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2018.04.25

事業譲渡の場合、労働契約の承継ってどうなるの?分かりやすく解説します

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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事業譲渡の際、譲渡価格を上げるためには、事業価値を高める必要があります。
その評価対象となるのは「事業の資産価値」と「将来期待できる利益」ですが、将来の利益を生み出す資産のひとつとして大事なのが「労働者」です。
つまり、労働者をいかにスムーズに譲受会社に転籍させるかが、事業譲渡を成功させるひとつの鍵になるのです。

そこで今回は、事業譲渡における労働契約の承継についてわかりやすく説明します。

事業譲渡では労働契約の承継が重要

企業価値を高めるためには、その事業に従事する人材をいかにスムーズに譲受会社へと移転させるかがポイントとなります。
譲受会社と譲受会社で労働条件に差異があれば、擦り合わせを試みることになるでしょう。

もし擦り合わせが叶わず、M&A後に労働条件が変わることになってしまったら、労働者がそれを受け入れることができるかどうかが問題になります。その際に注意しなければならないのが、厚生労働省が策定した指針です。

厚生労働省策定の指針に注意

事業譲渡での労働契約の承継に関しては、長らく法律も厚生労働省策定の指針すら存在しませんでした。そのため、労働者保護をめぐって何か問題が生じた時は裁判で個別に対応していました。

その判例を参考にして、2016年9月1日にようやく厚生労働省策定の指針が公表され、適用されるようになりました。

これにより、労働者の権利を保護するための様々な条件が策定されたため、事業譲渡を行う際にはこの指針に従って労働契約を承継するよう留意しなければなりません。

労働契約の承継は、労働者が一度譲渡会社を退職し、譲受会社に再雇用される形で行われます。そこでのポイントは、労働条件などに関して労働者の同意を得ることです。

「労働者の合意」が重要

労働契約を譲受会社に承継するためには、譲渡会社と譲受会社間での合意に加えて、個々の労働者の合意を得ることが必要です。しかもこの場合、労働者の真意を反映させたものでなければいけません。

というのも、のちに労働者からの異議が生じた場合には、その同意は取り消されるからです。さらに同意が得られなければ、労働者は譲渡会社に残留することになります。事業譲渡を理由に労働者を解雇することはできないからです。

労働者が真意に基づく同意をするためには、以下の事項について十分に説明し協議することが必要と定められています。

1 事業譲渡に関する全体の状況(債務の履行の見込みに関する事項も含む)
2 承継予定労働者が勤務することになる譲受会社の概要及び労働条件

もし労働組合が代理で協議を希望するなら、それに応じなければなりません。あるいは労働者との協議を行っていても、団体交渉の申し入れがあれば応える必要があります。

また、真意ある合意が得られるよう、十分な時間を確保することも求められます。もし意図的に虚偽の情報を与えて合意を得たことが明らかになれば、合意は取り消され、譲渡会社との労働契約が継続することになります。

この「協議するための十分な時間を確保」がとても難しいため、注意が必要です。
というのは、事業譲渡契約の締結までは混乱を避けるため、一般の労働者に対して譲渡に関する公表は行われません。また、事業譲渡の効力発生日の20日前までには株主への通知、あるいは公告することが義務付けられています。
さらに、事業譲渡を公表してからは風評被害などによる事業価値の毀損を避けるため、極力最短日数で譲渡を執行することが必要です。

つまり、事業譲渡の実施を決定してから譲渡が執行されるまで、最短で20日の間に、全ての労働者と十分に協議を行う必要があるのです。

同意しない労働者の処遇について

協議をして転籍に同意しない労働者がいれば、そのまま譲渡会社との労働契約を継続します。譲渡会社は同意しないからといって解雇はできないので、別の事業所へ転属するなど労働者契約を持続するための努力をしなければなりません。

では譲渡会社そのものが消滅する場合(合併など)には、労働契約はどうなるのでしょうか。この場合にはやむをえず、整理解雇という形が取られます。整理解雇とは、会社の経営上必要とされる人員削減のための解雇です。

それが認められる条件は、解雇回避のための努力をしてもなお人員削減の必要があること、そして解雇される者の選定方法が適切であることです。
そのうえで、労働者に十分な説明をした場合に整理解雇が認められます。

キーパーソンの不同意を避けるために

譲受会社は譲渡される事業の価値に対して契約金を支払います。
そのため、収益につながるキーパーソンとなる労働者が転籍に同意しないという事態を避けなければなりません。

そのような心配を減らすため、譲渡契約書において、キーパーソンの転籍承諾書を取り付けるための努力義務を課されることがあります。
具体的には、必要とする労働者の転籍承諾書が得られなかった場合に、譲渡価格を減額する等の条件を組み込むことなどが考えられます。
そうなれば、譲渡会社は労働者の転籍について、退職の際に色々と考慮する必要が生じます。

また、労働者の転籍は譲受会社の再雇用という形になるため、勤続年数や積み立てた退職金がそのまま移管することはありません。
そこで残った有給休暇をどうするのか、退職金の支払いはどのように行うのかを譲渡会社が考えることになります。
有給休暇が残っている場合は買い取りなどで対応することになるでしょう。
転籍同意書を得るために、退職金の割り増しが必要となる場合もあります。

有利な条件で事業譲渡を行うためには、代わりにこのような配慮も必要になってくるのです。

労働契約承継における注意点

事業譲渡における労働者の処遇については様々な裁判事例があるので、ぜひ参考にしましょう。

たとえば、人員整理を前提とした労働契約の承継が認められなかったケースがあるほか、譲受会社への転籍により給与が下がることに同意する労働者は承継し、同意しない労働者は整理解雇とするやり方が認められなかった判例もあります。

基本的には労働者の保護を優先し、労働契約を承継できるように努力することが求められています。

おわりに

事業譲渡では労働者の転籍が大きなポイントになります。基本的には全ての労働者が転籍、あるいは別の事業所へ転属できるような努力が必要です。
譲渡価格を有利にするためにはいかに労働者の転籍同意書を得るかがポイントになりますから、話し合う時間を十分に確保できるかが重要です。

 

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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