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2018.05.16

M&A用語解説:DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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M&Aの際に売り手企業の企業価値や株価を算定する場合、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)といわれる方法を利用することが多いです。

今回はその計算方法など、基礎的な部分について解説します。

DCFとは

DCF(Discount Cash Flow:ディスカウト・キャッシュ・フロー)とは、企業価値の評価方法として企業のキャッシュフローに注目するものです。
上場会社・未上場会社問わずM&Aの際に広範囲に利用されており、将来的に期待されるフリーキャッシュフローを一定の割引率によって現在価値に直すことによって、企業価値の算出を行います。

上場会社の場合、株価は上場市場で価格形成されています。しかしM&Aで企業価値の算出する際は、DCFを利用し上場市場で付けられている株価とは別に、企業価値・株価を算出するケースが殆どです。

DCFでの企業価値算出プロセス

DCFで企業価値の算出を行う際は、下記の3つのプロセスを経て行われます。

1. 事業計画書から5年分程度のフリーキャッシュフローを算出
2. 割引率を決定し企業の現在価値を算定
3. 貸借対照表(B/S)の資産状況を反映し最終的な企業価値を決定

1. 事業計画書から5年分程度のフリーキャッシュフローを算出

DCFでの企業価値評価の際は、企業の将来期待できるキャッシュフローが評価の源泉となるため、該当企業の事業計画書の存在が前提です。
上場会社の株価についても、翌期決算の1株当たり当期純利益(予想EPS)を利用して、株価の評価を行うケースがありますが、DCFの場合は5年程度の事業計画に基づき企業価値の評価を行います。

DCFではフリーキャッシュフローの算出が必要不可欠となりますが、事業計画書から下記の数式を利用して算出します。

フリーキャッシュフロー=償却前利益(※)-設備投資額-運転資本の増加額
  ※税引き後営業利益+減価償却費

キャッシュフローをベースに企業価値を算出するため、現金の移動を伴わない費用である減価償却費を費用計上しない点、事業からのキャッシュフローをベースとするため利払い等の営業外費用を加味しない点に注意が必要です。

尚、5年程度のフリーキャッシュフローに加え、ターミナルバリューといわれる企業が存続する限り続く永続価値も加えた形で企業価値を算出することになります。

2. 割引率を決定し、企業の現在価値を算定

次に将来の各年度のフリーキャッシュフローについて、割引率を利用して現在価値を計算します。

割引率は自己資本コストと負債コストの加重平均を利用し計算する「加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital:ワック)」と呼ばれる割引率が利用されるケースが多く、加重平均資本コストの計算式は下記のとおりです。

加重平均資本コスト=
負債コスト(※1)×有利子負債の時価/自己資本の時価+有利子負債の時価 +
自己資本コスト×自己資本の時価/自己資本の時価+有利子負債の時価
  ※1:負債コスト=借入利率×(1-実効税率)

上記の計算式において自己資本コストはCAPM(Capital Asset Pricing Model’s)により算出することが一般的で、下記の計算式で算出されます。

自己資本コスト=リスク・フリー・レート+β×リスクプレミアム

リスク・フリー・レートはリスクのない債券の利回り(ノーリスクで得られる最低限の利回り)であり、一般的には10年国債を利用します。また、βは株価の変動率を指し、個別株式の株式市場全体に対する感応度を指します。
統計的に求められるデータであり、未上場企業では類似会社・類似業種平均値が利用されるのが一般的です。
リスクプレミアムは、リスク資産から期待される利回りとリスク・フリー・レートの差を指します。ハイリスクの資産の場合、高い利回りが求められることから、リスクプレミアムがリスクの大きさを指すことになります。

割引率の算出における最大のポイントは、「リスクプレミアムの数字をどのように設定するか」です。同じ事業計画書を元に企業評価を行っても、リスクプレミアムの数字によって全く異なる企業価値が算出されます。
M&Aの買い手や仲介のM&A会社にとって、リスクプレミアムをどのように見積もるかが、腕の見せ所です。

3. 貸借対照表(B/S)の資産状況を反映し、最終的な企業価値を決定

上記の1及び2から、事業計画書に基づいてキャッシュフローベースでの企業価値の算出がなされた後、貸借対照表(B/S)に存在する現預金や有利子負債などを加味した上で、最終的な企業価値の決定がなされます。

キャッシュフローベースでの企業価値が高くとも、借り入れ過多であれば最終的な企業価値は低くなる一方、逆に現預金及び有価証券を多数保有の会社であれば、企業価値は高くなります。

まとめ

DCFは、M&A時の企業価値算出の際に用いられる非常にポピュラーな方法です。ただし割引率及び現在価値の算出は、多くの計算を必要とするため、専門家に依頼するケースが多くなります。

また専門家によってもリスクプレミアムの判断は各社各様となるため、最終的に算出される企業価値は計算を行う企業により様々な数字が算出されます。

そのため、DCFにより算出される企業価値は、算出側の意図や考えが反映される企業価値算定方法であると認識しておくことが非常に重要です。

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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