2019.05.11
売却の2つのパターン|Vol.168
エージェントを使わなかった正直な理由
島袋
その後いろんな会社さんにアプローチされたと思うんですが、それはエージェントを通されたんですか?
小原
実はですね、エージェントを全く通していないんですよ。
島袋
ご自分で直接。
小原
そうなんですよ。
M&ABANKさんのビジネスにどう影響があるかわからないですが、率直なところをお話ししますね。
エージェントを使うべきパターン
小原
まず、バイアウトにはパターンが2つあると思っています。
1つは、しっかりと売上利益があって、EBITDAから妥当そうな金額を考えられるようなパターンです。
たとえばラーメンチェーン店とか。リアルなビジネスが中心かもしれませんけど、売上利益がきっちり立っていて仕組みが出来ている、これから先も売上利益が見えているので、年商3倍~7倍ぐらいのところで…となるような。
島袋
3倍とか7倍とかありますね。
小原
そういう形で買い手を見つけていく場合は、明確にM&Aをコーディネートする人がいた方がいいと思います。
と言うのは、(売却して)KDDIグループに入った後に僕も買う側の立場になったんですが、買う側の立場からすると当然リスクヘッジの話が出てくるんですね。
そうすると、タレントバイで会社を買ってもその人が辞めちゃう可能性は高いので、見られるのはユーザーの数、もっと言えば利益だったりするわけです。
利益が確定しているものであれば厳しいデューデリをしなくても誰でも買うことができる。お金が余っている会社さんであれば、誰しもが買いたいと思うはずです。
だとすると、自分のネットワーク以外の人が高値をつけてくれる可能性が高いので…
島袋
自分のネットワーク以外の。
小原
起業家以外のネットワークですね。
僕は、結局M&Aは壺とか絵画の売買と一緒だと思っています。金額に一応目線(ある程度の相場)はありますけど、オークションだと思っているんですね。
ある会社が買いたいと言ったら他の会社も買いたいと言ってきて、そうするとさらに高い金額で買わないといけなくなって、売却額が高くなってくると思っていまして。
その場合は間違いなくM&Aのコーディネートがいた方がいい。手数料を払ってもいい。
これが非常にわかりやすいものですね。買い手が多い場合はコーディネーターをつけてオークションにしたほうがいいと思います。
自分でできるパターン
小原
一方で、成長産業の場合はまだ実態がない、利益がないことの方が多いわけです。僕の会社も売上は5億立っていましたが、利益だとたしか2000万くらいしかなかった。
そうなる理由は、「まだこの角度で成長できるな」と思ったらそこで利益を貯めることはせず、人を採用するとか、もっと設備投資をする方に振り向けていくので、BS的には悪くなるんですよね。
BSが悪いと、M&Aをコーディネートする方も売りようがなくなると思います。
この場合は基本的に、自分たちの会社を評価してくれる会社はこれからその業界で新規事業をやりたい上場企業か、同じ業界の競合、競合で上場している会社といったところになります。
売り先が限定されていて、だいたい起業家がリーチできちゃうんです。
それに、「売ろうと思っている」という情報が漏洩するリスクもありますから…
島袋
他のアドバイサーさんに依頼すると(競合にも売り情報が回るリスクがある)、ということですね。
小原
はい。実際にはないかもしれませんが、そう思ってしまうところがあります。
それなら直接交渉しにいくのがリーズナブルだということになります。
島袋
要は、Jカーブを描いてある程度成長してきたと思っているときは、利益を増やすよりも投資にあてた方が大きな成長に繋がる状態なので、そこをいかにどう評価してもらうか、ですね。
小原
おっしゃる通りです。
島袋
なるほどね~
起業家からすると、将来の成長率が見える場合は、今の利益が低くても、EBITDAとは違う尺度で評価してもらえる可能性があると。実体験としてもあるということですよね。
いや~、勉強になるな。凡人じゃないですよ。(笑)
次回は大企業との連携についてまたお聞きしていきたいと思います。
ではまた、M&A BANKでお会いしましょう!
■小原 聖誉:株式会社StartPoint-創業者・代表取締役社長
2013年AppBroadCastを創業。創業3年でmediba(KDDIグループ)へバイアウト。medibaにて新規事業役員CBDOを務めたのち、退職。現在はエンジェル投資家として活動。21社に出資し、そのうちの1社アクリートはIPOを果たしている。
【株式会社AppBroadCastのM&A概要】
2016年4月、KDDI子会社で広告事業を中心に展開するmedibaへ株式を売却、連結子会社化。株式の取得数や割合については非公開。関係者によるとバリュエーション(評価額)は十数億円になると言われた。KDDIとは2014年の資金調達、業務提携などすでにかかわりを持っていた。
■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役
シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。
【YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCbxAeKe2f9WZGbKy1jHV0Dw
-
【厳選】売り手支援のプロがM&Aで絶対外せない10のポイントを解説!|Vol.810、823
2023.03.27
【厳選】売り手支援のプロがM&Aで絶対外せない10のポイントを解説!|Vol.810、823
-
LBOを使ったMBOで2段階EXIT!?【スタートアップスクエア・恵島良太郎代表】|Vol.813-814
2023.03.03
LBOを使ったMBOで2段階EXIT!?【スタートアップスクエア・恵島良太郎代表】|Vol.813-814
-
最近の関心事をフリーランスの王に相談【StockSun・株本祐己取締役】|Vol.808-809
2023.02.25
最近の関心事をフリーランスの王に相談【StockSun・株本祐己取締役】|Vol.808-809
-
TOBで上場企業をファンドに売却【ネットマーケティング創業者・宮本邦久氏】|Vol.799-800
2023.02.11
TOBで上場企業をファンドに売却【ネットマーケティング創業者・宮本邦久氏】|Vol.799-800
-
両者の男気と粘りで成立したM&A【メディアリンク・松本淳志代表】|Vol.792-793
2023.01.25
両者の男気と粘りで成立したM&A【メディアリンク・松本淳志代表】|Vol.792-793
-
年間利益の10倍以上で評価されるには【ブルームキャピタル・宮崎社長】|Vol.790-791
2023.01.21
年間利益の10倍以上で評価されるには【ブルームキャピタル・宮崎社長】|Vol.790-791
新着M&Aニュース
-
M&Aニュース
売却後が絶好の買収タイミングになる条件 |ニュース解説プレミアム Vol.29
2021.10.26
-
M&Aニュース
デコルテHDがIPOを実現させた二つのM&A|ニュース解説プレミアム Vol.28
2021.09.28
-
M&Aニュース
非上場会社が株式を使ったインセンティブ設計をする方法|ニュース解説プレミアム Vol.27
2021.08.26
-
M&Aニュース
著名人のビジネスを買収する理由|ニュース解説プレミアム Vol.26
2021.07.28
-
M&Aニュース
freeeによる合同会社のM&A|ニュース解説プレミアム Vol.25
2021.06.23
アクセスランキング
-
売却後が絶好の買収タイミングになる条件 |ニュース解説プレミアム Vol.29
2021.10.26
-
freeeによる合同会社のM&A|ニュース解説プレミアム Vol.25
2021.06.23
-
上場会社を操り人形にする方法|ニュース解説プレミアム Vol.16
2020.09.30
-
2021年大量発生中のM&Aトラブル |ニュース解説プレミアム Vol.20
2021.01.22
-
SOMPOによるABEJA関連会社化、実は今後大流行のM&A手法|ニュース解説プレミアム Vol.23
2021.04.26
案件情報をお探しの方 担当からすぐに連絡いたします。
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.