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2018.06.25

売却額が下がってしまう要因とは?|フォーサイト総合法律事務所大村代表コラム Vol.4

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ベンチャー界隈No.1との呼び声の高いフォーサイト総合法律事務所・大村代表パートナー弁護士をお招きして、ベンチャー企業経営者にとってのM&Aについてたっぷりお話しいただきました。
IPOを目指していた、またはIPOを目指しているものの、M&A(バイアウト)についても理解を深めたい経営者必見の情報が満載。普通はなかなか教えてもらえないM&Aの実情についても大公開してくださいます。

訴訟を抱えているとまずいのか?

訴訟を抱えているから株価が下がる、ということはあまりありません。(そもそも)売却は訴訟が終わってからという話になるでしょうから。100万円程度の訴訟ならそのまま売却の話は進むでしょうが、たとえば利益1000万円の企業が1億円の訴訟を抱えていたら、そもそも誰も買収しないでしょう。

もし、例えばフランチャイズ展開の店舗ビジネスで、加盟店の一部が集団訴訟をしていて、その金額が仮に1億円・会社の利益も1億円だとしたら、判断は「裁判が勝ち筋かどうか」をもとに行われます。そこも含めて我々(専門家)はデュー・ディリジェンスするわけです。
裁判を抱えているという話が出たら、裁判記録もデュー・ディリジェンス資料として出してもらいます。原告(請求する側)の主張がちゃんちゃらおかしいなら、関係なく買収するかもしれませんし、「この裁判は巻ける可能性が高いのでP/Lヒットする。仮に買収するとしても、1億円の請求が認められたという前提で考えたほうがいい」と助言するケースもあります。
裁判の内容も重要ですね。中でも特に労務裁判を起こされている会社はコンプライアンスが不安です。他の従業員からも訴えられる可能性がありますし、そうなれば買収は絶対にありえません

最大の理由

ほとんどの場合、ダウンラウンドになってしまうことは、裁判の影響ではなく、業績が思ったより伸びないことによって生じます。企業は資金調達をするとき、事業計画を作って「今後、売上・利益はこんな感じで伸びていきます」と宣言しますが、その計画通りにいくことはほとんどありません。それで自分の会社では立ち行かないから売却しようとなったときは、ダウンラウンドで売却せざるを得なくなります。

それで投資家が普通株だけ所持している場合、企業価値10億円で1億円の出資だと10パーセントになるので、5億円で売ると5000万円しか入らず、投資家は損することになります。そこで投資家はそのリスクを減らすために優先株を利用することになります。

優先株で打診されたらどうする?

なので、投資家は優先株で出資を打診するでしょうが、私たちは企業側には、普通株での資金調達を交渉してくださいとアドバイスすることもあります。そこで重要なのは、企業と投資家の力関係です。企業がどうしても調達したいのか、投資家がどうしても出資したいのかによって、交渉の状況は変わります
ある会社の例では、VCが優先株の契約書をもってきましたが、VCがどうしても投資したがっていたので、企業側が一度つっぱねたところ、VCは「投資したいから」と今度は普通株の契約書を持ってきました。結果それで予定通りに調達して、今は上場企業になっている。そういうケースもあるんです。

今、世のトレンドでは優先株が当たり前と思われていますが、そんなことはないと思います。いい会社は普通株で資金調達ができますし、私たちのクライアント企業の半分ぐらいはそもそも外部資本が入っていません。また、創業30年ぐらいの老舗企業が上場を目指すような場合も普通株で資金調達していきます。必要な外部資金の調達であれば問題ありませんが、上場を目指すために外部資金調達をするというのは本末転倒です。資金調達をしていなくても上場する会社もありますし。


次回更新は6月29(金)、買い手がM&Aにあたってどういったポイントを気にしているか、詳しく解説いただきます。

■大村 健氏:フォーサイト総合法律事務所‐代表パートナー弁護士
代表を務める法律事務所は、生え抜きの弁護士・司法書士が所属し、幅広い業種のベンチャー企業に対する法的支援業務を展開する。IPOや市場変更、M&Aの支援実績も多数。複数の上場企業で社外役員も務める。
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