらいなら、ホワイトナイトの方がまだいい」という理由だけで判断するのは危険です。ホワイトナイトを活用するデメリットも踏まえて判断しましょう。
まとめ
ホワイトナイトは敵対的買収に備える手段であり、しかも事前にポイズン・ピルなどの買収防衛策を講じていない場合にも活用できるとあって、いざという時の最後の頼みの綱になり得ます。
ただ、そのデメリットを無視することはできません。
いざというときにホワイトナイトになってくれる友好的な企業をあらかじめ探しておいたり、ポイズン・ピルなどの買収防衛策を事前に定めておくなど、準備をしておくことも大切です。
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。
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