2019.09.12
気になる‟M&Aの対価”に関するQ&A|Vol.212
「対価は株で」ってどうなの?
島袋
今回も、譲渡代金についてのご質問にお答えします。
「譲渡代金を現金ではなく株式やSOでもらうことについてはどう思いますか?」
冨岡
そこそこある事例ですね。
これも株やストックオプションを渡すと言ってくれている会社の状況によって全然違います。
たとえばある上場会社がうちの株を買うときに、現金ではなくその上場会社の株を株式交換みたいな形で対価として渡される場合は、株価は変動するものの、非上場会社と比べれば遥かに現金化しやすい。
でも、上場もしていない、しかもビジネスもまだ成り立っていないベンチャー企業が「うちは絶対成功するから、うちの株を持っておいてくれ」と言ってきたら話は変わりますよね。
本当に成功すればいいんですが、どうなるかは正確にはわからないので、目利きになりますよね。
自分もそのベンチャーに入ってコミットするでもないと難しいと思います。
なので、上場会社株をもらう場合、未上場会社株をもらう場合で全然違いますし、未上場会社でもステージによってさらに違ってきます。
ストックオプションは条件が付くかも
冨岡
さらにストックオプションの場合は今の話にプラスアルファの要素が出てきます。
新株予約権だと条件を設定できて、たとえば「ストックオプションを渡すので、一緒に会社経営も担ってください」とすることも可能です。それでうまくいっているときはいいんですが、やめることもありますよね。その場合にストックオプションの権利が消滅するようになっているケースがあるんです。
そういう意味で、ストックオプションは受け手からすると権利として弱いと言うか、株とは権利の内容が違うということです。
それに、株主としての権利もないわけですから。
島袋
ストックオプションの場合はそうなんですね。
冨岡
あと、ストックオプションの場合は(株を)もらったときの株価とIPOしたあとの株価の差額が基本的にはキャピタルゲインになります。
なので、株を発行した段階でその会社のバリュエーションが高くなっていると、実はあまりうまみがないケースもあります。
島袋
やはり現金で一括の方がいいということですね。
冨岡
ほとんどのケースはそうだと思います。
でも、売ったあとにその会社にジョインして自分も一緒に伸ばしていきたい場合は、その本体の株をもらっておいた方がいいケースですよね、せっかくやるなら。
島袋
売っておわりじゃなければね。
冨岡
うまくいったときに成功報酬的なキャピタルゲインもあった方が責任感も増しますし、リターンの意味でもいいと考える人が多そうですよね。
そのあとも中長期的にコミットするなら、株やストックオプションを積極的に検討するのはありだと思います。
譲渡代金を高くするためにできること
島袋
次です。「少しでも譲渡代金を高くするにはどのような方法があるのでしょうか」
冨岡
ざっくりとした質問なので難しいですが、やっぱり買い手にとって価値が高いと思ってもらうことが本当に唯一の秘訣です。
そのために何をすればいいか、たとえば買い手に買いたいと思っている事業に関する知見がない場合、引き継ぎ期間を当初よりも長くするとか、社員を一部・一定期間貸し出してカバーすると提案するとか。
あるいは買い手の状況を見て、たとえば買い手が新しく中計を発表するころや決算のタイミングの、何かいい情報・材料がほしいと思っているときを狙って(売却提案を)持っていくということもできます。
高度ですが、そういう方いらっしゃいましたよね。
オークションは難しいかも。代わりにできるのは
島袋
あとは、複数社からオファーが来る状況になれば自ずと価格は上昇しますよね。
冨岡
そうですね、いわゆるオークションの形で、買い手候補を同じ時系列に揃えて競らせると、一般的には譲渡金額・売却金額は上がりやすいです。
でもこれには相当労力もかかりますし、自分たちだけでやるのはきついんです。どうしてもそこにプロが入らないといけない。でもプロは相当大きな規模じゃないとそういう面倒くさいことはやらないので、そこはバランスですね。
あとは、買い手の事業計画を一緒に考えてあげるスタンスを取るのもおすすめです。
たとえば相手が上場企業だと、役員会とか社内でまず通さないといけないので、買い手は対象会社から出てきた計画を元に事業計画を作るんです。
そのときに、アップサイドになり得る情報を売り手が教えてあげる、さらに「自分たちと組めば、あなたたちならこんなことができるんじゃないですか」と一緒に考えてあげる。
普通売り手さんは「そこは買い手が考えることでしょ」と思いがちなんですが、売り手のことは売り手の経営者が一番知っていますよね。
だから買い手とコミュニケーション取ってあげると、買い手が想像もしなかったようなやり方や可能性を出せるような議論をできることがあるんです。
買い手と売り手で戦うだけじゃなく、一緒に考えてあげることもあっていいと思います。
島袋
正に今、うちもやってますよね。
冨岡
そうですね、これが放送されるときには終わってるといいですね。(笑)
島袋
そうですね。
それでは今回はここまでです。
次回はIPOに関するご相談もいただいているので、そちらにお答えしていきます。
■島袋直樹:M&A BANK株式会社-取締役会長
シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡し、2018年3月よりM&A BANKの運営を開始。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。
■冨岡 大悟:M&A BANK株式会社-代表取締役/公認会計士
KPMG/あずさ監査法人のIPO部、フロンティア・マネジメント株式会社でのM&Aアドバイザー業務を経て、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後にTOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IdeaLink株式会社のCFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員も務める。
順次更新、島袋・冨岡の出演動画 一気見はこちらから
(M&A BANK YouTubeチャンネル)
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