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#61 ミクシィとXTechの提携から浮かび上がるM&A業界の問題点 | M&A BANK

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2019.03.11

#61 ミクシィとXTechの提携から浮かび上がるM&A業界の問題点

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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モンストに次ぐ柱の創出へ–ミクシィとXTech、M&Aで包括連携協定を締結
ミクシィは2月7日、スタートアップスタジオのXTech(クロステック)と、M&Aに関する包括連携協定を締結したと発表した。
協定の締結は、ミクシィの重点領域における成長加速を目的としたもの。ミクシィは中長期的な投資方針として、事業開発およびM&Aに対し3年から5年で1000億円規模の投資を実施し、新たな事業の柱を構築することを掲げている。ミクシィは今回、XTechをM&Aに関する戦略パートナーとし、両社それぞれのノウハウを掛け合わせることで、M&Aを推進していく。……
引用元:https://japan.cnet.com/article/35132422/

ミクシィとXTechの提携

2月7日、ミクシィ社はXTech(クロステック)社とM&Aに関する包括連携協定を締結したと発表しました。
クロステックがミクシィまで買収したのか!?と一瞬思いましたが全然そんな話ではありませんでした。

まずは両社の簡単な説明を。
XTechは、昨年誕生したベンチャーキャピタルなどを運営する運営会社です。
2018年9月、老舗インターネット企業のエキサイト社買収を公表し一気に注目を浴びました。

ミクシィ自体の説明は不要かと思いますが、近年はSNSとしてのミクシィではなく、ゲームのモンスターストライクが空前の大ヒットを飛ばし利益を稼いでいます。
とはいえゲームの一本足打法だとリスクが高く、これまで色々とチャレンジしてきましたがなかなか第二の柱が出てこない状態が続いていました。
こう書くとネガティブに見えますが、前期の当期純利益は400億を超えてます。
そんな時代が数年続いていたこともあり、気がつけば現預金が1,500億円以上も溜まっていました。

M&A業界の問題点

そんな中、今回の提携に至るわけですが、具体的な提携内容は下記とのことです。
・初期検討に関する事項
・デューデリジェンスに関する事項
・PMI(M&A後の統合業務)に関する事項

いかがでしょうか。よくわかりませんよね笑
一言でいえば、「①100%ミクシィの立場に立ち、②能力のあるメンバーで、③M&Aの全プロセスを支援します」ということだと思います。
M&Aにあまり詳しくない方からすれば、「プロとしてミクシィを支援するならそんなの当たり前じゃないの?」と思うかもしれません。
ところが現状ではこれが実践できているM&Aアドバイザーは多くないと感じています。

なぜでしょうか。それはいくつかの構造的な問題があるからだと考えています。

100%ミクシィの立場に立つこと

まず①について、M&AアドバイザーはM&A成立による成功報酬に依存した報酬体系になっている場合が多く、どうしてもM&Aを成立させようとするインセンティブが働き、買うべきでない案件も進めようとするなど100%依頼主の立場に立ちづらい構造になっています。

この様な事を書くと「自分たちはプロとして依頼主のためにやっている」、「継続案件が取れなくなるから騙す様な事をするわけがない」などと反論する方々が出てきますが、何も皆がそうだと言っているわけではなく、構造的に案件成立のためだけに動きやすい状態になっているため、問題のあるアドバイザーも多くいるということです。

また、買い手と売り手の双方から報酬を得る仲介の場合、100%どちらかの立場に立つのは構造として不可能です。
M&A仲介会社にはストライク社のように評判のいい会社もありますが、こちらも同じで言いたいのは構造として問題がある仲介会社が現れやすいということです。

ちなみにM&A仲介ビジネスは利益相反問題が指摘されていますが、筆者はM&A仲介ビジネスについて条件つきで肯定的です。この点については近いうちに書きます。

能力のあるメンバーであること

②について、ここ数年は空前のM&Aブームで各社がM&A仲介業に参入し、また高い報酬を求めて多くの人材がこの業界に集まっています。
それは別にいいのですが、上記の通り多くのM&Aアドバイザーのビジネスモデル的にM&Aを成約させることに主眼をおいている結果、組織としても個人としても営業力偏重になっており、M&Aを総合的に支援するための能力が身につきにくい構造になっています。

さらに、アドバイザーやコンサルタントとしてM&Aを行うのと当事者として行うのは大きく異なるため、当事者としての経験を持っている人は意外と少ないです。
さらにさらに、M&A業界は金融やコンサル出身者が多く、ミクシィのようなインターネットビジネスに明るい人材が少ない印象です。

M&Aの全プロセスを支援すること

③について、②とも関連しますが、アドバイザーはM&Aのプロセスの中で買い手と売り手のマッチングに注力しているため、M&Aを含めた経営戦略を練るプロセスや、買収後の統合業務を行うプロセスなどにおける支援が十分に行われていないケースが多いと考えています。

もちろんM&Aは当事者の責任によって行われるものであり、アドバイザーに期待し過ぎるなという意見もありますが、M&Aは日常的に行われるものではなく、出回っている情報も玉石混合で、現状では経験者も少ないため、全ての問題を自己責任で片付けるのは賛成できません。

克服方法―XTechの場合

上記のような構造的問題がM&A業界にはあるとした上で、今回の提携はこれを解決できるのでしょうか。
まず①については、XTechがミクシィから受け取る報酬にはおそらくM&A成立による成功報酬も含むでしょうが、それ以外の継続支援に関する報酬部分が大きいようにみえます。
もちろん仲介ではなくミクシィからのみ報酬を受け取るはずです。
他のM&Aアドバイザーからの持ち込み案件についても、ミクシィの立場からその可否を検討する役割を担うと考えられます。
このように100%ミクシィの立場にたった支援を行える体制になっていると考えられます。

②について、XTechはそもそもエキサイトの買収など自らがM&AとPMIを行っています。
事業会社、特にインターネットビジネスのM&Aおよび経営経験を持っているということは現在の市場環境において圧倒的に価値があると考えており、これは従来型のM&Aアドバイザーの限界を超える1つの方法だと考えています。
XTech代表の西條さんはお会いしたことはありませんが、サイバーエージェント時代に自ら事業を立ち上げ事業売却に導き、WiLではベンチャー投資を数多く行うなど、当事者として多くの実績を残しています。
したがってミクシィのM&Aアドバイザーとしての能力は申し分ないと言えるでしょう。

③について、案件探索のみではなく、その後のPMIまでを支援するという提携内容になっており、また報酬体系も上記の通り成功報酬のみではないと考えられるため、買収プロセス全てにおいて質の高い支援が行われるものと考えられます。
以上の結果、ミクシィのM&AアドバイザーとしてXTech以上の適任者はいないと言えるのではないでしょうか。

このように、XTechの今回の取り組みはM&Aアドバイザーの新たな形を感じさせるものです。

知り合いもいないのに推測であれこれ褒めちぎっていますが、実際どうなのか当事者に取材したくなりました。ダメ元でXTechに取材依頼してみようと思います。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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