M&A BANK Copyright©idealink Inc., All rights reserved.

第2回ベンチャーM&Aサミット 第2部 | M&A BANK

イベントレポート

M&A BANK > イベントレポート > 第2回ベンチャーM&Aサミット 第2部

2018.07.06

第2回ベンチャーM&Aサミット 第2部

  1. HOME
  2. Twitter
  3. Facebook
  4. はてなブックマーク


「第2回ベンチャーM&Aサミット ~買い手・売り手から見たM&A~ 」
当日の様子の一部をテキストにてお届けします。
登壇者プロフィールはこちら、イベント情報はこちらからご覧いただけます。

 

島袋
第2部は、セルサイドのお話をさせていただきたいと思います。
ゲストは、笑うメディア「CuRAZY」というウェブサイトを、先ほどお話が出たベクトルさんにバイアウトされた伊藤社長です。自己紹介をよろしくお願いします。

伊藤
よろしくお願い致します。正直、第2部の主役にされる程の者ではなく、一桁億くらいで買収されたぐらいのもので、小粒です。
ただ、もともと買収を前提に会社を始めて、経営を頑張っていたので、その失敗体験などをお話しできたらと思っております。29歳です。

大学の頃から会社をやっていまして、それを譲渡した後に就職しようと思っていたんですが、大学を中退したものですから全然就職できず、どこも全部落ちました。それで仕方なく消去法で会社を立ち上げました。
でもその時は継続的に経営する自信がなかったんです。でも、将来的には経営者をずっとやっていくだろうなと思ったので、まずは、ちょっと練習と言いますか、何か目標を決めて会社をやろうかなと思ったので、(売却を目標に)24歳くらいの時に立ち上げたのが今の会社、という感じです。

ネットで調べたら、(お金を返さなくても)ベンチャーキャピタルはお金をくれるらしいとわかって。お金をいただける条件はIPOするかM&Aするかで、正直IPOする自信はなかったので、じゃあM&Aにしようとなったのが、本音です。

島袋
本音ですね。そういうのすごくいいです。(笑)
ちなみに最初はいくら調達して、どれくらいの比率を渡しました?

伊藤
最初に1千万円調達して、次のラウンドで、1億円ですね。(渡したのは)トータル30パーセントぐらいだったと思います。一回目が普通株で、二回目は優先株を使いました。

島袋
なるほど。笑うメディア「CuRAZY」はいつ頃始められたんでしょうか?

伊藤
2013年の終わり位に会社を立ち上げて、今、会社がメインでやっている「笑うメディアCuRAZY」というのを2014年に立ち上げて、2年か1年半後にベクトルに買収されたという経緯です。今ベクトルグループに入って1年半目という感じです。

島袋
なぜ、あのメディアを始めようと思ったんですか?

伊藤
もともと会社を立ち上げるにあたって、どういう感じにしようかなと考えたときに、「タイムマシーン経営」というものがあるとネットで見たんです。海外で流行っているサービスを国内で時間差でやるというものです。
その時間差に合うサービスとして何があるかなと考えながらサービスを5、6個作って、今のサービスに当てたという感じですね。

島袋
外したサービスについても、差し仕えなければ教えていただけますか?

伊藤
外したサービスは、コノミックというものです。
スマートフォン向けの縦読みマンガのサービスで、韓国で言うウェブトゥーンズ、国内で言うところのコミコが当時かなり盛り上がっていて、それが国内にないなと思って、一番初めに作りました。
でも三か月目位でマンガボックスとかコミコが出てきて、(こっちは)タダで漫画家さん呼んでいたら、向こうはお金を払うと言い出して、漫画家さん全員もっていかれて、事業がつぶれました。

島袋
なるほど。他にもそういった失敗ってありますか?

伊藤
その次に、スタンプで漫画を簡単に作れるサービスを作りました。
それはグーグルのビジネスコンテストで優勝もして、「よっしゃあ!」と思っていたんですけど、やっぱりビジネスコンテストの評価とユーザーの評価とはまた別物なので、さっぱり反応されず、「優勝したからいけるってゆうたやん」とは思いました。(笑)
それは全然流行らずに落ちましたね。

島袋
なるほど。笑うメディア「CuRAZY」はどんな感じでしたか?

伊藤
スタンプで漫画が作れるサービスの時にソーシャルメディアのユーザーが全然いなくて、(メンバーが)みんなエンジニアだったので、ソーシャルメディアの分析をゴリゴリやって、「バズるのはこうやるんだ」っていうのが何となく把握できてたんです。笑うメディア「CuRAZY」は、それを活用しながら作った感じです。
それで、初月から、900万PVぐらいまで跳ね上がったので「これはいけるな」と思って、そっちに本腰を入れた感じです。

島袋
どうやったらバズるんですか?

伊藤
「ユーザーが褒めれる対象を見つける」と、バズります。ベタな所だと赤ちゃんの動画とかです。あと、小学生が頑張ってる、可愛いミスしてる、とか。

対象を褒めやすいものって、ツイッターでもフェイスブックでもかなり好意的にシェアされるんです。ネガティブ要素込みでバズらせるのはすごい簡単なんですが、それだと広告価値がないなと思いまして。
それでポジティブにシェアされる物を分析して、それに近い物をどんどん作っていくというのを繰り返してました。

島袋
すごいですよね。
そういえば以前お話うかがったとき、一番最初に投稿されていたのって、たしかネガティブというか、けっこう痛い系の動画でしたよね。

伊藤
そうです。自分で作ったんですけど、画鋲をバーッと底に置いて、背中からダイブするとか。僕はそういうのが好きだったんですけど、全然反応されなくて。(笑)
(褒められるものを作るという方針は)PDCAを回した結果ですね。

島袋
そこから、よく挽回しましたね。(笑)

伊藤
名前はクレイジーなんですけど、初回の方でかなりにこやかになって、クレイジーではなくなりました。(笑)

島袋
なるほど、なるほど。
そこからバズっていって、最近の価値がついたと。収益モデルって、広告収益ですよね?
アドセンスとかの広告が入ったりとか。

伊藤
そうですね。これも海外の物を真似しようと思っていて。
特にソーシャルメディアからの流入の場合は、SEOに比べてアドネットワークの効率が悪いんです。
ユーザーが検索して引っかかる場合はCPMも割と安いんですが、SNSの場合、特にフェイスブックは今もそうなのか(わかりませんが)、毎回ウェブを開いて閉じる度にクッキーデータを取らせてくれなかったりして。それで、世界的に見てもSNSを使ってアドネットワークで収益立てていくのは難しい、ということがありました。

それで、拡散性とか瞬発力の高い技術を作るのが得意だったので、記事広告とネイティブアドが合っているかなと思って、そちらに収益を寄せていった感じです。

島袋
そうなんですね。
事業は順調に拡大していったと思うんですが、なぜ売ろうと思ったのですか?

伊藤
どこかのタイミングで売却することが元々計画としてあったので探していたというのもありますし、そもそもこのメディアを伸ばしていくとしたら、ネイティブアド・記事広告がメインになるので、営業力が必須だったんですよ。
でも、(社内には)営業する人間もいなかったので、ちょうどその営業会社を回っていた中で、ベクトルさんがガチガチの営業会社だったので


ガチガチの。(笑)まあ、PR会社ですけどね。

伊藤
向こうとしてはメディアが欲しいというニーズは分かっていたし、こちらとしても営業が欲しかったので、交渉に入りました。

冨岡
でも、他にも検討されたんですよね?

伊藤
ぶっちゃけあります。

冨岡
競わせたんですか?金額を。

伊藤
いえ……(笑)だから、反省してるんですよ。


安く売り過ぎたと?

伊藤
まあ。(笑)やっぱり競わせた方がよかったのかなとは思いましたね。当時は本当に真面目に(交渉して)買ってもらいました。

冨岡
早い段階でベクトル1社に絞って、交渉を進めていったということですか?

伊藤
はい、結果的にそうですね。順調に進んだところと話を進めました。

大村
ベクトルにはどうやって持っていったんですか?

伊藤
もともと記事広告をPR会社として売ってくれていて、つてがあったんです。代表の西江さんとか副社長の長谷川さんとも付き合いがあったので、フランクに普通にフェイスブックメッセージを送ったくらいの感じです。


僕は今IRTVというベクトルの子会社の社長をしています。
ベクトルでは、PMIというか、ベクトルの現場となじませるために、M&Aの実働は副社長が進めているケースが多いです。ベクトルの買い側のチーム――要は副社長のグループなんですが――は定期的にミーティングをしています。
その会議、最近はバイネーム(名指し)なんですよね。「金さん、この社長とフェイスブックで繋がっているよね。この会社売らないかな」と言われたりします。あとは、URLだけ丸投げされて、「この社長とどうにか繋がれないか」「ここそろそろ厳しいと思うから、買えたら買いたいと思ってる」とか。
同時に帝国データバンクの情報を送ってきて、そこには株主一覧とかもあるわけですが、「金さん、一人ぐらいは知り合いいるでしょう」と言われるような感じです。

島袋
どちらの会社ですか?


それはちょっと……(笑)
2社ターゲットの会社があって、僕は今、そこと繋がるために頑張っているところです。

冨岡
どういう会社が(買収の)ターゲットになりうるんでしょうか?


ベクトルは、先ほど伊藤さんがおっしゃっていたように、PR会社でありながら営業が強い会社なので、売る力・提案力があるんです。月額で60~100万円くらいもらっているクライアントが何百といて、そこと毎月定期的にミーティングがある。つまり、商談機会が必ず月2回あるのが強みだと思っています。クライアントの決裁者や決裁者に近い人にアップセル提案ができるんです。
既存でPRを頑張っているところに、さらに「ラフテックという会社の『クレイジー』というメディアもグループ化したので、そこでSNS上でバズる広告を今回100万円でやりませんか』『面白いですね、やってみましょう』というような話をすることができるんです。
わかりやすく言うと、現場に数百人いるPRパーソンたちに、買収したメディアをかつがせるイメージです。だから、買った翌日から売り上げが上がる感じなので、買収しやすいと言いますか。

大村
よく金さんから、フェイスブックで「この社長、大村さん知り合いでしたよね?」と連絡がくるのは、そういうことだったんでしょうか?(笑)
また、当事務所はベクトルの法律顧問を務めていて、伊藤さんとは買収前は利益相反関係にありましたが、現在はグループ会社ということで仲良くさせていただいております。

積極的に買収しにいくという企業スタンスは、やはりなかなか多くはないのではないかと思います。そういう意味ではベクトルさんって積極的ですよね。


別に伏せる話ではないのでお話ししますが、今ベクトルは「子会社からもIPOしていこう」という方針で、「上場準備しているこの会社にこういう会社がくっつけば、より成長角度が上がるよね」と絵を描いているパーツがいくつもあります。
その1パーツを補填していってくれるような事業やメディアを買って、統合して、1社にして、IPOを目指すという(方針なので、それを見込める会社を買う形です)。
オーナー達は一定の株式を持って、次はIPOでもう一回経済的メリットになりうるようなスキームでやっている感じです。

冨岡
注意点というか捕捉ですが、普通だったら、例えばラフテックさんみたいなエンジニアが中心の会社が営業力の強い会社に買収されると、数字が上がる一方で、文化が違い過ぎてうまくいかないケースが多いです。でも、ベクトルさんはそうじゃないということなんですよね。

伊藤
別に営業マンを出向させてくるわけでもなく、単純に媒体資料を渡したら売ってきてくれる感じなので、グループインしてから売り上げも営業も利益も本当に3倍ぐらいまで上がってます。
会社としてジョインして正解だったのだろうなと。社員のことを考えてもそう思いますね。


他にもうまくいっている理由だと思ってるのは、1回ベクトルもラフテックも同じビルの中にいれるって話があったらしいんですが、伊藤さんが頑なに断って、未だに1社だけ別ビルにいるんですよ。歩いて1分のところですけど。(笑)

冨岡
ベクトルさんはそうやってうまくやっていますが、メガベンチャーでM&Aを積極的にやっているゴリゴリの営業会社が買収をすると、買った後に売り手の企業が後悔したり、キーマンクローズという「いつまでいないといけない」という契約がある場合は、「契約が切れた瞬間に辞めよう」と経営者が言っているという話もけっこう聞きます。
どこに売るかはけっこう大事だなと思いますね。

島袋
そういえば、藤さんはロックアップが外れたあとも(ベクトル・ラフテックに)いらっしゃるんですよね。

伊藤
います。それこそ居心地がいいので。

島袋
そんなことがあるんですか。(笑)

伊藤
そうですね。僕が本当に辛いのは、月曜日の朝9時の役会ぐらいです。それ以外は本当に自由にやらせてもらってるので。(笑)


伊藤さんは、その月曜日朝9時からの全子会社の社長と役員が集まる会議に、いつもサンダルとリュックサックで来る感じですが、許容されてますね。(笑)それに今ラフテックはベクトル社内のシステムの開発とかメディア作りとかを全部担当しているんですよ。
順当にいけば儲かるはずなんですが、伊藤さんが変な新規事業を勝手にやるので、銀行口座残金のボラ(ティリティ―)がでかいと昨日も副社長が言っていました。(笑)
「あいつのところは伊藤の性格を表している。キャッシュで5千万円ある時もあれば、1千万を切ってる時もある」と。最近は、「Vチューバー」ですよね。

伊藤
はい。バーチャルユーチュ-バーです。


バーチャルユーチューバーが流行っていて、誰にも承認を取らず、それをやっていたという。

伊藤
そうですね。わりといろいろとやらせてもらっています。


そういえば伊藤さん、売った金額って公表してるんでしたっけ?

伊藤
してないです。ひと桁億とだけ言っています。


片手以下でしたか?片手以上でしたか?5億くらい?伊藤さんに1円億以上はキャッシュインしましたよね。

伊藤
金額は言うてくれるなと言われていますので。(笑)

島袋
みなさん金額自体も気になると思うのですが、金額がどうやって決まったのかというところも教えていただきたいですね。

伊藤
営業利益5年分プラスアルファぐらいの感じが普通なんじゃないかと思います。スーパー経営者でもない限り、僕みたいな小粒では、それぐらいが妥当な線なんだろうなと思ったので。

冨岡
篠さんが先ほどおっしゃっていた3倍と違うわけを補足しますと、どういうビジネスをやっているかによるんです。
メディアは4倍,5倍くらいまで価格が伸びる可能性がありますが、店舗型のビジネスだと1倍、2倍など、倍率は変わってきます

伊藤
結局営業利益で喋るのが一番かなと思います。過去に10回ぐらい交渉したんですけど、営業利益がない時の交渉は本当に話が進まない印象です。

(来場者)
ウェブメディアのデューデリジェンスについてお聞きしたいです。
ウェブメディアは、月によっていきなり流入が減って収益が落ちたり、上下がすごく激しいイメージがあります。実際私もいろんなメディアを見ていると、先月はすごく調子が良かったのが、いきなりペナルティーを受けたり(していますし)、いろんなアルゴリズムに依存するところがあるなと。
(売却)金額がどこを基準にして決まるものか気になっていて、被リンクの質が悪いから落ちる可能性も高いとか、そこまで見たうえで金額って決まっていくのかなど、全然知らないので教えてほしいなと思います。

伊藤
少なくともうち(の売却の際)はその話は出ていなくて、ベクトル側が望んでいたのは、今後ベクトルはメディアを作っていきたいから、いろんなメディアを立ち上げてほしいと(いうことでした)。最悪(クレイジーで)下がってもそこ(新しいメディア)で儲かるでしょうという話はしていましたね。回答になっているかわかりませんが……。

島袋
実は今、他にももう1サイト売却する話を進めています。20社ぐらいアプローチして19社がだめで、最後の1社に興味を持っていただいている状況で、その過程で買い手がWEBサイトをどのように評価してるのか見えてきた部分があります。
SEOが強いことを僕はポジティブだと思っていたんですけど、意外にもかなりネガティブな反応でした。厳密に言うと、SEOだけではバリュエーションはつかないと思います。
SEOと広告とソーシャルメディアからの流入、アフィリエイトからの流入が分散されている方がバリュエーションがつきやすいです。取引先も分散されている方が評価いただけます。


そうですね、買い手のリテラシーがすべてだと思います。「バックリンクで過去にペナルティーくらったことありますか?」と聞いてくる会社もあれば、聞かない会社もあるので。

それに、M&Aは類似の単品商材を持つ会社同士の場合でも、(厳密には)類似ではなく、1と1のマッチングなので、本当に全事例が特殊事例と思っています。確かにバックリングでひょっとしたらペナルティーをくらう可能性もありますが、買い手側が儲ける手段を別で持っていると、それ(ペナルティーによる損失)は誤差(の範囲内ととらえられること)になったりします。
ラフテックではそもそも特にペナルティーはなかったと思いますが、ベクトルとしては、ラフテックの延長線上での稼ぎ方ではなくて、別ラインにベネフィットを感じていたので、それで数億のバリュエーションをつけて買ったということだと思います。

そういうわけで、究極は相手次第というのが、僕が2年半くらいやってきた印象です。ほぼそうだと思います。「ゼロ円でもいりません」という会社もあれば、「2億でも買います」という会社もあるのが現状なので、本当に相手次第です。

島袋
経営者でIPOを目指したい方はけっこういらっしゃいますよね。僕も昔そうでしたが、大村先生と話して実情を知ると、よく知らずに「IPO目指している」なんていうフェイスブック投稿を見かけたときに、すごくイタさを感じます。
では大村先生に、IPOがなぜ難しくなっているかについて、お話しいただければと思います。

大村
途中から参加されている方もいらっしゃるとは思いますが、当事務所(フォーサイト総合法律事務所)は、上場会社や上場準備会社を中心に業務をしていまして、今は上場準備している法律顧問先が70社くらいあるのと、上場企業も30社くらいの法律顧問を務めています。
201Ⅰ年に東証の審査基準が変わってからIPOの件数も増えていったのですが、いろんな不祥事があった影響で、審査基準は変わっていないものの、東証もより広く、より深く見ているという言い方をどの方もされています。重箱の隅をつつくような審査をするのが、ここ3年くらいの感じです。
過去の実績で言いますと、例年は証券審査を通っていればだいたい上場審査も通って上場できていたのが、去年、一昨年ごろから、二桁数の会社が証券審査を通っても東証審査を通過できないという状況になりました。最近では、証券会社は、東証の審査が厳しくなってきたのに合わせて、審査を比較的厳しくするようになっています。
ここ2年くらい、上場しようとする会社がすごく増えてきていると足元で感じています。時系列的にいろいろと後追いで出てきているので、上場したいという会社はどんどん増えてきています。恐らく東証はそれなりに審査を厳しくして、70社から90社くらいでしばらくは推移していきたいということなのではないかなと思います。

島袋
IPOを目指すより、M&Aした方が、賢いというか、賢明なんじゃないかなと思いますが。

大村
IPOもM&AもVCからすればエグジットという意味で同じかもしれないですが、経営する側からすると全然違いますからね。
売却したら、基本的には売却した代金をもとに次どうするかを考えます。そのまま残る選択肢もあれば、違うことをやる、もしくは働かない、という選択肢もあるかもしれません。しかしIPOというのは、そもそも株はそんなに売れないですし、そのままずっと経営して事業を伸ばし続けなければいけないということです。

IPOがだめだったらバイアウトするというのも選択肢の一つだと思いますし、実際、今はIPOがなかなか難しいので、今後はM&Aが増えていくとは思います。
他方で、3、4年前に未上場のベンチャー界隈で、バブルではないですが、いろいろなVCがすごい高値で投資をしている状況がありました。なかなかその金額では、事業会社が買収しにくいという状況でもあると思います。

冨岡
それに、そもそもIPOとM&Aの二者択一ではないですよね。
チーズケーキタルトのベイクという会社は、ファンドに株の半数以上を売却しましたが、残り半数近くはオーナーチームが持ったままでIPOを目指すようです。つまり、ファンドへの売却益として経営陣が100億近いお金を得た上で、更にIPOで残りの株の売却を目指す。要はM&Aした後は、IPOするっていう事になると思うので、必ずしも、M&Aしたら、もうIPOできないって訳ではないです。それはどういう座組みを誰とするかによって変わると思います。

大村
厳密に言うと、記事を見る限りでは、社長は交代していて、オーナー創業者は会長となっているようですね。


ファンドへの譲渡も最近増えてますよね。
(IPOの目指し方として、)自力でIPOに持っていくケースと、一時的に自分の持ち株を8割9割、一定のバリュエーションで10億円とか20億円とかでつけてもらって、8割9割売る。オーナー社長がキャッシュインして、大株主になるファンドを味方につけて、IPOを目指すケースがあります。
これは事業スピードが上がる可能性が結構高くて、僕の周りの友人でかなり身近に3人、こういう状態の人がいます。知り合いベースだとプラス3人ぐらいいます。

ファンドがつくと何が変わってくるかと言いますと、これまで未上場の会社って――世の中ほとんど未上場の会社なわけですが――相手方の大手の取引先からは基本的に門前払いに近い扱いをされるような状況が多いんですが、ファンドに譲渡した人たちの話を聞く限り、ファンドが後ろについた瞬間に商談できなかった相手と商談できたり、受注できなかったところにいきなり受注できることがあるそうです。
特に飲食店とかだと明確で、やはり財務の安全性みたいなものがどこまで取れるかが、貸主としては心配があると思うんです。でも、ファンドが後ろについたことで、いきなり空港内にお店を出せたり、人気商業ビルに出せたりということがけっこう多いそうです。
まずファンドが株式の8割を取得したということは、デューデリをして、その会社の成長性があると思ったわけですし、変なことはないというのを、ある種ファンドが証明したに近いような感じですね。

IPOまでは行かなくても未上場企業の信用性みたいなのが確立されて、そのファンドの方経由で三井不動産の商業ビルに入ったとか、「100パーセント呼ばれることなんてなかった」というようなところに、ぽこっと入るケースはあるなと。
なので、ファンドに8割とか、51パーセント以上で株を譲渡することは多いし、実は僕もその手の相談を受けていたりします。最近、ここ3年くらい、そういうのがありますね。

大村
その文脈で言うと、最終のファイナンスラウンドで株価がすごく高過ぎて、むしろ、ファンドしか手が出ないというM&Aも増えている印象です。
ファンドに売らざるを得ない場合もあるでしょうし、それもいいかもしれないですが、ベンチャーではそういう心配もありますね。

島袋
肌感覚で言うと、未上場の会社、上場企業、ファンドの順番で買収価格が高くなるイメージです。
ファンドによりますが、だいたい300億円くらい組成して、それを10人とかで運営しているので、一つの案件で30億円以下は基本的に手を出さないですよね。
なので、逆に30億円ぐらい評価いただけそうだと感じたら、ファンドへ相談した方がいいバリュエーションをつけてくれる印象があります。


そうですね。
上場企業でイファース(IFRS=国際会計基準)を入れていないところは全部のれんで乗っかってしまう(のれんで乗っかる=「買収された企業の時価評価純資産」と「買収価額」との差額が20年以内の均等償却になる)ので、ベンチャー企業に30億のバリュエーションをつけるのはなかなか難しいと思います。なので、イファースを導入している上場企業に持って行きたくなりますよね、一応のれんは関係ないので。
さっき(第1部で登壇)のシェアリングテクノロジー社は、実はイファースを導入する予定と発表しているので、そうでない上場企業とは買う目線が変わってくると思います。
ファンドは常に新しくソーシング(ターゲットとなる企業を選定し、交渉すること)していますし、普通に2、30億円のバリュエーションをつけるのは珍しくないです。かつ、他の新規の上場をここ数年間ずっとウォッチしていますが、毎年、必ず片手くらいはファンドが買った企業が上場しています。
今年で言ったら、ネイルサロンをやっているファストネイルが未上場の時にファンドに売っています。あとはキュービーハウスという10分カットの会社。あそこもいくつかファンドを転々としています。さかのぼれば、とりよしや磯丸水産をやっている企業も未上場の時にオーナー家が売却して、ファンドが上場させました。コメダ珈琲も未上場の時にコメダの創業家がファンドに売って、ファンドが上場させました。
このイベントの第3回でファンド関連の話が必要であれば、実は今日ファンド関連の知り合いが来ていまして、その方が登壇っていうのもありかと。

島袋
確かに。聞きたいですね。


実は今日も来ていただいていて。ストライクの創業期のメンバーで、今は別でやられている方ですが、ファンドともネットワークがすごくあって、ファンド事情にすごく詳しい方です。僕はその文脈でよく相談させてもらっています。

島袋
今から仮に僕がスタートアップを始めようとして、自己資金が公庫から借りた1500万円がマックスだった場合、数百万円くらいで事業を始めて、ある程度軌道に乗ったタイミングでVCを入れようと思っています。
VCを入れるにあたって、M&A視点で気をつけないといけないポイントはどういうところでしょうか?

大村
相手(VC)がいる話なのでどこまでできるかはわからないですが、普通、それなりの金額の出資だとVCは「優先株が当たり前」という感じの態度です。
しかし、うちの事務所はVC側には一切立たず、発行体(=経営者)側にしか立たないのですけれど、普通株でできるかどうか交渉してみることはできなくはなく、手段としてありです。普通株と優先株とで条件は随分違いますから。

それに、出資契約書の内容も先方が出してきたものをあまり検討せずにハンコを押すことが結構あると思いますが、よくよく考えれば彼らはプロなので、いろいろと仕組まれた出資契約書が多いわけです。
例えば、数パーセントしか株を持っていないのに、ドラッグアロング条項をつけたりとかです。そういう落とし穴みたいなものがありますので、ちゃんと精査する必要があります。

あとは、基本的に出資なので、会社法にのっとれば本来出資契約は結ぶ必要もなく、お金をいついくら振り込むかっていう問題だけでよいはずで、発行体からすると出資契約書はなければないほどよい契約条項もなければないほどいいんです
けれど、VCサイドは規制をかけたいから契約書を用意して、ハンコを押してもらうわけです。
出資契約書についてはそういった注意点がいろいろとあるので、専門家にちゃんと見てもらったり、自分の所に余計な規制がかかっていないか、例えば売りたいとなった時にVCが反対すると売れなくなってしまうような契約条項になっていないかどうかなど、きちんとチェックした方がいいです。

優先株か普通株かという論点もあると思いますが、こんな所で言ってしまっていいのかわかりませんが、基本的に普通株でいいと思っています。
VCの方がいらっしゃったら言いにくいですが、交渉できるなら普通株でやった方がいいし、契約条項もなければない程いいというのが、発行体にとっての結論です。
だから、交渉できるところは交渉する。VC側から「この出資契約書は雛形です、うちはこれで全部やっています」と言われても、実際に交渉してみると削除に応じてくれたりすることも往々にしてあります
まず種類株(優先株か普通株か)の選択、そして、どちらにせよ出資契約書は実務的に交わすことになるので、それをどこまでどう交渉できるかがポイントになります。
それが後々バイアウトする時に足かせになる可能性もある場合も出てくるので、そこも含めて考えられた方がいいです。

冨岡
伊藤さんがVCから「優先株で」と言われたときは、「普通株で」っていう交渉はありましたか?

伊藤
いえ、もともとわりと攻めたバリュエーションの交渉だなと思っていたので、はなから優先株で交渉しました。

冨岡
しょうがないと思って?

伊藤
はい。

島袋
そちらの方、質問をどうぞ。

(来場者)
すみません。資金調達の話で、IPOではなく売却前提の話なのですが、バリュエーションを上げ過ぎて出られないということもあるのかなと思いまして。バリュエーションはいくらぐらい上げていいのか。上げ過ぎてIPOもエグジットもなかなかできないベンチャーの実態がどういうものなのか、などリアルな話をお伺いできると嬉しいです。

伊藤
売却前提だったら、肌感ですけど、バリュエーションは5億円くらいまで、優先株込みだったら10億円くらいまでなのかなと思います。

実際知り合いの中でも攻めたバリュエーションを普通株でやって、でもサービスはどんどん衰退している例があります。それは確かに出れないんだろうなとは思います。

島袋
ハイ・バリュエーションで資金調達しすぎちゃって身動きとれない経営者って案外多いですよね。年々IPOが難しくなってる状況下、ハイ・バリュエーションで資金調達した企業はある程度の時価総額じゃないと、VCさんがIPOも許してくれないって話も聞いたことがあります。想像するだけで地獄ですよね。
なので、よくフェイスブックで見る「いくら調達しました」「おめでとうございます!」ていうコメントにすごく違和感があります。あまり高すぎるバリュエーションってどうなんでしょうね。

(来場者)
そういう場合、事業がうまく行かなかったらどうすればいいんでしょうか?

島袋
経営者の立場的にってことですよね。M&Aじゃないですか?

(来場者)
ダウンラウンドしても?

島袋
ダウンラウンドしても、VCの(「と」の間違い?)株主が許してくれれば、いいんじゃないでしょうか。どうですか金さん。


そうですね。高く出せば(=出資依頼額を高く提示すれば)、(エグジットの)選択肢が狭まるのは事実です。
本当に経験の豊富な人は、M&AとIPOを意識して、バリュエーションがどれくらいのモデルにするかを考えてやっている感じですね。
なので本当に、「高値がついたから、やったー」というわけではないと思います。トレードオフというか、何かを得たらその瞬間に未来の何を失っている。やはり(重要なのは)そのご本人が、本気でIPOする気があるのかどうか、です。

僕はIPOを目指した方がいいとは思っています。IPOを目指していたら売れる(=IPOの準備をしていれば、売れる条件も揃っていく)ので。
例えば、僕が親しくさせていただいてる方がカチタスという中古住宅流通を行う会社に売却をされたんですが、それは上場準備中、上場直前期のタイミングだったそうです。
IPOの準備をして監査証明をもらっているということは、監査法人、証券会社がある程度「問題はないですよ」と言っているようなものです。

大村
とは言ってもIPOはなかなか難しいです。
多くの会社は、万年、IPOを目指すようなリビングデッド状態になり、ファンドの満期が来たころに備忘価額で売却する、という形になっていくことが多いのではないかと思います。
要は高いバリュエーションがつきすぎて、売却もできない、IPOも難しいという会社は、そうなることが多いのかなと。もちろん、IPOを目指してIPOできるのが一番いいとは思いますけれど。

(来場者)
コンテンツの話に戻ってしまいますが、最近のウェブメディアは、口コミや評判に対してそれを見ているキャラクターがいるコンテンツが伸びている印象があります。
そうすると、そのキャラクターや前面に出ている社員さんの依存するところが出てきたり、その認知度が重要になるので、その分M&Aで売却の対象になったとき、ハードルが高くなったりするのかな、と気になりました。

伊藤
その場合、キーマンのロックアップとかになるんでしょうか?

大村
(ロックアップを)やることは、あります。

島袋
例えばM&A BANKの動画には僕が出ていますが、もしこれを売るとなった時にどうなるかって話ですよね。YouTuberとかもそうですよね。


まだYouTuberの買収事例は見たことないですね。

伊藤
中国だったら(事例が)あります。


タレントとか一芸能人みたいな感じですよね。その人がしばらく、例えば最低3年残りますとか、他の仕事は受けませんといった契約でないと大変なんじゃないかなと思います。
つまり、島袋さんが動画に出れば出るほど、島袋への依存率が高くなりますよね。

島袋
バーチャルにします。来月からバーチャル。

会場:
(笑)

島袋
どうなんでしょうね。

大村
法的な観点から言いますと、今お話したように「キーマンクローズ条項」というものが、その従業員が買収後もずっといてくれることを約束するものとしてあります。
ただ、ほとんどは個人個人が約束しているわけではなく、通常その会社の株を持っているオーナーが契約当事者になっています。社員個人として契約していれば、その人を法的にも拘束できますが、大体は拘束できません。
そうすると、キーマンクローズの約束をしたからと言って必ず保証されるわけではなく、例えばその社員が辞めてしまうといった場合にどうするかというと、代金を戻す、分割払いで残りは払わないようにするなど、金額面で交渉していくしかないといったところでしょうか。

島袋
なるほど。そういうことを想定していかないといけないんですね。

では、そろそろお時間となりましたので、このあたりでしめさせていただこうと思います。

来場のみなさまたくさんのご質問どうもありがとうございました。
そして登壇者のみなさま、リアルでためになるご回答を、どうもありがとうございました。
これにてベンチャーM&Aサミットは閉会とさせていただきます。


本ページでは割愛とさせていただきましたが、他にも「まさにそこが知りたい」という、リアルでためになるエピソードをいくつもご披露いただきました。
次回は10月に開催を予定しております。ぜひ会場でノーカット版をお楽しみください。

 

  1. HOME
  2. Twitter
  3. Facebook
  4. はてなブックマーク

新着M&Aインタビュー

もっと読む

新着M&Aニュース

もっと読む

アクセスランキング

案件情報をお探しの方 担当からすぐに連絡いたします。



連絡手段の希望:
電話メール