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買取価格が高すぎ/買った会社が破綻したら、取締役の責任が問われるか|判例紹介 Vol.05 | M&A BANK

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2019.05.29

買取価格が高すぎ/買った会社が破綻したら、取締役の責任が問われるか|判例紹介 Vol.05

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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 判例によれば… 
基本的にその心配は必要なさそう

〇 善管注意義務違反が認められたケースは少ない
▲ 調査・分析が不十分、不注意な誤りがあると×

 

ポイント|

  • 「経営判断の原則」に照らして、取締役の善管注意義務違反か否かを判断される
    …判断の前提となった事実の認識に重要で不注意な誤りがないか
    …意思決定の過程・内容が企業経営者として特に不合理、不適切になっていないか 

判例紹介|アパマンショップホールディングス事件(平成22年頃)

概要

  • アパマンショップホールディングスが、取引先からも出資を受けて設立した子会社を完全子会社とする際、株式交換に先立って一部の株主から時価(約1万円)を超える価格(5万円)で任意に買い取った
     →買い付け価格が合理的でない、善管注意義務違反では?

判決

  • 買取価格も一般的に見て相応の合理性がないわけではない
  • そもそも非上場株式の評価額には相当な幅がある
  • 買取を円満に進めて、他の株主である取引先との友好関係を維持することが今後の事業遂行に有益に働く
  • 決定の過程が経営会議で検討され、弁護士の意見も聴取されていた

原審は善管注意義務違反を認めたが、
 最高裁判所は「何ら不合理な点は見当たらない」として否定

理由

株式取得の方法や価格は買付価格だけでなく、公開買い付けへの応募を要請した企業との円滑な取引関係の維持発展の要否売却の実現可能性など複雑多様な諸要素を総合考慮して決定されるため。

参考文献
阿南剛・後藤高志・辻川昌徳(2015)『実務分析 M&A判例ハンドブック』商事法務

 

上場企業の場合も同じ判決が多いようですが…

今回は「株式の売買価格が不適切だった」「その判断をした取締役は善管注意義務に違反するのでは」という事が争われた判例で、特に非上場企業のケースを取り上げました。
もちろん上場企業のケースも存在しますが、そちらでも上記と同様に「不合理ではない」との結果になっています。

  • 東電がフジテレビへニッポン放送の株式を市場価格よりも安い金額で売却(公開買い付け)
  • 国際興業が帝国ホテルの株式を1万円/株で買い取ると申し出ていた森トラストではなく、三井不動産へ8,750円/株で売却

この判例を見たとき、同じく上場企業の株の売買について取り上げたあるニュースを思い出しました。(「#24 さが美の買収にみる錬金術としてのM&A」)
こちらは「上場企業(さが美:当時はユニーの子会社)の株が安値で売却されたことで、株主が損をした(得をしたのは誰か?)」という話でした。
もしこの上場企業(現ユニー・ファミマHD)の株主がその取引について訴えを起こしても、今回の内容と同様に善管注意義務違反にならないのでしょうか。それはそれでモヤっとします。

 

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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