2018.07.26
M&Aを経験して思うこと|Vol.059
1社目からIPOを急がなくてもいいのでは?
島袋
えー、パテック・フィリップの大久保社長に来ていただきました!
あっ違った!…大久保社長に来ていただいてます。(笑)
大久保社長は29歳でバイアウトされて、今2社目を起業されていますよね。
視聴者いただいている方の中には、今から起業しようか考えている方、既にベンチャーをやられている方がいらっしゃいます。
ご自身の経験を経て、みなさんへ一言いただければと思います。
大久保
そうですね、M&Aに関してはけっこう私も思うところがあります。
昔からそうなのかもしれないですが、ベンチャー業界はやっぱりIPO至上主義といいますか、IPOすることを大前提として起業しなければいけないというのが、教科書としてありますよね。
それは教科書としては正しいんですけど、実際に起業家側のプレーヤーとしての立場とすると、1回まずM&Aをして、それなりにゆとりを持ったうえで、2社目に挑戦していくっていうのは全く悪いことじゃないんです。むしろ私としてはそっちのほうがいいんじゃないかと思っているくらいですね。
島袋
メルカリの山田さんもそうですよね。
大久保
そうですね、1回売られてますよね。
それに、それこそ資本政策1つ取っても、1社目の時の反省点ってたくさんあるんです。
島袋
お、例えばどういったものでしょうか?
大久保
例えばですね、最初苦しかった時期があって、バリュエーションが低い状態で、資金調達をする経験をしたんです。もしかしたらですが、これも結果論ですけど、もう少し粘ってバリュエーションを高めても良かったのかもしれないですね。もう少し頑張れたんじゃないかと。それ(バリュエーションが低い状態での資金調達)によってどんどん株は希薄化していくので。
あともう1つは、ちょっと脱線しちゃいますが、資金調達する時のスキームとして、エクイティ/株のほうが絶対にいい、というのが起業家の方にとって前提になっていると思うんですけど、借金という形での資金調達は、今思うとアリでしたね。
それは必ずしも悪い選択肢ではなかったと思いますし、今やっている会社では、実際に最初の資金調達は株ではなくデットで調達しています。
やはり株の希薄化によって自分の発言権が減ってくわけですからね。それを犠牲にするのと、調達してお金を手に入れることのバランスは、もっとちゃんと考えたほうがいいと思いました。
まず1回経験して、自分で考える
大久保
…みたいなことは、やっぱり1回やると学べるんですよね。それを積み重ねていくと、ある程度ゆとりを持ってちゃんと伸ばす事業に取り組めると思います。
特に資本政策は取り返しがつかないので、それは2社目をやれていてよかったと思うことですね。
島袋
なるほど。そういう相談って、誰にすればいいんでしょう?
大久保
よくVCの人や同じ起業家の人に相談するんですけど、みんなポジショントークしか言わないので――なんなら私だってポジショントークかもしれないですし――まあ、自分で考えるしかないと思います。
島袋
(笑)自分で考える。自分で経験しろと。そのために1回売却しろってことですね
大久保
そうですね。とにかく1回やったほうがいいと思うんですよね。
島袋
はいはいはいはい…すごく勉強になりました。
今取り組んでいるのは、インスタ!
島袋
今はライスカレー製作所という会社で、インフルエンサーマーケティングをやられてますよね。もしよかったらそちらについても少し聞かせてください。
大久保
せっかくなので少しお話しさせていただきますと、カレー屋みたいな名前なんですが、やっていることはインスタグラムを中心とした、インフルエンサーのマーケティングやアカウントの運用支援ですね。
あと最近は「MARKED BY…」という子会社を作りまして、インフルエンサーの人が今まで広告でマネタイズしていたところを、自分でアパレルのブランドとかコスメのブランドを立ち上げられるよう支援する事業をやってまして、今すごく伸びてますね。
なので、最近はうちのオフィスに服が置いてあったりします。
ITのインフルエンサーという存在と、アパレルみたいなレトロな物販を組み合わせてマーケットを作っていくことに取り組んでいます。
島袋
今の2社目はIPOを目指されるんでしょうか?
大久保
そうですね。基本的にはIPOを目指すスタンスでやっています。でも、それも1回M&Aをやったからだと思います。
状況がものすごく変わったので、「M&Aは絶対ありえない」という固定観念にとらわれる必要はないと思います。まずはIPOを目指して取り組んでますね。
島袋
なるほど、わかりました。
またサミットを開催するので、よかったらまたそちらにもご登壇いただければと思います。
今回は長い時間、本当にありがとうございました!
■大久保 遼:株式会社ライスカレー製作所-代表取締役
東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門に入社。広告、通信・メディア、テクノロジー関連のM&A、ファイナンシングのアドバイザリー業務に従事。2014年オンライン広告テクノロジー企業であるMomentum株式会社を創業(Syn.ホールディングス株式会社に完全売却)。2016年、株式会社ライスカレー製作所の新代表取締役に就任。
■島袋直樹:Idealink株式会社-代表取締役
2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。尊敬するじげん社に倣い、「事業家集団Idealink」を目指す。
【株式会社MomentumのM&A概要】
2017年7月、KDDIグループでインターネットサービス事業を行うSyn.ホールディングスに株式を売却、連結子会社となる。インタ―ネット広告におけるアドフラウド(不正広告)の検出・排除やブランド保護の技術を評価された。
【YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCbxAeKe2f9WZGbKy1jHV0Dw
-
【厳選】売り手支援のプロがM&Aで絶対外せない10のポイントを解説!|Vol.810、823
2023.03.27
【厳選】売り手支援のプロがM&Aで絶対外せない10のポイントを解説!|Vol.810、823
-
LBOを使ったMBOで2段階EXIT!?【スタートアップスクエア・恵島良太郎代表】|Vol.813-814
2023.03.03
LBOを使ったMBOで2段階EXIT!?【スタートアップスクエア・恵島良太郎代表】|Vol.813-814
-
最近の関心事をフリーランスの王に相談【StockSun・株本祐己取締役】|Vol.808-809
2023.02.25
最近の関心事をフリーランスの王に相談【StockSun・株本祐己取締役】|Vol.808-809
-
TOBで上場企業をファンドに売却【ネットマーケティング創業者・宮本邦久氏】|Vol.799-800
2023.02.11
TOBで上場企業をファンドに売却【ネットマーケティング創業者・宮本邦久氏】|Vol.799-800
-
両者の男気と粘りで成立したM&A【メディアリンク・松本淳志代表】|Vol.792-793
2023.01.25
両者の男気と粘りで成立したM&A【メディアリンク・松本淳志代表】|Vol.792-793
-
年間利益の10倍以上で評価されるには【ブルームキャピタル・宮崎社長】|Vol.790-791
2023.01.21
年間利益の10倍以上で評価されるには【ブルームキャピタル・宮崎社長】|Vol.790-791
新着M&Aニュース
-
M&Aニュース
売却後が絶好の買収タイミングになる条件 |ニュース解説プレミアム Vol.29
2021.10.26
-
M&Aニュース
デコルテHDがIPOを実現させた二つのM&A|ニュース解説プレミアム Vol.28
2021.09.28
-
M&Aニュース
非上場会社が株式を使ったインセンティブ設計をする方法|ニュース解説プレミアム Vol.27
2021.08.26
-
M&Aニュース
著名人のビジネスを買収する理由|ニュース解説プレミアム Vol.26
2021.07.28
-
M&Aニュース
freeeによる合同会社のM&A|ニュース解説プレミアム Vol.25
2021.06.23
アクセスランキング
-
売却後が絶好の買収タイミングになる条件 |ニュース解説プレミアム Vol.29
2021.10.26
-
freeeによる合同会社のM&A|ニュース解説プレミアム Vol.25
2021.06.23
-
上場会社を操り人形にする方法|ニュース解説プレミアム Vol.16
2020.09.30
-
2021年大量発生中のM&Aトラブル |ニュース解説プレミアム Vol.20
2021.01.22
-
SOMPOによるABEJA関連会社化、実は今後大流行のM&A手法|ニュース解説プレミアム Vol.23
2021.04.26
案件情報をお探しの方 担当からすぐに連絡いたします。
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.