2018.07.03
秋山流「買い」の極意|Vol.049
秋山社長の「買い」の極意
島袋
今回もベーシックの秋山社長に来ていただいてます。
ベーシックさんは買う方も売る方も、たくさんM&Aをされています。
それで、秋山さん流のM&Aの極意というのを教えていただきたいなと思うんですが、まずは「買い手目線」の方から教えていただけますか?
秋山
買い手目線で言うと、極意というか、純粋に「ラブコールをどれだけ言えるか」じゃないかなと僕は思っています。
直近でいうと「formrun(フォームラン)」というビジネスを買わせていただいてます。
聞くところによると、金額的な条件では僕ら(ベーシック社)が1番よくなかったらしいんですが、僕らに売りたいって形で決まったんですね。
そのときは、――秘訣と言ったらちょっとおこがましいんですけど――「そのビジネスをどうしたいか」を単純に伝えただけなんですよ。「手に入れたい」「この金額で買いたい」っていうのだけじゃなくて、それを使って、僕らは何をしようとしてるのか。
そうすることによって、嫁ぎ先として僕らが1つ候補になっていてプロポーズをしたとき、「フォームラン」というサービスが幸せになるかどうかをイメージさせられたんじゃないかなと思います。
島袋
なるほど!
秋山
だから、ディール(取引)でA社がいくら、B社がいくらで同じ金額だったら、想いの強いほうが当然勝ちますね、と。
ただ、僕、起業家や事業を売る人って2パターンいるなと思っています。ひとつは当然のことながら「経済的な部分をしっかり担保した形で売りたい」という人、あともうひとつは、純粋に「この事業にとって何が1番いいのかな」と考えている人。
今回のフォームランのチームは後者だったと思うんですね。僕らとしても、そういう人から買いたい。
どんどんお金を積み増して何としても手に入れようとするのではなく、自分たちができる範囲の最大限を提示させていただく。その代わり、じゃあそれを使ってどうするかということを提示する。そこで彼らが想像している以上のものを提示できたんじゃないかなと思うんです。「そういう展開か、なるほどね!」と。
なので、そこじゃないかなと。どれだけ熱烈なラブコールが本気でできるかなってことじゃないですかね。
島袋
なるほど。ラブコールを送って、嫁いだ後も、「愛してるよ」って言い続けられるよってことですよね
秋山
そうですそうです!
島袋
秋山さん絶対モテますよね?!(笑)
秋山
そうですか?モテたいですけどね。(笑)
島袋
(笑)ちなみに、ラブコールは数をたくさん送った方がいいんですか?それとも質でしょうか?
秋山
僕は質ですね。
僕らの事業戦略上、ピンポイントでそのサービスが必要なのかどうかが1番大きなポイントなんです。だからそんなに(たくさん欲しいサービス・会社が)いるわけじゃないですし、だいたいは自分たちで作るほうが多いですね。
売り手は即決。競合との後日談も
島袋
僕が印象的だったのが、フォームランの堀辺さんが、本当に(秋山さんが)言われた通り、「バリュエーションをつけたところはたくさんあったけど、このサービスにとってベストなのはベーシックさんだ」と言われてました。「ここに絶対譲るべきだ」とすぐ思ったって。
秋山
そう、すぐ決めてくれました。僕も逆にびっくりしちゃいましたもん。あれ?!って。
彼らの場合、意思決定者が堀部さんの他に2人いたので、3人で決めるって話だったんですよ。
でも一通り話し終わった時、堀部さんが「相談は当然しなきゃいけない。けど、聞く限り、絶対にベーシックさんがいい」って言ってくれたんです。
それはそれで嬉しいんですけど、でもそんな簡単に決まるかなって正直思いましたよ。(笑)そういう意味では、相性の良さもあったのかなと思いますけど。
これは余談なんですけど、実はコンペティター(競合)とは、後日両社とも会ってるんですよ。ぜんぜん別の機会で。
島袋
えー!面白い!…ちなみにどちらの企業ですか?(小声)
秋山
言っていいのかな?買ってないからいいのかな?(笑)
×××××さんと、もう1社です。
両社から「秋山さん知ってます?僕ら手を上げてたんですよ。御社に持っていかれちゃったから……」って言われて、「えええ!!?」って(びっくりしました)。
××××さんに関しては本当に別件でお伺いしてたので、そのぐらいの話で終わりました。
もう1社とも最近お会いして、話したら「結論、御社のほうがよかったと僕らも実は思ってます」とおっしゃってましたね。それはそれで嬉しいです。
島袋
ご覧になっている方がもしWEB系の事業やサービスの売却を検討されているとしたら、上場企業だったりファンドだったり、M&Aブティック(※M&Aアドバイザリーを専門的に手がけるプロフェッショナルファーム)を使ってアプローチするのももちろんいいと思います。
でも僕は、ベーシックさんに一度お話を持ち掛けるのも非常にアリだと思いますよ。
今秋山さんがおっしゃったように、サービスを譲渡した後、どういうふうにスケールするかってとこまで考えられていたら、それは受け入れOKですよね?
秋山
もちろんです!
島袋
とのことです!
では次回は「売りの極意」についてお伺いしたいと思います。
■秋山勝:株式会社ベーシック-代表取締役
グッドウィル・グループ事業開発室長を経て、トランス・コスモスでWebマーケティング関連の新規事業などを手がける。2004年にベーシックを創業。「Webマーケティングで世の中の問題を解決する」をミッションに、Webマーケティング事業やメディア事業を展開。設立以降、50を超えるサービスを生み出し、10件以上のM&Aの実績を持つ。
■島袋直樹:Idealink株式会社-代表取締役
2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。尊敬するじげん社に倣い、「事業家集団Idealink」を目指す。
【株式会社ベーシックのM&A概要】
”Webマーケティングの大衆化”を目指し、オールインワンマーケティングツール「ferret One」の機能拡充(開発)や事業提携・積極的なM&Aに取り組み、これまでに10件以上のM&Aの経験をもつ。
【YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCbxAeKe2f9WZGbKy1jHV0Dw
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