2018.05.16
企業買収とは?知っておきたい具体的な方法とメリットを分かりやすく解説
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
少子高齢化と人口の自然減少が明らかな日本では今後、企業の生き残りをかけた競争はますます厳しくなると推測されます。また後継者不在の会社も、その存続問題を抱えることになるでしょう。
そこで増えると予測されるのが企業の買収です。規模を拡大するため、業務を効率化させるためなど様々な目的で、この買収が行われることになります。そこで今回は、この企業の買収について詳しくご紹介していきましょう。
企業買収とは
企業買収とは、他社の事業を金銭支払いなどによって買い受けることです。買い受ける対象は、事業を含む会社の株式や事業そのもの、あるいは事業に属する資産があります。
買収により議決権を持つ株式の2分の1超を有すると、普通決議の賛否を自由に決めることができます。さらに3分の2を超えると、特別決議の賛否も含めて完全な支配権獲得が可能なんですよ。
企業買収の目的
後継者問題の解決策として
個人経営の中小企業では、経営者の高齢化による後継者問題が増えています。事業を承継する適任者がいないことで会社の存続が危ぶまれる時、株式を譲渡して他の経営者に事業を承継することが可能です。
経営の効率化
テンプHDによるインテリジェンス買収が好例でしょう。インテリジェンスが得意とする人材紹介や転職支援事業を取り込み、テンプHDの人材派遣事業への依存度を下げることで収益率を高めています。
製品の付加価値を高めるため
空調事業として高く評価されているダイキンは、海外企業を買収することでサービスの価値を高めています。技術やサービスを取得することで空調機器をネットワークにつなぎ、ユーザーへ価値を高めたサービス提供ができるわけです。
製品開発の技術や営業ノウハウを取得するため
事業戦略に基づく企業買収を繰り返していることで知られるのが村田製作所です。コアとなる事業は通信・家電用のコンデンサーですが、スマホ用に必要な技術や営業ノウハウを手に入れて売り上げや時価総額を年間10%ほど増加させています。
グローバル展開のため
1999年、JTが米国RJRIを買収しました。その結果海外での販路を拡大しタバコ販売本数を10倍近くに増加しています。
買収でマーケティング投資も強化し、世界知名度を高めたことも成功要因のようです。また自社と欧米の文化を融合して、世界的なブランド力を高めた成功事例と言えます。
買収の方法
企業買収の方法には、大きく分けて株式を交換する3種類の方法、「株式譲渡」と「株式交換」、「第三者割当増資」が挙げられるでしょう。
株式譲渡は手続きが簡単なので最も多く行われる方法で、売り手の既存株主が保有する株式を譲渡し、それを買い手が現金を支払って受け取ります。
株式交換はその名の通り、買い手と売り手の株式を交換することです。手持ち資金を必要とせずに行えるのが特徴で、買収した会社は100%子会社となります。
第三者割当増資は上場していない企業が資金調達のために利用することが多い方法です。株主ではない第三者に新株を発行し、資金を受け取ることになります。買い手は既存の株式ではなく新たに発行した株式を購入するので、100%完全に買収するとことはできません。
買収を成功させるポイント
企業買収は経営陣同士の合意が得られなければ、敵対的買収となります。そのため円滑に進めるにはポイントを押さえておかなければなりません。
まず買収後に人材を流出させないように、買収先との良好な人間関係を築く必要があります。また買収先の経営を尊重することも大事です。
次にデューデリジェンス(買収監査)により相手先企業が提出する書類や情報を調査し、正確性を確認する必要があります。簿外債務や公害問題、商品やサービスに瑕疵が無いか確認するわけですね。
従業員のモチベーション、企業文化の融合、そして期待するシナジー効果を得るためには友好的買収を目指す必要があるでしょう。
買収によるメリット
企業買収を行うことで得られるメリットは色々とあります。株式交換による買収では、事業をそのまま引き受けることができるので面倒がありません。取引先との契約条件や従業員の雇用契約条件などを、そのままの状態で傘下に収めることができるわけです。
また両社が持つ能力や資源を統合することで、より大きなシナジー(相乗)効果を得られます。例えば売り上げが1+1で2とならず、2を超える増加となるわけです。
販売や研究開発などのコストも削減できますし、低金利での借り入れなど資金調達力も高まります。異なる企業文化を取り入れることで、従業員意識を変えることも可能。その結果、業務効率の向上にもつながります。
買収における注意点とは
企業買収には注意すべき点も幾つかあります。契約前に事前調査や交渉をしっかり行っておかないと、簿外の負債が発覚したり問題を抱えていることが発覚したりする可能性もあります。
また買収にはスタンドアローン問題にも注意が必要でしょう。これは買収対象会社がグループ企業に属する一社である場合に生じます。
これは買収対象会社がグループ企業から分離することによって、新たに仕入れや販売、あるいは生産にコストが発生するというものです。
このスタンドアローン問題は、買収プレミアムとして価格に反映させる必要があります。買い手としてはヒアリングを行い、スタンドアローン問題によって受ける影響を洗い出して適切な買収金額を提示することが必要ですね。
例えば新たに設備投資の必要が生じるのであれば、その分を加味して見積もることになります。
まとめ
企業買収は様々な目的の下に、シナジー効果を期待して行われます。大事なことはリスクを最小限に抑えるための事前準備と、コストに見合った効果が得られるかをきちんと調べることです。
人材の流出を抑え、新たな簿外債務が見つかることがないように入念にチェックする必要がありますね。
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。
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