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2018.12.20

#56 ベクトル子会社となったあしたのチームが上場を目指せる理由

冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

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子会社化を挟んで、より飛躍する上場を
……(高橋氏)ベクトルさんぐらいの時価総額1000億企業や、超大手(大手商社・大手流通会社など)では、子会社は非主力事業であるということが重要だったりします。主力事業として買収したものを上場するということになると、ディビジョンをわけて、それでまた資金調達しているのではないか、と疑われます。なので、東京証券取引所としても、上場している会社と同じ事業をやっている子会社を上場させるというのはあまり望ましくないんです。
そういう意味では、ベクトルさんの主力事業は当然ながらPR事業ですが、これから(ノンコア事業として)HRの領域を広げていこうとしています。……
記事引用元:https://ma-bank.jp/interview/112/

子会社上場の話、わかりましたか?

ついに自分たちの記事を取り上げるようになりましたね笑
先日行われたあしたのチーム社の高橋社長のインタビュー中に出てきた言葉で、これは詳しく説明した方がいいなと思ったので今日はその辺を。

M&A BANKではM&AとIPOの2回EXITを行うdual exitをベンチャー企業にとって有効な選択肢として提唱していますが(そんな言葉はないので勝手にそう言っている)、これにも関連します。

あしたのチームのベクトルグループ入り

2018年7月にベクトル社はあしたのチーム株式の54%を32億円で取得しました。そしてベクトルの子会社となった後も、あしたのチームは引き続きIPOを目指すと高橋社長はおっしゃっています。

同時に「子会社は非主力事業であるということが重要」という点に言及されていました。
これがどういう意味かわかるでしょうか。この意味を理解するためには、親子上場を理解する必要があります。

「親子上場」とは

親子上場とは、文字通り親会社と子会社株式がそれぞれ証券取引所に上場している状態をいいます。
昨日はソフトバンクグループの携帯電話事業運営子会社ソフトバンクが上場し、親子上場となりましたね。

親子上場のデメリット

メリットデメリット色々あるのですが、最大のデメリットとして言われているのが子会社の少数株主利益の確保です。
ざっくりいうと、親会社(子会社にとっては筆頭株主)の利益のためだけに子会社が利用され、子会社の少数株主の権利や利益が不当に損なわれる可能性があることが問題とされています。
例えば、親会社の都合の良い取引先と取引を強要される、事業投資したいのに資金を親会社に吸い上げられる、など。
親会社は子会社の株式の過半数を持っているわけなので、こういうことが可能となるわけです。

なので取引所としては親子上場を禁止してはいないものの、実現するためには厳格な審査を課しているわけです。
子会社の独立性の確保や内部監査体制を独自に構築していることなどを重視し、同一のシステムを利用しない、取引を親会社に依存しない、ことなどが求められます。

そして親会社の中核事業と同じ事業を営む子会社を上場させようとする場合、その合理性が特に問われます。同じ事業なら親会社でやればいいじゃないですか、と。
これが高橋社長が言っていたことの背景です。あしたのチームは親会社のベクトルとは違う事業をやってるし、独立性を保っているので問題ありませんよ、ということです。

誤解しないように

では一定のルールさえ守れば親子上場も簡単にできるかといえば、それは全くの誤解です。
親子上場は禁止していないものの、取引所も機関投資家や海外投資家の多くはこれに反対しており、厳しい目で見られます。
ソフトバンクも親子上場してるし自分たちも簡単にできるだろうというのは大間違いです。

ソフトバンクほどの規模であれば、取引所や証券会社は大型上場案件を海外などに逃したくないのでなかなかNOとは言えないでしょう。
ですが一般のベンチャー企業であれば、現在の経済環境においては同じように上場したい会社などいくらでもあるわけで、厳格に審査を受けることになり、これを突破するのは至難の技です。
しかもこの傾向は、私が監査法人のIPO部にいた8年前よりも今の方が強まっているように感じますし、今後もこの流れは変わらないでしょう。
実際、2006年には400以上あった親子上場数も、今では約250に激減しています。

ということで、親子上場はいまだに有効な戦略ではあるものの、かなり慎重に準備した方がいいですよ、というお話でした。

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冨岡 大悟: M&A BANK株式会社 代表取締役/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。IPO関連業務、M&AのDD、会計監査等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。同時に、IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。

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