M&Aを成功させるために必要なことと言えば、企業価値を正確に算定することでしょう。このように、金銭に関わる部分に力を入れることは間違っていませんが、それだけではM&Aに失敗してしまうかもしれません。
会社を買う場合には様々なことに留意する必要があります。よいことばかりが思い浮かんで安易に会社を買ってしまうと、後悔することになるでしょう。
留意すべき事項としては、リスク管理の確定と社員への情報の開示などが挙げられます。ここでは、会社を買うときに留意すべき事項についてご紹介します。
リスクを確定させる
買収は、今後より多くの利益を得るために行うことですが、安易に会社を買収することで、不利益を被る可能性もあります。このような事態に陥る原因の一つに、リスクを確定しないままに買収してしまったことが挙げられます。
買収先の企業のリスクを確定させ、一つずつ対策を立てることが大切です。また、対策できないほどのリスクがある場合には、買収を考え直すことも視野に入れましょう。
会社を買収するときにリスクとなり得ることは次のとおりです。
簿外債務
決算書に記載がない債務のことを簿外債務と言います。簿外債務は、賞与引当金や退職給付引当金などの計上漏れの他、資産の架空計上や負債を計上しないなど意図的な行為によっても発生します。
保障債務
買収先の会社が他社の連帯保証をしている場合、保証先の企業が債務を履行できない、あるいは意図的に履行しなくなった場合に、買収先の会社が代わりに履行することになります。
グレーゾーンの節税
利益が大きい会社は、グレーゾーンの節税をしている可能性があります。脱税と捉えられかねないレベルの節税をしている場合、税務調査の際に問題となるかもしれません。利益が大きい場合、重加算税や過少申告加算税の額も大きくなるため注意が必要です。
贈収賄
公的機関との取引がある場合、贈収賄のリスクがあります。何らかの理由によって買収後に贈収賄の事実が発覚した場合、会社の存続の危機に陥るかもしれません。そのため、公的機関と取引がある会社を買収する場合は、慎重に検討した方がよいでしょう。
社内の問題
横領や情報漏洩、業者との癒着など様々な問題が起きている可能性もあります。このような事実は、社員のモチベーション低下だけではなく、世間からの評判を大きく落とすことにもなるため、業績悪化に繋がります。
人材の流出
買収後、会社の方針や就業規則が変更になったことで、一気に多くの社員が退職する場合があります。買収する側の会社に対してマイナスイメージを持っているという理由だけで退職する社員もいるかもしれません。人材の流出は、会社に大きなダメージを与えます。
取り扱うサービスの問題
リコールの他、ソフトウェアのトラブルなど、取り扱う製品やサービスに問題が起こる可能性があります。このようなトラブルは信用問題に関わるため、できるだけ避けるべきリスクと言えるでしょう。
世間を巻き込むレベルの問題
産業廃棄物や土壌汚染、空気汚染など一般市民を巻き込む問題が起こる可能性がある事業の場合、リスクが高いと言えるでしょう。トラブルへの対策ができているか確認して、できていなければ対策を立てることが大切です。
社員のモチベーションを高める
M&Aによって独自の製造技術やノウハウを得るためには、社員の協力が必要不可欠です。社員に不満が残るM&Aでは、当初の目的を達成することはできないでしょう。社員は社長の人柄に魅力を感じてついて行っていることもあります。
そのため、社長に対して失礼な振る舞いをしたり、待遇を悪くしたりするようなことがあれば、社員のモチベーションが大きく低下する可能性があるのです。
買収先の社長に会社や顧問の席を用意するなど、買収する側の会社について行こうと思わせられるよう行動することが大切です。
社員への情報の開示
買収することは、必ず幹部社員に予め伝えておくことが大切です。新聞を読んで初めて知るようなことになれば、モチベーションの低下に繋がります。幹部社員のモチベーションが低下すれば、その部下の社員のモチベーションも低下するでしょう。
正式契約後には幹部社員に情報を開示し、不満や不信感などが募らないよううまくコントロールすることが大切です。
おわりに
M&Aは、買収先の会社の技術やノウハウを手に入れられるというメリットがあります。しかし、会社によっては様々なリスクを抱えており、そのまま買収すると大きな問題が起こることもあるのです。
リスクを確定させたうえで対策する必要があります。また、社長や社員のモチベーションを低下させないように、情報の開示や待遇について慎重に決めるようにしましょう。
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。
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