2019.02.14
悪い意味でバブってる、M&A手数料解説|Vol.136
悪い意味でバブってる「M&Aの報酬・手数料」、確認しましょう
島袋
今日はM&Aの報酬手数料についてお話ししていきたいと思います。
これは、会社さんによってまちまちですよね。
冨岡
そうですね、全然違います。
島袋
ブラックボックスになっているし、不動産と違って制限もないしで、カオスじゃないですか?
冨岡
そうですね、カオスですし、若干悪い意味でバブってます。
報酬の種類①「本気度を示す」着手金
島袋
一般的に金額はどのくらいが相場なんでしょうか。あと、そもそもどういうところでフィーが発生するんですか?
冨岡
費用はだいたい3種類で、まず最初に発生しうるのは「着手金」、ランニングコストとしてかかるタイプの「月額報酬」、そして「成功報酬」ですね。
成功報酬の中でも、段階に分かれてフィーが発生するケースもあります。
島袋
着手金って全然イメージがつかないんですが、どのくらいが相場なんですか?
冨岡
ほとんどの会社では0です。
成功報酬の方が額が大きいですし、そもそも契約してほしいので、着手金は不要にする会社がほとんどです。
着手金をとるところは、安いところは10万円から、高いところは100万円とか200万円くらいですね。
島袋
それはちょっと重いな。
冨岡
ですよね。
とる意味合いとしては、収益を上げるためというのももちろんありますし、「その人たちの本気度を見るため」とも言われます。
島袋
過去に、そう言われて払ったことがありますね。「しるし」と言われました。(笑)
冨岡
10万円でも払うなら、「この人は本気でM&Aを検討しているんだろうな」と考えられるということですね。
島袋
それ、識学の安藤さんに怒られますよ。
「仕事に本気もクソもない」「すべて本気だろう」と。(笑)
冨岡
そうですね。(笑)
なので、やっぱり言ってしまえば、着手金というのは仲介会社の都合ですよね。
そういうわけで、ほとんどの会社で着手金は発生しないわけですし、もし「着手金をください」と言われたら、一旦立ち止まって考えるのもありかと思います。
報酬の種類②「契約内容要チェック」の月額報酬
冨岡
次は月額報酬・リテイナー(定額顧問料)の話ですが、これが本当に厄介なんですよね。
本当に正当な対価だったらもちろんいいんですけど、適当にチョロまかしている会社がけっこうあったりするので。
いい方の例としては、大手のM&Aファームさんとかだと「M&Aの戦略を考えて、しっかりとしたスケジュールを組んで、プロジェクトを管理するので、月額のフィーをください」というわけですよね。
お金を払っている側としても、それだけ働いてもらっていれば納得感があります。
ただ一方で、M&Aを細かいところまで知らない経営者が多いことにつけ込んで、契約書にしれっと「M&Aのことを考えたら」「M&Aの資料を作ったら」「M&Aのアポを(勝手に)設定したら」いくらチャージします、という風に書かれているケースがあるんです。
最近ご相談いただいたケースで本当にあった例なんですが、ある会計事務所が実質何もしていないにもかかわらず、「契約書に書いてありますから」「従業員もこれだけアポに行かせましたから」と言ってとんでもない金額を請求するケースがあったんです。
そうやって揉めることも実際にあるので、注意していただきたいですね。
報酬の種類③「分割は慎重に」の成功報酬
冨岡
次に成功報酬ですが、たとえば全体で(成功報酬が)1000万になるような案件で、基本合意の段階で100万だけ、または200万だけくださいというようなケースもけっこうあります。
島袋
でも、基本合意ってまだまだどうなるか全然わからないじゃないですか。
僕たちも実際に基本合意はしたけどポシャったことありましたよね。
冨岡
僕は、M&Aはどこまで行っても50%だと思っています。
本当に最後の最後までいっていたのにポシャりましたもんね。
島袋
名言ですねー。たしかにわからない。
冨岡
徐々に(成約する)確率が上がるとはいえ、「最後の方まできたら99%確実」なわけではないじゃないですか。
島袋
そうですね。
冨岡
やっぱりM&Aは「どこまでいっても50%だな」ぐらいの気持ちでいた方がいいと思っているので、基本合意でけっこうとる会社さんやアドバイザーさんの場合も、一回検討してもいいかもしれないですね。
「レーマン方式」を知っていても、油断は禁物
島袋
M&Aの手数料で「レーマン方式」というのをよく聞きますが、知らない方のために説明をお願いします。
冨岡
そうですね。ググってくださいというのがまず1つなんですけど(笑)
ググった結果ざっくり理解はしたものの、肝心なところをちょっと抜かして覚えている方がけっこういるんですよね。
レーマン方式というのは、ざっくりいうと5億円以下の分には5%、5億円以上10億円以下の部分には4%という風に、金額のレンジによって決まった料率がかかる決め方です。金額によって、5%、4%、3%、2%、1%と下がっていきます。
ただ、そこだけが一人歩きしているところがあるんですよね。
大事なのは、「その料率を何にかけるか」じゃないですか。
島袋
そうですね。
冨岡
5%を1億円にかけるのと5億円にかけるのでは全然違います。
島袋
売却金額にかけるんじゃないんですか?
冨岡
…と思うじゃないですか。普通はそうなんです。ほとんどのファームは売却金額・株式譲渡金額とかそういう金額にかけるのを基本としています。
ただ、ファームよっては株式譲渡金額や株式の時価、負債金額といった、要は総資産の〇%、という風に計算する場合があって、そこを見落としている方がよくいらっしゃいます。
仮に売却金額が10億円で評価されて、総資産が15億円だった場合、その部分にも料率がかかって、手数料が増えることがあるんです。
島袋
きっついな~
「アドバイザーに内緒で、やっぱり自力でやろう」はアリ?
島袋
手数料を払うタイミングっていつなんでしょうか。
冨岡
契約しだいですね。
M&A成立した日から何日以内とか、基本合意した日から何日以内というパターンもあれば、着手金の場合は「お金を払ってくれないと動けません」というエージェントもいるので。
島袋
アドバイザーと契約してしばらく進めていくなかで、「やっぱりアドバイザー手数料が高いからいらない。もう自分たちでやっちゃおう」と考える経営者って出てきそうですが、もしアドバイザーに内緒でこそっと売却した場合はどうなるんでしょうか?
冨岡
そういうときのために、最初に結んだ契約書に「その案件が成立した場合は手数料をいただきます」と書いてあることがあるんです。
その場合、知られたらお金を払ってくださいと言われます。相談をしていないと言っても「契約がありますから」と返されますよ。
たしかにそれで揉めている会社さんはありますね。
島袋
そうなんですね…
一般的に仲介の会社さんは、売り手と買い手どちらから多く手数料を取るんでしょうか。料率は変わらないですか?
冨岡
そこはルールが決まっていないので、両方から同じ料率でとる会社も、どちらかを少なくすくする会社もあります。ケースによっても変わってきます。
島袋
そうなんですね。
いや~、報酬はいろいろトラブルが起こりそうです。
みなさん、手数料には気をつけましょう!
■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役
26歳だった2008年にインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2014年にIPO準備に取り掛かるも、のちに断念。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。「事業は創って売る」がモットー。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。
■冨岡 大悟:TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士
KPMG/あずさ監査法人のIPO部、フロンティア・マネジメント株式会社でのM&Aアドバイザー業務を経て、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後にTOMIOKA C.P.A OFFICEを開設。IdeaLink株式会社の他、上場準備会社を中心に3社の社外役員も務める。【IdeaLink株式会社のM&A実施背景】
資本力と競合優位性を俯瞰して自社サービスを見直した際、現状の経営資源では更なる成長は困難と判断。「フランチャイズの窓口」、クレジットカード比較4サイトを、2017年12月25日にシェアリングテクノロジー株式会社(東証マザーズ3989)へ売却(新設分割)。その後は売却した資金をもとに、「事業家集団」として新たなビジネスの種まきに奮闘中。
【YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCbxAeKe2f9WZGbKy1jHV0Dw
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