2019.06.20
創業者が経営から完全に離れた理由|Vol.184
なぜ会社の経営から離れた?
島袋
今回も、M&A業界のイチロー、恵島さんに来ていただいています。
最近、全株一気に売却するのではなくて、ある一定数の株式を残して売却して、業績が伸びればアーンアウトで高いバリュエーションで売却する、というイグジット事例がちょくちょく出てきています。
恵島さんはそのやり方は検討しなかったんですか?
恵島
そうですね、イグジットで現金を得たかったというよりは、そのROI社自体が一番伸びる方法は何かなと考えたんです。
実は売上20億円くらいになってから、創業者である僕はほぼ経営にタッチしていなかったんですね。自分の年俸も、役員の年俸すらほとんど知らない。全て任せている状況で、僕はROI社が出してくれている収益で新規事業をやっている形でした。
普通に考えれば、ROI社が出している収益がすべてそこに再投資されればもっと伸びるはずなんですよね。それで、そこに集中できる組織をROI社に作りたいなと思ったんです。
それに、先程の質問にあったように株をある程度売って、現金を持ったまま株主として残って、経営陣と経営をしていくやりかたって今ちょっと流行っていますが、
会長職って、だいたいどの会社もそうだと思いますけど、めちゃくちゃ難しいですよね。(笑)
島袋
…とおっしゃいますと。
「会長職は難しすぎ」説?!
恵島
会長職というポジションって結局影響力を持つじゃないですか。残された社長の立場で考えると、正直うまくいくイメージが全くなくて。
結局経営陣も会長に何かを求めるし、会長も側にいると絶対何か言いたくなると思うんですよ。
なので僕は株主として残りつつ、何も関与せず影響を与えない形を取りたいなと思って、まず1年間オフィスには一切顔を出さないと決めておきました。
それでもやっぱり株主として言える権利があると言いたくなるということで相談したんです。
そうしたらGP(ゼネラルパートナー)の方から提案されたのが、ファンドの形をとって、GPと経営陣がプロ経営者同士が話をすることにして、(私が)完全に引退する。その形の方が伸びますよ、というものでした。
だいぶ悔しい提案ですけど。(笑)
島袋
僕も当事者だったら悔しいと思いそうですが、傍から聞くと理にかなっているなと思いますね。
恵島
悔しい、寂しいのと、なんかこう、自分はもう経営者としてこの会社のNo.1じゃないって言われてるのと一緒じゃないですか。
島袋
そうですね。
恵島
ゼロイチの社長と、1から10 、10から100の社長が全く違うっていうのは知っていました。
中にはゼロイチをやった後に1から10の社長に変われる人もいて、この10年間でそういう人を何人も見てきました。特に上場企業の社長にけっこういらっしゃいますよね。
でも僕はそれができなかったので、もう0-1のままやっていこうと。
役員の人達とその意思決定をするとき、
「あなたたちに経営なんてできるわけないよ」
「俺はもう反射神経的にこの会社の意思決定ができるけど、そんなことお前らはできるのか」みたいな話をしたんです。
そうしたら「恵島さん、この会社はそんな意思決定じゃなくて、ちゃんとした意思決定をするべき大きさですよね」って言われて、たしかに、と。(笑)
島袋
ははは(笑)
恵島
たしかにそうだよねって。
僕1人で感覚的に正しい意思決定をするより、ちゃんとみんなで考えて、プロの経営者・プロの金融の人達が合理的な判断をする方が伸びるという話があったので、そういう形を取りました。
会長職でうまくいったパターンってあります?
島袋
ええーっと、非常に言いづらいですね(笑)あるとは思いますけど。
恵島
今いる会社さんだけじゃなく、歴史的に見ても、院政とかって、任された方はやっぱりすごくやりづらいですよね。
「任せてる」っていう言葉にあるその責任感と、とはいえ100%権限があるかというと、どうしても会長の顔が浮かんでしまったりして。
社長は本来、お客様と対峙していたらいいわけじゃないですか。
お客様の価値を最大化するからお金が入ってくるのに、会長という人がいるとそこを見ちゃうんですね。お客さんじゃなくて、自分の上にいる人の顔を考えてアクションしているみたいなことって、僕自身も経験があるので。
それってやる側からしたらすごくストレスでしかないので、そこを省くという意味で、GPの人を入れて、プロの経営者同士で話をしてもらうということにしましたね。
島袋
本当に、おっしゃる通りですね。(笑)なるほどなあ~
そろそろお時間になりましたので、続きはまた次回伺います!
■恵島良太郎:個人投資家、スタートアップスクエア株式会社-代表取締役
2004年株式会社ROI設立、『ファンくる』をリリースし、主力事業へ。2017年に代表取締役を退任し、マレーシアを中心としたグローバル事業へ集中する。3年間で5社のイグジットを経験。現在代表取締役を務めるスタートアップスクエア株式会社では、エンジェル投資およびイグジットに向けた支援を行っている。
■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役
シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。
【YouTubeチャンネル】
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