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2019.08.21

少数株主から強制的に株を取得したいが、いくらかかるのか|判例紹介 Vol.15

安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

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少数株主からの株式強制取得(スクイーズ・アウト/キャッシュ・アウト)
MBOや完全子会社化をするために多数の株主に分散している株式を取得したい場合、まずは公開買い付け(TOB)など任意の買取りを行うが、それでは必要な数を集められない場合に採る方法。
単独または完全子会社と合わせて議決権の90%以上を持っている場合は、対象会社の承認があれば、他の株主全員から売り渡しを請求できる。(特別支配株主の株式等売渡請求制度)
他にも株式併合、全部取得条項付き種類株式といったスキームもあるが、いずれも株主総会の決議が必要になるなど、手続きが煩雑になる。

 判例によれば… 
「公正な価格」の範囲内に収まるように

▲ 最低でも1株当たりの純資産額以上にしないと危ない
〇 議決権が2/3以上あれば、強制取得はできる

 

ポイント|取引後に期待される価値の増加も含めた額で買い取らないといけない

  • 公正な価格=「そのままなら株主が享受するはずだった価値」
    …以下のふたつを合算して算定すべきとされている
    ①取引(MBOや完全子会社化)が行われなければ株主が享受しえた価値
    取引によって増大が期待される価値のうち、株主が享受してしかるべき部分
    ※単なる株主の交代など、取引によって価値の増大が期待できない場合は①のみ
  • ①の算定は、上場株式の場合、市場価値が基礎になる
    …原則は公開買い付け公表前1か月間の市場株価の終値による出来高加重平均値で算定
    …ただし、投資家に開示されていない情報や債務超過がある場合は、第三者算定期間による株式価値算定を基にする
  • ②の算定は公開買い付け価格をもとに行われる
    …公開買い付け価格が以下の点から②の観点が含まれていると判断された場合は、その額が取得価格になることが多い
    ・第三者によって算定されている(DCF法など)
    ・株主の多数がその値段で買い付けに応募している

判例株価の大幅な下落があった場合(レックス・ホールディングス事件、平成20年頃)

概要

  • 公開買い付けの公表の約3か月前に、業績予想の下方修正に関するプレスリリースが行われた
  • その結果、市場株価が過剰に下落、これに乗じた投機的取引が反復された
  • MBOを控えた経営者が、株価をできる限り安値に誘導しようとしたように見えるにもかかわらず、株価操作の疑いを払拭する情報を開示しなかった

判決

  • 客観的価値の算定
    …プレスリリース時期を含む、公開買い付け公表前6か月間の市場株価に基づいて行うことに
  • 取締役の適正情報開示義務違反を認めた
    …ただし、損害の立証がないとして、最終的に株主の請求は棄却

理由

経営者が自己の利益のためにあえてプレス・リリースを公表したとも捉えられるが、プレス・リリースの内容自体は企業会計上の裁量の範囲内で適法な会計処理に基づいている。
発表後、その影響を受けた市場株価を一切考慮しないのは不適切であるとしたため。

参考文献
阿南剛・後藤高志・辻川昌徳(2015)『実務分析 M&A判例ハンドブック』商事法務

 

会社法改正でやりやすくなった「追い出し」

以前、株主のパワーバランスを変える手段としての第三者割当増資もご紹介しました。
こちらは他の株主の持ち株比率を増やすことで相対的に他の株主の力を弱めるスキームです。

スクイーズ・アウト/キャッシュ・アウトは強制的な買取りになるため、株主総会での決議を必要とするなどよりハードルが高く、実現が難しいものでしたが、平成26年の会社法改正により状況が変わりました。
本記事の冒頭でご紹介した通り、条件さえ満たせば他の株主の承認を必要としないスキームも使用できます。

株主構成でお悩みの方は、ぜひこのあたりの情報もチェックしてみてください。

 

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安田あかね:M&A BANK編集部 ライター

大阪大学人間科学部を卒業後、教育系企業に就職。新規事業部にて新サービスの運営基盤づくり、スタッフの管理育成やイベント企画に携わる。
IdeaLink社ではウェブマーケティング領域の業務を経て、M&A BANKの立ち上げ・運営に関わる。サイト管理の他、経営者インタビューや記事の編集を担当。

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