2018.10.25
希望の値段で売却するには|Vol.094
いただいたご質問にお答えします!
島袋
先日M&A BANKのFacebookアカウントで質問を募集しました。
実際にご自身の会社を売ることを想定して、気になることについて、冨岡くんに回答してもらいます。
希望の値段で売却を成立させるには?
まず1つ目。
「会社の売却を検討していますが、希望金額とアドバイザーから提示された売却価格に開きがありすぎて困っています」
これはあるあるですね。こういう場合はどういう選択肢があるんですか?妥協するしかないですか?
冨岡
5億で売りたいけど、アドバイザーや周りの人に聞いたら「2〜3億ぐらいじゃないかな?」と言われた場合のような、希望価格と提示金額の差が大きいケースということですよね。みなさんそれが理由で売らないじゃないですか。
島袋
そうですね。
冨岡
もちろん5億で売るとなると基本的にハードルが高いと思うんですが、可能性はゼロではないと思ってます。
1つはどんぴしゃの相手を探すことですね。「絶対あなたの会社が欲しい」と言ってもらうことができれば希望価格に近づけられる。でもなかなか難しい。
なのでそれ以外の方法でいくと、特に最近やるのがアーンアウトです。
島袋
アーンアウト…はいはいはい!
アーンアウト、覚えてますか?
冨岡
M&A BANKでも何回か解説しましたよね。アーンアウトは「今は会社・事業を3億円で売却します。だけれども、事業計画の目標を達成したら追加で1億円払います」というような契約を指します。
そうすると、希望売却価格には当初足りなかったけど、会社を売却したあとオーナーさんが残って買い手と一緒に会社・事業を成長させることによって、更にプラスのキャッシュインを狙うというのは可能です。公表されている例はそんなにありませんが、実は付けているケースが結構あります。
となると、先ほど言ったケースの5億と3億の差の2億が、その契約で埋めるのは不可能ではないですよね。
島袋
「そんなに自信あるんだったら5億のバリュエーションをつけるけど、その代わり最初に払うのは3億で、残りの2億はアーンアウトにして、業績目標を達成したら払うよ」ということですよね。
これは売り手側から提案するものですか?それとも買い手側から?
冨岡
実務には買い手の方が多いですね。売り手はアーンアウトという方法あることをあまり知らないので。
買い手が欲しくてもその金額を出せないという状況でも、買った後に予定通り・予定以上成長してくれていれば、追加で払う分には買い手としては痛くない。むしろ成果の共有なのでいいじゃないですか。
高い金額で買って失敗したら損になるだけなので、上手くいったら追加で払うというのは買い手としては低リスクですよね。なので買い手から「どうですか?」と聞くことの方が多いです。
でもアーンアウトは最初から言うことじゃないと思うんですよ。最初は「普通に買ってください」「売ってください」で譲渡したらシンプルじゃないですか。
アーンアウトはあまりにも金額の開きがあって、その金額の差を埋めたい時に出てくる話だと思うので。交渉がなかなか上手くいかなそうとか、最初からギャップがありそうであれば、売り手としても最終的にはアーンアウトもありえるかどうかを考えた方がいいですね。
当然のことですが、売り手が「絶対この事業計画は達成できない」と思っている場合は、アーンアウト契約を付けても意味がないです。
その事業を買って本当に伸ばせるかどうかというのは、買い手が基本的に考えるべきことになっていますが、実際のところ(目標達成の実現可能性が)どうなのかは、売り手の方が情報を持っているわけですから、より正確に見積れるケースがあります。買い手しか知らない情報ももちろんありますが、その事業自体が伸びるかどうかは基本的に売り手の方が詳しいです。
なので、「この計画は絶対達成できる」と思ったら、売り手は積極的にアーンアウト条項をつける方向に動くのもアリですね。
経験者的にどうしても気になる、税金の方は?
島袋
質問いいですか?
会社を売った場合アーンアウトで追加で入ってくるお金に関しては分離課税なんですか?
冨岡
微妙なラインですよね。その契約の内容によってけっこう変わってくるんですよね。
「単純に上手くいったら報酬を払います」という契約なら”報酬”じゃないですか。
でも契約の内容によって1年だったり半年以内に分割で払う契約をしたら、株式譲渡として扱われる可能性があります。
そこは結構揉めるというか、後になって「えっ!?そうだったの!?」となるケースがありますね。もしやるなら事前にネゴっといた方がいいです。
島袋
なるほど。いやー勉強になるな!
分離課税で税率20%くらいだと思ってたのに、40%以上取られてる!みたいなことになったらつらいですからね。
冨岡
そこに気付くのはさすがですね。税金にめちゃくちゃ敏感になってますね。(笑)
島袋
だって、お金なくなりますから!(笑)
島袋
ではまた次回、他の質問をさせてもらいますね。今回もありがとうございました。
■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役
2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。尊敬するじげん社に倣い、「事業家集団IdeaLink」を目指す。
■冨岡 大悟:TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士
オーストラリア帰りのM&Aバンカー。IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。IdeaLinkの他にも複数社の社外役員を務める。
【IdeaLink株式会社のM&A実施背景】
資本力と競合優位性を俯瞰して自社サービスを見直した際に、現状の経営資源では更なる成長は困難と判断。2017年12月25日、シェアリングテクノロジー株式会社(東証マザーズ3989)に新設分割により「フランチャイズの窓口」、クレジットカード比較4サイトを売却。その後は売却した資金をもとに、「事業家集団」として新たなビジネスの種まきに奮闘中。
【YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCbxAeKe2f9WZGbKy1jHV0Dw
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