2018.06.29
第1回ベンチャーM&Aサミット 第2部
「第1回ベンチャーM&Aサミット ~シリアルアントレプレナーの思考に迫る~ 」
当日の様子の一部をテキストにてお届けします。
登壇者プロフィールはこちら、イベント情報はこちらからご覧いただけます。
島袋
第2部は質問形式で進めます。では、そちらの方、ご質問どうぞ。
(来場者)
こんばんは。介護のIT事業をやっています。
私もつい最近M&Aのお話をある会社さんから受けまして、元々は自分でちっちゃく始めて、「自分が好きなものをやろう」くらいにしか思ってなかったので、全く考えてなかったんですよ。
なので、その話を聞いても何にも感じないだろうなと自分では思っていたんですが、実際声がかかってみると、不思議と不安と、欲が出てくるんですよね。
変に自分の中で気持ちがぐるぐるとまわってしまって、珍しく何も論点が出ないとか、何も考えが出ない、という状態になってしまったんです。その話はちょこっとずつ進んでいってるんですけど、どうにもすっきり、気持ちが固まらない。
皆さんはそういった状況に陥ったことがあるのか、清算的に考えられるターニングポイントはあったのかどうか。そういうところを、体験談として伺いたいなと。よろしくお願いします。
島袋
オファー来た時に、悶々としたんですか?それとも、デューデリしてる時?
(来場者)
オファーが来た瞬間ですね。
廣渡
こっちは悶々とした人いないから(笑)
西原
いやまあ、みんなそうだと思いますよ。今何に悩まれてるんですか?
(来場者)
実はそれが言葉にできなくて。
西原
僕の場合は、単純に株を売っただけじゃないですか。でもなんか日本では、身売りしたとか、そんな言葉に転換する人が多いんですよ。そう思いません?会社を捨てたとか、そんな言葉を使う人も多いし、風評被害もあるんじゃないか、とかもあったりして、悶々といろいろ悩みますよね、
そもそも始め、売れるなんで誰も思ってないんですよ。僕もマンションの一室で始めてて。みんな同じ感じだと思うんですけど。
みんな絶対、悶々とするはずなんですよ。たぶんいろいろやってく中で、僕は趣味とかもあるし、不動産のサイトをやってたんですけど、不動産が好きで好きで好きでやったわけじゃない。若い時の勢いでというか、そんなもんじゃないですか、稼ぎたいとか。
そんな感じで始めてやってたわけなんで、介護が好きで好きでしょうがないなら売らない方がいいと思うんですけど、本来の目的で言うと、僕も「経済的自由を手にしたい」とか「趣味をしたい」とか「家族の時間」とかが、本来であればそこ(がより大事)なので、そもそもそういう風に思ってる経営者が、ずっと死ぬまで経営するっていうのは、逆に言うと悪いじゃないですか、社員に対して。もっといい経営者がいるかもしれないし。
そういうような気持ちにどんどんシフトしていったというのが僕の経験ですね。まあ、悶々とは絶対するはずですね、ってとこです。
福田
えっと…悶々は、金額によりますよね、結局。
僕は最初、結局買ってくれた会社じゃないところに、個人的に相談していて、取引先だったんですけど、そこの金額が安かったんですよ。だから、それだと悶々とするんですよね。
で、最終的にその事業が6.2億だったんですけど、1社目というか、最初僕が相対で提案していたところは3億代だったんですよね。「3億代だったら買うよ」と。それだと悶々としたんですけど、極論、金額が金額だったら売った方がいいですし、あとはなんか、売ってから考えればいいかなって気持ちでしたね。
で、その事業からは収益がなくなるんですけど、打つ手は増えるし、またやりたいことやればいいだけなんですよね。
島袋
ありがとうございます。では次に質問がある方。
(来場者)
今日はありがとうございます。
いくつかあるんですけど、まず見送られた識学の安藤さんのお話、デューデリと識学の関係で、本当は何を話そうとされてたのかなぁ、って実は今日の参加費の大半をそこに……(笑)識学の安藤さんのお話を聞きたいんですが、難しそうでしょうか?
安藤
すみません。ぼくが場違いかなと思って喋らないほうがいいかなと思ったんです(笑)
いま色んな会社に入らせていただいている中で、本当にリアルに「買収した後の現場」を見させていただいてます。
買収された子会社のほうに入って立て直しなんかをやらせてもらってるんですけど、組織の状態があまり良くないと、買われた側の社員の方も非常に不幸だなぁとすごい感じてます。それに、買った側もすごい苦労してるところを見てます。
「組織がよくない状態」を定義すると、「事業成長以外のところの文化が強すぎる」みたいなところですね。そういう場合は買った側も大変だし、買われた側も大変だなぁと。
例えば実際あった話なんですけど、買った側の会社は、バリバリに事業を伸ばしていくのにストイックな会社なんですけど、買われた側の会社はですね、どちらかというと「ワイワイ楽しくやっていきましょう」みたいな感じですが、事業モデルがうまくいって、割と売れます、という会社だったんです。そうすると、ワイワイ楽しくやるほうの文化がかなり邪魔になってきて、結果的に買った側が厳しくすることで社員の半分ぐらい離脱が起きてしまったと。
事業はその後伸びていくと思うんですけど、もっといい方法があったんじゃないかなと考えてみると、会社を売却する時に本当に社員のことを思うのであれば、より事業成長だけにコミットしたような事業態にしといたほうが、結果的に全員幸せになるんじゃないかなということになります。
そういうことで僕らは、M&Aのところにサービスとして「組織デューデリ」を展開しようとしています。これはなにかというと、組織がほんとに「事業成長だけにコミットする形」にどれだけ近づいてるかっていうことを点数化できるようなものをサービス提供して、そういう課題をクリアしていきたいなという風に思っていると。…まあそんな感じでございます。
(来場者)
なるほど。そうすると、今けっこうIT系のベンチャーでは、社風を出していって独自の文化やコミュニティーで吸引力を作ろうというのが多いと思うんですが、そうではなくて、あくまで成長軸で組織の文化を作っていくという軸でのデューデリサービス、ということですか?
安藤
そうです。
要は、どっちがメインかわからなってるような会社が多くなっちゃってるんで、組織文化を作るって、ほんとは伸ばすためにやってるはずなんで、伸ばすことがメインになってないと、後々大変なことになりますよっていうことです。
(来場者)
ありがとうございます。すいません、もう1つだけ。
今私は、買いたい事業もありますし、売りたいなと検討している事業もありますが、例えば銀行にお金を借りたいと思っているときに、自分から銀行に借りに行っちゃいけないと僕は思っています。銀行が「お金貸してください」と言う人を「危ないな」と思うのは普通だと思うんです。なので、僕は意地でも自分からは銀行の門はくぐらないんです。
そういった意味で「買いたい」「売りたい」ときに、「今思えばこうしとけばよかったな」とか、意識的に有利にディールを進めるためにやられてた座組とか見せ方とか、あとさっき福田さんがおっしゃっていたようにM&Aするときって、生み出す将来のキャッシュフローを現在価値に置き換えるとか、いわゆるロジカルな部分があると思うんですが、「意外とこういう部分が最後のディールに影響するんだな」「(これで)金額が決まったんだな」みたいな、やってみて始めてわかったことを、今日いろんなプレーヤーの方がいらっしゃると思うので、買い手の視点と売り手の視点というところを教えていただけると嬉しいです。
最後の着地点って両方が合意しないといけないと思うんですけど、そこに対して売る側はたぶん「1円でも高く」と普通は思っているでしょうし、さっき福田さんから「少しでも高く売るノウハウがある」というお話もありました。買い手に意外とこういうロジックが効いたな、みたいなところ、そのあたりを詳しく聞きたいです。
福田
僕の場合はウェブサイトといっても、アフィリエイトサイトだったんですよね、
ユーザーの顧客情報を集めて、それを何社かに売っていて、そこから広告費をもらうモデルだったんですけど、僕はその事業を売って、別のことを始めたかったんで、この金額だったら売ってもいいっていうのが6億円だったんですよ。
買い手としては、買収したあとに営業力や上場企業のブランドを活かして、問い合わせの単価をもっと引き上げることができるという確信があったと思うんですよ。だからそこで折り合いがついて。
例えば「資金調達プロ」のサイトに問い合わせが来て1件1万円の売り上げになるところで、買った会社はそれを2万円まで引き上げることができるとしたら、「買い」だと思うんです。
サイト売買の場合、1年分とか2年分とかで売買されることが多いと思うんですけど、その相場より高くても「買い」だなと思われたので、成約に至ったんだなと思います。
廣渡
質問で興味があったのは「交渉術」という言葉で、M&Aの仕事してる身からすると、あんまり交渉術ばっかり言いたいわけじゃないんです。
ただ、おっしゃる通り、自分から売りたい売りたいっていうよりかは、買いに来てもらうようなサービスだったり会社をつくるほうがそれは絶対いいですね。
「別に売る気ないんですけど」って言いながら、買いに来てもらったときに、「僕のこの想いわかりますか」とか、「でもいくらですか?」とか言えるほうが交渉上は絶対正しいと思います。
最後の交渉は、さっきプラスマイナスの話ありましたけど、意外と最後は「エイヤー」です。わたしどもも一応フェアバリューとかDCFだかなんだかって出しますけど、最後は粘り腰でけっこうジリジリ交渉が起きて、プラスになったりマイナスになったりするっていうのが、ほんとのM&Aの現場じゃないかなっていうふうに思います。
みなさんにお伝えしたいのは、M&Aもやっぱりどっちかっていうと買いに来てもらえる事業や会社をつくっておくことが1番かなと思います。綺麗ごとですけどね。
島袋
実は僕、「フランチャイズの窓口」ってサイトを昨年末に売ったあと、もう1サイトをとある上場企業に売却するために動いていて、もう最終DDに入っています。フランチャイズの窓口を売ろうとしたときは、案内してた上場企業の会社8社ぐらいがすぐ手をあげてくれて「あ、そんな感じで売れるんだ」と思ったので、もう1個不動産のサイトを売ろうとして18社ぐらいに提案したら、全部断られたんです。最後にここがもしダメだったらいいやと思った所がいま最終DDに入っています。
そこで思ったんですよ。収益性はそんな変わらないので、正直言うと、買い手がどこなのかで(反応や買い値は)変わってくるなと。
だいたい買い手はファンド、上場企業、上場企業のなかでも時価総額40憶ぐらいで、ヤバイ100億タッチしないっていう所とか、で買うと、どういう戦略で買いに来てるのかなってわかるんですね、
あと会計基準ですね。IFRSという会計基準を取り入れているところ。有名なとこだとライザップ、じげん、うちのバイアップしたシェアリングテクノロジーも。そういうところはある程度高値で買ってくれます。
あとFacebook上のPRって結構重要なのかなって思うんですよね。上場企業とかに売る場合は。「そのサイト知ってる」とか、そういうことがけっこう大事かなと。今売買しているサイトは意外に運営した年数が短かくて、短いと不安だなと言われました。
冨岡
あんまり交渉とか前面に出しすぎるのもよくないというのもあると思うんですけど、とは言え、テクニックあるでしょ?っていうところもあると思うんで。
無限にあるんですけど、例えば買い手の立場を考えてみると価格が上がりやすいのはあります。
どういうことかというと、買い手が上場会社だとすると、上場会社ってM&Aをどういうプロセスで進めていくんだっけ?っていうのを想像する。すると、上場会社のなかでも、一致してない部分があるんですね。どういうことかというと、現場は買いたいけど、管理部とか社外役員とかはとにかく安くしたい、止めたいみたいな、そういった戦いが裏にはあるんです。
そういうとき、買い手候補の社内の稟議を通すためには「将来この対象会社はこんなに伸びるんです」という資料をつくらなきゃいけないんです。売り手の自分がそのお手伝いを、頼まれなくてもしてあげる。そういうことができると、買い手の中でも「こういう成長ストーリーがあるんだなぁ」と、説得力が増すんです。
なので、「いまのウチはこれだけです。どうぞ!」じゃなくて、「将来はこう伸びます」という計画を上場会社の経営陣、あるいは管理部門の人たちが見て納得できるような形に見せたりすると、稟議が少しでも通りやすくなるというのはあります。
あともうひとつは、将来をどこまで見るかです。今あるメディアのPVがいくら、ユニ―クユーザー何人とかは、それはそれでいいんですけど、「将来こう伸びる」というところをどこまで買い手が金額に織り込むかは、やっぱり不確実性が高いとなかなか難しくなるんですね。
「将来こういう計画があるんです。これをやります。」と言ってるだけなのと、少しでも「こういう計画があって、実際既にメディアを新しく開発してて、足もとでこう進んでいます」というのは全然違います。
つまり何が言いたいかというと、少しでもいいから将来部分の足もとを具現化させる。メディアだったらもう開発して、全然まだ大きくなくてもいいからローンチしてるんですっていうことをその期間内に見せちゃえば、将来の、買い手候補が不安になる部分が少し軽減される。つまり、リスクが減るから金額が上がる。そういうちょっとしたテクニックも無限にあります。
テクニックにばかり走るのもよくないですけど、ケースバイケースでバランスをとりながらそういうものも組み合わせると、金額も納得できるところに近づけるのかなと思います。
(来場者)
僕自身が、会社の売却を2年前に1回していて、そのとき売ろうとしたタイミングが少し遅かったなという反省点があります。それで、M&Aのアドバイザーをそれぞれどのタイミングで見られたかをちょっとお聞きしたいです。
自分が売ろうと思っていたタイミングに入れたのか、それとも、高く売れるタイミングを見計らいたいから、けっこう前の段階からアドバイザーを入れてたのかとか、どのタイミングで入れられたのかなっていうのをちょっと、伺いたいです。
島袋
ちなみに彼は「笑うメディアクレイジー」というサイトの運営会社の社長をやられてて、ベクトルさんにバイアウトされてます。
どのタイミングでアドバイザーを入れたのか、西原さんにお伺いしたいですね。
西原
さっきの質問に通じると思うんですけど、そもそも、売ろうと思ってないんですよ。
そもそもいいサービスを作ろうと思ってやっている矢先、ぽんとそういう話が出てきてて、元々売ろうと思ってたわけじゃないんで……よくわかんないですね。
会場
(笑)
西原
ほんとにいい会社だったら売りたくないじゃないですか。でも金額とかのバランスで、いい会社で伸びるけど売ったわけですよ。
「売りたい売りたい」って言ってる会社って、普通に考えていい会社じゃないじゃないですか。そういうことだと思うんですよ。
だから、ちょっと解答にはならないんですけど、普通に「いいサービスを作る」と意識することが1番重要だと思うんですよね。
廣渡
でも私、自分の中でセンスとして、作った人って「このタイミングが1番伸びたタイミング」ってわかると思うんです。「1番伸びてるところで人に預けるほうがいい」って感覚は出ますよね。
その先5年も10年もそのサービスやりたくない、作る時が楽しいんじゃないですか。
西原
うーん、どうなんですかね。
結果としてこうなったっていうのが、僕らの感じだと思うんです。売るためにはやってないです。
廣渡
逆にそれがいいんですよ、たぶんね。
西原
そう思いますね。僕は。
だから僕はとにかく、自分のサービスをよくすることしか考えてなかったです。毎日毎日自分のサイトを見ない日はなかったし、何時間おきには間違いなく見てるような感じだったわけですよ。
まあ、僕はおじいちゃんになったら経営はできないと思うし、一般論で、絶頂を迎える前に売ったほうがいいんじゃないかなとは思いますけどね。
島袋
ありがとうございます。福田さんはどうでした?
福田
アドバイザーを入れたタイミングですよね。契約締結したのが、2018年の1月。売却完了が2018年の3月。アドバイザーを入れたのが2017年の9月でした。そっからとんとん拍子で話が決まったので。
僕の場合は2017年のはじめのほうから売ろうと思ってたんで、最初から相談しとけばよかった、という気持ちですね。
(来場者)
ありがとうございます。
僕も売却してから知り合いの経営者さんから「あのタイミングで僕らも買いたかった」と後々話が来たんですよ。僕が売る1年前くらいのタイミングでもけっこう話があったんですが、その時にアドバイザー入れればよかった、って後悔があったので、この質問をしました。
冨岡
M&Aは年に何件もぽんぽんないのが普通だと思うんですが、とはいえ今の時代、普通に経営戦略の1つに入れていいと思うんですよね。人を雇う、広告を打つ、新規事業をはじめる、M&Aする。みたいに。
実際、我々IdeaLinkでもM&Aしましたけど、ストレッチの店を最初はいくらで買いましたっけ?
島袋
うちでは今ストレッチの専門店も本部としてやっていて、実はそこ(会場)にいらしてる板谷さんもオーナーで、4店舗やっていただいてます。
その最初は、実は大阪にあるストレッチアップってお店を500万円で、M&Aで買ったところからです。そこからフランチャイズで拡げていって、恵比寿店を今度は板谷さんをオーナーに、売却させていただいた。
冨岡
うちもそうやって500万で買ってますし、会社さんを100万200万単位で買ったり売ったりしてる会社っていっぱいあります。それってたぶん、会社規模にもよりますけど、経営判断でやってる予算感に入る方々も多いかなと思っています。
例えば普段から検討すべきこと、実際に買うか売るかは別として、じゃあいつの段階でアドバイザーなり、そういう人に相談すべきかって言ったら、もう今日からでもいいと思ってるんですね。今の顧問の中にしっかりしてる方がいれば相談すぐにしたほうがいいし、これだけ今日立派な方がいるんですから、この人と話してみたい、相談してみたいっていうんだったらもう今日話して具体的に進めていただくのがいいと思っています。それをしないメリットってなんにもないです。
今ここにいらっしゃる方はほとんど経営者だと思いますし、今日やったほうがいいことで、今日できることがあったら、今日相談されたらいいんじゃないかなぁと。そういう結論ですね。
廣渡
宣伝というわけじゃないんですけど、さっき介護の事業の件で悶々とするっていうお話をされてましたが、わたしがアドバイザーとしては絶対聞くポイントが2つだけあるんですね。
まずひとつは本当に売りたいと思っているかどうか。よくよく聞いてて、本当はもっとやりたいんじゃないの?伸ばせるんじゃないの?って思ってるんだったら、売らないほうがやっぱりいい。
あとは、金額がいくらなら売るのか。5億なら売るの?10憶なら売るの?50億なら売るの?という、金銭的なことですね。
アドバイザーを早めに雇って、話してみる。ためになるアドバイザーって、どっちかっていうと、そこの頭の整理をしてくれるかどうかが大事だと思いますよ。
「どこを売りますか?」とか「どこを買いますか?」といったことより、「本当に売りたいかどうか」、「どういう状況だったら売りたいか」、頭の整理をしてくれて、「だったら今はこうやってあたる」とか「今はやめとく」といった風に行司をしてくれるアドバイザーはいいアドバイザーだと思います。
(相談をするなら)早いに越したことはないと思うんですが、そのへんの頭の整理をしてくれるくらいのアドバイザーだったらなおいいんじゃないかと。
安藤
さっき話出た代理人を早く見つけるってことですよね。
廣渡
やられてることの価値とかをすーって分かるアドバイザーっているんですよ。「すごいですね!それ価値ありますよ!」って。やっぱりそれって嬉しいじゃないですか。そういうことをわかってくれる代理人、アドバイザーの人を見つける。
「でもね、目を見てるともっとやりたいと思ってると思うよ」みたいな、アドバイザーと言いながら人生相談にも乗ってくれるような、そのへんがわかる人、この人なら組めるなっていう人。
西原さんも言ってましたが、信頼できるアドバイザーっていうのはそういう、頭の整理をしてくれるアドバイザーじゃないかなぁと思いますけどね。
深澤
僕ちょっと聞いてて思ったんですけど、M&Aありきで作る人もいれば、想いドリブンでサービス作って、突然(M&Aの話が)来る人もいる。こうやって今日来ていらっしゃいますけど、なにか王道とか、ルールがあるわけじゃないなと思うんですね。
やっぱり、自分の過去の経験から思い込めてこのサービスを作ったんだっていう人が、突然アドバイザーを入れて値踏みしていくと非常に違和感があって悶々とするでしょうし、最初から何年後にこの金額で売るって決めてやった人たちも過去いっぱいいるじゃないですか。
例えば僕が自分でやりながら思ったのは、ゼロからイチを試行錯誤しながら1人でこもって「これをやりたい」って考えて、作って、ちょっとこう…チャリンとね、最初の1円が入ったこの喜びまではすごいエクスタシーなんだけど、伸びていっちゃうと、なんかつまんなくなるわけですよ。みんながどれだけ3倍いくよ4倍いくよって言っても、実は正直僕自身サービスにそこまでコミットしてなかったっていうのがあってね。
で、次々他の事をやりたい。周りから多動だなんだって言われるけど、やっぱりなんか新しいことを常にっていう人は、自分が手を離れて、このサービスを愛してくれる人に売ったほうがいいと思います。
大事なことは何かっていうと、それぞれ経営者である皆さんがどういうタイプなのかと。シードが楽しいのか急成長期が楽しいのか、土壇場になったところでもう1回復活させるのが楽しいのか、それぞれ楽しいステージって違うと思っていて。
その時その時で適切な人材配置がされれば、そのサービス自体は伸びていくんじゃないかなと思うので、多分ルールはなくて、自分自身をよく知るのが大事じゃないかなと、お話を聞いてて思いました。
島袋
ありがとうございます。次のご質問どうぞ。
(来場者)
売り手サイドの意見を伺いましたが、買い手サイドとして、「こんな会社は買っちゃだめだ」とか、買った後に注意すべき点があればなにか教えてもらえればと思います。
島袋
それこそ僕、クレジットカードの比較サイトを買って、売ったんです。
事前に出してた数字よりも、買った後想定と違ったっていうのはよくあると思うんですけど、そこはいったんちょっと置いといて、会社を買う場合は違法行為をしていないかどうか、そこですかね。法務的なDDはマストかなと。あと取引先に反社はいないかとか。それによって、買ったことによって他の事業にまで影響することがありますから。
廣渡
買い手側にもつかせていただきますが、落ち着いた上場会社さんが買って、1番悲惨だなぁと思ったのは、伸びない事業ですね。多少、いわゆるプロジェクションっていう「これぐらいいきます」っていうのが下回るのは当たり前なんですね。それはわかってて、でも言ってたことがことごとく外れて、悲惨だなと思うときがありますね。
私は財務DDをやってますけど、財務DDはあんまり大事じゃなくて、どっちかっていうと事業ですよね。本当にこの事業が伸びることをやれるのかどうか、本当は行き詰まってて、いまいち伸びがないんじゃないかとか、自分のところとのシナジーをちゃんと考えないと。
買った後に伸びないのが1番失敗だと単純に思います。
(来場者)
ありがとうございます。
島袋
じゃあ次、どなたか質問ありますか?
(来場者)
私、外資系の投資運用会社におりまして、昨今、異常なグローバルの金余り状態がありまして、先日のヒーローズの初値が跳ねたりしています。あとビットコインの問題もありましたけど。前半の想定の範囲内ということで、外資系の運用会社3000億ぐらいのファンド集めでもすぐお金が入っちゃう、そういう状況があるんですね。
やっぱりそういう流れを見てますと、単なる投資家よりも会社作って売るのが1番固いんじゃないのか、という発想で。私は起業家じゃないですけど、ずっと会社を作って早く売りたい、アーリーエグジットしたいっていう思いが強いのが実際のところです。
ただ残念ながらIT方面が全然だめでして、すぐ簡単に思いつく事業っていうのは塾とかカフェとか、ネイルサロンとかですね。ウェブとの結びつきが弱い会社っていうのは、やっぱりマーケットが違ってくるのか、バリュエーションが違ってくるのかというところ。逆にそういった会社でも一工夫したら、億単位でエグジットする方法があるのかも(知りたいです)。
或いはアドバイサーについて、侍インキュベートとか、スカイランドベンチャーズのようなスタートアップに投資するVCに相談に行くのはどうなのか。そのあたりを教えていただけましたら幸いでございます。
安藤
僕らはめちゃくちゃアナログで、紙とペンで企業のコンサルをやってる会社で、ITとはまったく無関係です。
僕らは今創業3年なんですけど、ちょっとだけ外部からお金も入れてまして、3期目終わる前ぐらいに外部の方に株主になっていただいて、時価総額では数10億ほどの評価をいただいたりしています。
もちろんITの方が(高値が)つきやすいと思うんですが、市場の中にはまだまだそういうアナログでも、マーケットのニーズはあると思います。ニーズマッチして成長性を示すことができれば、ITじゃなくても数10億っていうところはいけるんじゃないかと。
ただ、ITと違って、完全に人を介した仕組みになってますんで、エグジットしてトップがいなくなることは、残念ながらどう考えてもできないなと。
(来場者)
バリューアップという観点だと、ベンチャーキャピタルはどうですか?
安藤
バリューアップに関しては、正直あんまり関係ない。
彼らは僕らのIPOのタイミングでの利益確定を狙ってるんで、今は僕の顔がちょっと売れ出したとかいうレベルなんで、バリューアップではあまり冒険はしていただけていない。IPOの支援という意味では非常に役立っているというところです。
廣渡
ちょっとコメント付け加えます。今おっしゃった侍インキュベートとか、スカイランドさんは本当に積極的に投資するVCさんですけど、彼らもだいぶ学習してるので、結構熱いビジネスモデルあてないと、彼らもそうそう出さないと思いますよ。
だいぶ学習もしてるし、コインチェックの問題でANRIさんとかインキュベイトファンドとか売れましたけど、彼らに続くファンドでだいぶこなれてますから、あんまり、形だけ作って商売つくるのにそこまでコミットしてないんじゃないかな。そんなに世の中甘くないと私は思います。
ファンドマネージャーとか金融の方で、自分は全く好きじゃないけどここは事業が伸びるからやった(出資した)んだよっていうコメントされる方がいますけど、これもやっぱりそれならそれで突き詰めないと、いいものはできないなと。
今日もちょうど素晴らしいファンドマネージャーの人が起業した人と話してましたけど、その人はやっぱりさすがで、勉強のためにベンチャーに入って、すごい辛い思いをしてました。難しいと言いながら。
でも、ほんとに介護のキワキワのところで起業されてましたけど、でもやっぱりこれに対する想いと、絶対にこれは負けないということを言ってました。
ですから、いいのを選べば上手くいくだろうっていうのはよくないし、VCも、若いVCと言えどもその辺はちゃんと見ると思うので、よくお考えの上やったほうがいいかなと思います。
島袋
次のご質問どうぞ。
(来場者)
M&Aされるときに、儲かる仕組みやいろんなノウハウの特許を取っている場合は、特許ごと売る形になるんですか?
あとは、自分がまだその事業をやりたい場合、買収先の会社さんと一緒にこの事業をやって、その会社さんの1つの事業として一緒に経営をやって、利益を何%かとかそういう配分でわけるとか、そういった形態はあるのかどうかを聞きたいなと。
島袋
実際の話をさせていただくと、特許は会社で取得していて、会社ごと売却するのであれば、特許は会社に紐づいてるので、売却対象になります。
先ほどの「笑うメディアクレイジー」の社長さんはベクトルという上場会社にバイアップされたんですけど、すごく面白いことに、ロックアップが切れたのに、「ベクトルさん居心地いいんでもっといます」と。(笑)なので、バイアウトしたけれど、別に株主が変わってるだけで、そこに居続けてやるっていうのはある。
ぼくも実際シェアリングテクノロジーさんにバイアウトしましたが、またそのサイトを伸ばすためのお手伝いという形でお仕事の一部をさせていただいてるので、それは全然あり得る話かなと。
じゃあ、他にご質問がある方。
(来場者)
売られた方で、売却後の社員に対する説明というか、ベクトルを今後も強く持っていくために、こういう風に考えてこういう風にしたんだっていう経営者としての思惑のほかに、現場での感じ方もあると思うので、その時に不支持されたこととか、実際こう思ってたけどこう説明しましたとか。もしうかがえるのであればお願いします。
島袋
そこ大事ですよね。まず僕の場合は、会社売却でしたけど、サービスだけ売却しました。人は、基本的にうちのほうで。
(来場者)
別のことを一緒にしたいから?
島袋
そうです。なので、事業だけ売却しました。福田さんは?
福田
僕は事業譲渡で、サイトだけ。スタッフが居なかったんで、なにも説明しませんでした。
登壇者
へえ~すごい。
深澤
僕も事業売却で。
当初、7プラス、インターン生が数10人いたんですけど、インターン生は期間限定なので(大きな問題はなく)。
メンバーとそういう話をして「まだこれから伸びるじゃないか」という意見もあったんですが、先ほどお伝えした通り市場規模(やメンバーのことを考えると)、大きいところの力を借りて伸ばした方がいいという考えでした。
でも最初は「やっぱりこのサービスを伸ばしていくことが大事だよね」という話にもなりましたし、一筋縄ではいかないですね。ちょうど4月に(売却を)決めて8月に契約した中で、4月に新卒で入ってきた子なんかは「深澤さんと一緒に働きたいです」なんて言って入ってきたので、入ってくるなり早々売却先に行ってしまう。その説得もね。
1対1でじっくりと説明をして、僕自身も売却した後もそこの会社に残りながら面倒をみていったり、メンバーにはそういう背中を見てもらって、「まだ見ててくれてるんだね」というリレーションはできてると思ってます。
要は心の問題ですよね。僕は7人程度だったので、時間をかければ何とかなりました。
島袋
では、そろそろお時間となりました。
来場のみなさまたくさんのご質問どうもありがとうございました。
そして登壇者のみなさま、リアルでためになるご回答を、どうもありがとうございました。
これにてベンチャーM&Aサミットは閉会とさせていただきます。
本ページでは割愛とさせていただきましたが、他にも「まさにそこが知りたい」という、リアルでためになるエピソードをいくつもご披露いただきました。
次回は10月に開催を予定しております。ぜひ会場でノーカット版をお楽しみください。
また、6月開催の第2回の様子は7月6日(金)より公開いたします。ぜひそちらも合わせてお楽しみください。
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