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IPOにまつわる説は誤解もあるので要注意|Vol.213 | M&A BANK

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2019.09.14

IPOにまつわる説は誤解もあるので要注意|Vol.213

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 目次 

1.  素朴な質問をいただきました
2.  「本気出せばいつでもIPOできる」勢に一言
3.  M&Aは自由、IPOは不自由?
4.  IPO前後でのM&Aって、実際どうなの?
5.  人に相談しにくい、切実なお悩みも。。

 

素朴な質問をいただきました

島袋
今回も質問回答回、テーマはIPOとM&Aについてです。
以前解説しましたが、どちらともイグジットなんですよね。

冨岡
そうです。IPOもM&Aもイグジットの一種です。

島袋
ではまず1つ目、「ベンチャー経営をしているが、IPOとM&Aどちらがいいのか?

冨岡
めちゃくちゃざっくりした質問なので難しいですね。(笑)

島袋
どちらがいいか、そりゃ自分で考えろよって話ですよね。(笑)
そもそもIPOできるのかって問題もありますし。

冨岡
そうなんですよ、IPOできるんだったら、ほとんどのケースでM&Aもできるんです。

島袋
そりゃそうだ。
最近IPOという言葉にM&Aを並べられていますが、ちょっと申し訳ないなと思うんですよ。IPOとM&Aは全然違いますから。
IPOは狭き門ですが、M&Aは変な話いくらでもできますから。

冨岡
ラーメン屋ひとつ売ってもM&Aですからね。

島袋
同じカテゴリで言うなという話ですよね。ラーメン屋さんももちろん大事ですけれども。

冨岡
どちらも同じくらい検討しているなら、まずはIPOできる準備をしておいたらいいと思います。
IPOをするためには、監査法人や証券会社を決めて体制を整えたりするのでいろいろややこしいんですが、それが整っているとM&Aするときもすごくスムーズなんですよね。
なので、イグジットを考えていならIPOできるようにしておくという発想は悪くないと思います。

あともう1つ気になっているのは、だからと言って「俺たちはいつでもIPOできるから」みたいなことを言ってしまうこと。
これはよくないと思うんですよね。

島袋
おっと毒舌冨岡、どういうことですか。

 

「本気出せばいつでもIPOできる」勢に一言

冨岡
たまにというか、けっこういません?
いつでもIPOできるんだけどね」「いついくかだけ考えてる」みたいな。いませんか?

島袋
僕友達少ないんで。

冨岡
ずるいですね。(笑)
僕も自分でIPOした経営者じゃないので偉そうなことは言えないんですが、支援する立場で見ていても、いつでもいけるようなそんなに簡単な、甘いものじゃないと思いますよ。
「このタイミングで絶対にいくんだ」とか「こうなったら絶対にいくんだ」という強い意志がない会社さんは、基本IPOできないと思います。

だから、本当にIPOをしようと思っているなら、しっかり期限を決めて、コミットしてやった方がいい。

島袋
「いつでもできる」と言ってできない会社って、なんでできないんですか?

冨岡
突き詰めれば数字の話にもなりますが、IPOって数字以外にも社内の体制とかいろいろな要素があって、その条件をクリアするのもけっこう大変なんですよ。
それで「そこのコミットは難しい」とか、「譲れないことがあるから」と言ってすぐに諦めてしまうことがけっこう多いです。

そうやって上場に向かっているときは監査法人とか証券会社とかIPOの審査や監査をする方たちにチェックされていると思いがちですが、その人たちはIPOを応援してくれてるとも言えるわけです。
そういう人たちに「ああここで折れちゃうのか、やる気ないんだな」と思わせることにもなりますから、彼らの応援するモチベーションも削いじゃうし、いいことないんです。

 

M&Aは自由、IPOは不自由?

島袋
この質問を聞いていて思ったんですが、仮にこの質問された方がIPOかM&A、どちらもできるようなステージにいた場合、どちらにすべきかはその経営者の性格にもよると思うんですよ。
上場したら、それ以降は四半期ごとに株主にどんどん情報を開示していかないといけない。
ビジネスを作るのはうまいけどそういう拘束が得意じゃない方だったら、ある程度キャッシュ化して余生を楽しんだり、新しい事業を作ることに時間を使った方が幸福度は高いんじゃないかと思ってて。

冨岡
それは事実としてあると思います。
でも、「IPOしちゃうと全部がんじがらめになって、長期間好きなことが一切できなくなります」というのは違うと思うんですよ。
たとえば上場して一定期間経ってから社長を退いて会長になったり、大株主としてだけ残ったり、そこから徐々に株を売ったり、あるいは自分で小さい事業を作ってMBOしたり、いろんな道があります。
IPOしたらもう何もできないということはないんです。

たしかに工夫は必要ですが、IPOもして、好きな事業にコミットしてやり直す、両取りのようなことも実現可能です。
短絡的に「M&Aは自由、IPOは不自由」というのは違うんじゃないかなと思います。

 

IPO前後でのM&Aって、実際どうなの?

島袋
次です。
IPO前はM&Aができないと聞いたのですが本当ですか?」

冨岡
難しいというのは事実ですね。
調べてもらうと分かると思いますが、IPOする1年前は特にM&Aの件数は減ります
IPOの審査では今までルールをしっかり守ってきているかチェックをするわけですが、たとえばM&Aで買収するとルールが全然変わってしまうことがあります。
そうでなくても新しく見ないといけないところが増えるわけですし、予算と実績を達成していくことについても、新しく買うと不透明になりやすいですよね。

そういう要素があるので、基本的には上場が迫ってくればくるほどM&AはIPOのリスク要因になりやすいです。
それで控えることが多いですね。

島袋
じゃあ、申請期で買って上場した会社ってあるんですか?

冨岡
なくはないですよ。買った会社が買い手にとって小さい会社だったら体制にも影響がないですから。
自分たちと同じくらいの売り上げを持つような会社を買ったらそうはいかないですよね。

島袋
ということは、申請期もだめ、直前期もだめ、直前前期もだめでしょうか。

冨岡
直前期で買っている会社さんはありますね。あまりおすすめしないですが。少なくとも直前期の下期、半年経ったあとくらいからはさすがにやらないだろうとは思います。

たぶんこういう質問をされるのはIPO前提の会社さんに売ろうとしている方だと思うので、買い手候補の会社はIPO準備のどのタイミングなのか、自分が売ろうとしている会社は買い手にとってどのくらいの影響力があるかは考えた方がいいと思います。

それと、実はIPO直後も注意が必要です。買っているケースもありますが、基本は難しいので。
なぜかというと、IPOをするときはIPOする日までの情報を公開するんですね。なのに、IPOした1週間後にM&Aをしたとなったら「絶対IPO準備中にその話も進んでたでしょ、その情報も言ってよ」と問題になりやすいんです。

だから基本はIPOした直後ものM&Aも一般的ではないですね。
IPO前後の1年くらいは、そういう話は自由にしづらいと思います。

 

人に相談しにくい、切実なお悩みも。。

島袋
次です。
反社会的勢力との関わりがあり、IPOはできないと思うので、この場合はM&Aをした方がいいでしょうか」

冨岡
これは切実ですよね、関わり方によります。
その人自身が反社だったらちょっと…

島袋
僕は違いますよ、やめてくださいよ!

冨岡
だからIPOをやめたわけじゃないですもんね。

島袋
ちがうちがう、そもそもできないです。

冨岡
(本人が)反社だったらM&Aもそもそも無理だろうという話になりますが、たとえば取引先の一部が反社だったことがあるとか、反社のフロント企業で働いたことがあるケースだと、本人の悪意がなくても起こり得ると思うんですよね。
この場合、結論としてIPOは難しいです。だけど可能性としてはゼロじゃない

過去に反社・反市場関連と思われるところで勤務実績がある経営者でIPOまでたどり着いた方もいます。
IPOをすると会社に関するいろいろな書類が開示されて誰でも見れるようになるんですが、それに「昔こういうところで働いていた」とけっこうサラッと書いてあるんですね。
でも、IPOするまでのやり取りを想像すると相当大変だっただろうと思うんですよ。
「絶対何もしていなかったと証明してください」とか、「他に関わった人がいたら全部教えてください」とか「どういう経緯だったんですか」とか、尋問みたいなのが絶対あったと思います。
だけど、それを突破してIPOまでたどり着いたケースもゼロではないです。

M&Aも難しいですよ。
でもIPOほどは審査が厳しくないケースがあったりもするので、反社との関わり方にもよりますが、M&Aの方が可能性はあるんじゃないかと思います。

島袋
いっそ反社の会社に売っちゃえばいいんじゃないですか?

冨岡
たしかに。違うリスクがありそうですけどね。(笑)

島袋
あ、「おかえり」とか「派閥が違うぞ」みたいなことですかね。
それは逆に燃えそうですね。(笑)

冨岡
売ったあとに業績下がったりしたら、夜眠れなそうですね。

島袋
怖い!
ということで、IPOは基本的に難しい、M&Aの方が多少可能性があるだろうということでした。

冨岡
けっこうマニアックな議論でしたね。

島袋
そうですね。
次回は私自身の経営で後悔していること、今は何に気を付けているか、そのあたりのご質問をいただいているのでお答えしたいと思います。どうぞお楽しみに!

【出演者情報】
■島袋直樹:M&A BANK株式会社-取締役会長
シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡し、2018年3月よりM&A BANKの運営を開始。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。

■冨岡 大悟:M&A BANK株式会社-代表取締役/公認会計士
KPMG/あずさ監査法人のIPO部、フロンティア・マネジメント株式会社でのM&Aアドバイザー業務を経て、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後にTOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IdeaLink株式会社のCFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員も務める。

順次更新、島袋・冨岡の出演動画 一気見はこちらから
(M&A BANK YouTubeチャンネル)

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