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事業譲渡を口実に自然な形でリストラを行いたい|判例紹介 Vol.07 | M&A BANK

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2019.06.12

事業譲渡を口実に自然な形でリストラを行いたい|判例紹介 Vol.07

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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 判例によれば… 
やり方を工夫しても、都合よく解雇できない

〇 経営不振による解散・解雇ならやむを得ない
▲ 一部の社員の排除や労働条件の改訂が目的ならアウト

 

ポイント|部分的に譲渡できる事業譲渡でも、「特定の人だけ解雇」はムリ

  • そもそも事業譲渡の場合は、資産負債を特定して個別に譲渡する
    ほしい部分だけを譲渡(買収)できるのが「事業譲渡」
    …その分、譲渡の対象になる契約や許認可・労務関係はすべてやり直しになる
    労働契約を承継する義務はなく、合意により自由に定めることができるのが基本
  • 承継の範囲に入ると明記していなくても、「入る」と認定されることがある
    …そもそも事業譲渡契約を結んでいなくても、特に条件を付けず事業に必要な資産がほとんど売却されている場合は、雇用契約の承継も合意されていたと判断される
  • 別のハコに事業を移す際に自然な形で一部の人を解雇、は解雇権の濫用にあたる
    …同一人物が経営する企業の間で事業譲渡を行って、元の企業の解散・従業員の解雇を行い、一部の人を除いてもう一方の企業で再雇用、もアウト

判例紹介|勝英自動車学校(大船自動車興業)事件(平成17年頃)

概要

  • 解散会社が譲受企業での再雇用後の労働条件がもとの労働条件を相当程度下回ることを告知
  • 再雇用を希望する従業員に退職届の提出を求める
  • 退職届を提出した従業員は全員再雇用された
  • 両社の代表取締役が同じで、経営主体を共通にしていた

訴えた側:退職届を提出せず、解散した会社に解雇された従業員
労働条件の水準が下がることに意義のある従業員を排除する目的で行われていると主張

判決

  • 従業員を移行させるという原則部分は有効
  • 意義ある従業員を譲受会社への移行から個別に排除する旨の合意は公序良俗に反し、民法90条により無効
  • 原告の解雇は解雇権濫用により無効

原告との労働契約は営業譲受会社に移行したと認定

理由

原則として従業員との労働契約を引き継ぐが、労働条件の水準が下がることに意義のある従業員はそこから排除するという合意が形成されており、その目的を達成するのに過不足のないように契約が定められていたと認定できるため。

参考文献
阿南剛・後藤高志・辻川昌徳(2015)『実務分析 M&A判例ハンドブック』商事法務

 

「リストラ目的のM&A」はあるある?

今回は事業譲渡における労働契約の承継についての判例をご紹介しました。

以前開催したイベントでも、リストラが実質的な目的となっていたM&Aが裁判に発展した事例をご紹介いただいたことがあります。
事業譲渡とは別の合法的な方法をとられてしまい、利用された側は泣き寝入りするしかないケースもあるそうです。

M&A経験や資金が豊富な大企業はそこまで戦略を練りあげている可能性があります。
特に初めてM&Aに臨む場合は、知識量の差につけこまれて不利な契約になってしまわないよう、少しでも勉強したうえで臨むようにしたいですね。

 

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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