日本の高度成長を支えた団塊の世代が引退期を迎えており、企業をM&Aで売却する事例が非常に増えています。
買い手にとっての事業拡大など、メリットが強調される傾向にありますが、もちろんデメリットも存在します。
今回は、買われた側から見たM&Aのメリット及びデメリットについて解説します。
M&Aの3つのメリット
1.社員・取引先はそのままで事業継続が可能
M&Aでは多くの場合、企業はそのまま買い手企業の傘下に入ることになります。その際の条件次第ではありますが、概ね社員の雇用や、取引先についても維持がなされることが多いです。
経営者としてどんなに頑張ったとしても、いつかは引退することになります。後継者がいない場合、廃業との判断を迫られるケースもあるでしょう。
廃業する場合には、従業員の雇用先の確保だけでなく、取引先についても配慮が欠かせないため、かなりの労力が必要になります。
M&Aによって会社を売却することができれば、社員や取引先に大きな迷惑をかけることなく、自らの引退と事業の継続を実現することができます。
2.金銭的な対価を得て会社の引き継ぎを行うことができる
M&Aがなされる際は、企業の株主には対価として資金が支払われます。経営者=株主の場合、M&Aにより金銭的な対価を得て会社の引き継ぎを行うことができます。
なお、親族などに会社を引き継ぐ場合、引き継ぐ側は個人としての資金力に限りがあることがほとんどです。そのため、何らかの事業承継を用いて株式の引き継ぎは行うとしても、金銭的には多くを望むことはできません。(親族などに会社を引き継ぐ時点で、金銭より事業承継優先のスタンスです。)
一方で、M&Aによる会社の売却であれば、創業者が比較的大きな資金を手にすることも可能です。お金が全てではありませんが、お金がなければ何も始まらないのも事実です。
企業経営者にとって、M&Aにより会社を売却することの金銭的なメリットは、正面から語られることはあまりありませんが、非常に大きいものであるといえます。
3.銀行融資のストレスから解放される
多くの企業は銀行からの借り入れを行った上で経営を行っています。銀行からの借り入れの維持が企業の資金繰りの生命線となっている場合もあるでしょう。
銀行融資の保証人となっていることがほとんどである経営者にとっては、銀行からの融資返済ができなければ自己破産することになってしまうため、銀行からの融資によってストレスやプレッシャーを感じがちです。
M&Aで会社を売却すると、銀行の融資や保証は買収先企業が引き継ぐため、こういった銀行融資のストレスやプレッシャーから解放されることになります。
常に精神的な緊張を強いられた銀行融資の存在から解放されるメリットも、経営者個人がM&Aで得られる大きなメリットの1つとなるでしょう。
M&Aのデメリット
1.希望価格で売却できるわけではない
M&Aは企業対企業で行われるため、買収価格についても交渉が必須になります。しかも、企業の買収価格は経営者の希望とは関係なく算出されるため、売却希望価格と買収希望価格に大きな開きが生じることは日常茶飯事です。
手塩にかけた分思い入れがあっても、M&Aは買収相手があって初めて成立するものです。無事に引き継ぐことが最も重要ならば、価格や条件である程度妥協することになるかもしれません。
2.経営に関与できなくなる
当たり前のことではありますが、M&A後に取締役などで企業に残る場合を除けば、企業経営者はM&A後に売却先の企業の経営に関与することはできません。(逆に、一定期間のコミットを求められる契約になることもあります)
立場だけでなく、生活も一変することになるでしょう。
それまで熱心に働いてきた人ほど売却後に呆然としてしまい、目標がないことに戸惑うそうですので、引退・売却を経験した人に事前によく話を聞いておくとよいでしょう。
まとめ
かつてはM&Aと言えば大企業のものが中心でしたが、昨今では多くの中堅・中小企業でもM&Aが行われるようになり、身近な出来事になりつつあります。
言わずもがな非常に大きな決断ですから、メリット・デメリットをよく把握した上で、今後どうすべきかじっくりご検討ください。
安田あかね:M&A BANK編集部 ライター
大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。
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