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#29 ライザップのサプライズ人事に見る、アクハイヤーより優れた人材獲得術 | M&A BANK

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2018.06.03

#29 ライザップのサプライズ人事に見る、アクハイヤーより優れた人材獲得術

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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カルビー松本会長がRIZAPを選んだ理由 —— 夏からボディメイクに通う

相次ぐ企業買収で急拡大しているRIZAPグループは2018年5月28日、カルビーの会長兼CEOを務める松本晃氏(70)を、グループの代表取締役COO(最高執行責任者)に迎えると発表した。松本氏のCOO就任は定時株主総会が開かれる6月24日の予定で、社長の瀬戸健氏(40)は代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)となる。松本氏は、5月28日夜に開いた記者会見で、RIZAPへの参加を決めた経緯の詳細を語った。

「一度、お会いしたい」

松本氏と瀬戸氏が初めて会ったのは、およそ4ヶ月前の1月24日のことだ。瀬戸氏が面会を申し込んだところ、松本氏がRIZAPを訪問し、いっしょに食事をしたという。

2月14日、松本氏は再びRIZAPを訪問した。

「その時は、大部分がRIZAPのゴルフの話とか、ボディの話とか。気に入りまして」と説明する。その2、3日後、松本氏はRIZAPに入会し、ゴルフの特訓をはじめている。3月27日、松本氏は、カルビーの会長兼CEOを退くと発表。瀬戸氏は、その日のうちに松本氏に連絡を取り、RIZAPの経営への参画を申し入れたという。

記事引用元:https://www.businessinsider.jp/amp/post-168332

サプライズ人事

今年一番の人事情報というか転職話です。5月28日、ライザップ社はカルビー社の松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)を6月に新設する最高執行責任者(COO)として迎え入れると発表しました。松本さんといえば、ジョンソン・アンド・ジョンソンの日本法人やカルビーの社長をつとめたプロ経営者の代表格です。

今年でカルビーを辞めることを公表していたので、次はどこの社長になるのかと注目されていましたが、まさかライザップだとはと皆が思ったはずです。

アクハイヤー

ところで、M&Aを行うには様々な目的がありますが、その一つにAcqui-hire(アクハイヤー)というものがあります。アクハイヤーとは、一言でいえば人材を獲得することが主目的のM&Aです。
買収対象企業の経営者が買手企業にとって魅力的であり、M&A後も買手企業のために貢献してほしいと考え実行するものです。

日本ではヤフー社がこの手法を多く採用しているといわれ、ヤフーの川邊次期社長、宮澤執行役員、小澤執行役員はもともと買収先企業の経営者だったそうです。最近では、ZOZO社によるVASILY社の買収はアクハイヤーのように見えます。VASILY社長だった金山さんは、現在ZOZOの子会社として4月に設立された新会社スタートトゥデイテクノロジーズの代表取締役に就任しています。
もちろんアクハイヤーと言っても、人が欲しいだけで会社や事業を買うのではなく、結果として優秀だったから役員に登用しているという側面も当然あるので、買収する目的の一つとして人がほしい、という感覚が近いように思います。

アクハイヤーより優れた人材獲得術

このように、企業経営上重要度の高い人材獲得のためにアクハイヤーが行われるのですが、万能ではありません。当然、会社や事業ごと買うわけですから買収金額は大きくなります。何より、買収により優秀な人材を獲得できたとしても、本人に新しい環境で仕事をするモチベーションがなければ、早晩退職するか、退職しないにしても大きな結果は出せないでしょう。

ここでようやく今回のニュースに戻るのですが、ライザップはこれまで多くのM&Aをしてきましたが、今回はM&Aの話ではありません。単純に松本さんが転職したって話です。また、今回のニュース公表後に松本さんのインタビューが出ていましたが、自らライザップを訪ねて瀬戸社長に会い、そこで魅力を感じて入社を決意したとのことです。これはライザップとしては1円も払うことなく国内屈指の経営者を獲得したことになります。
つまり、人材獲得戦術の内で最強の方法はアクハイヤーではなく、この人と仕事がしたい、この事業をやりたい、と思わせることだという至極当然な話に帰結するのだなと感じました。そしてそういったことができるライザップが、今後どんな人たちと、どんなことを成し遂げていくのが楽しみでなりません。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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