2019.05.09
第4回ベンチャーM&Aサミット【1/6】
「第4回ベンチャーM&Aサミット ~投資ファンド、大解剖~」
当日の様子の一部をテキストにてお届けします。
登壇者プロフィールはこちら
2.「ファンド」の基礎知識
1. 経営者が関わるファンド:VC/バイアウト
冨岡
ではまず、ファンドへの売却をテーマにするにあたって、そもそも一般的に経営者さまが関わるファンドにはどういうがあるかというところをお話しして、本題に入っていけたらと思います。
細窪さんがVCファンド、Oさんがバイアウトファンドということですが、ちょうど会社を経営している中で一般的に関わる機会があるのがこのふたつのファンドだと思います。
それぞれのご説明と違いについてお話しいただければと思います。
細窪
簡単にご説明しますと、二つの最大の違いは、VCファンドはマイノリティー出資で、バイアウトファンドはマジョリティ出資あるいは100%買うというところだと思います。
あとVCファンドというのは、普通はまだ赤字の、収益や売り上げが立つかどうかわからないけれど将来性のありそうな会社を探し出してきて、そこに出資をします。平均すると20%ぐらい出資して、その経営者と一緒に会社を育て上げていくというところに楽しみを感じる、というものです。
イグジットとしてはだいたいIPOを目指してもらいますが、最近はIPOと並んでM&Aで事業会社などに売却することを目指すケースが目立ってきています。
それがVCの典型的なパターンですね。
バイアウトファンドについては、日本で本格的なファンドができたのは、実は90年代の半ばくらいにアドバンテッジパートナーズさんができたのが初めてですね。なので日本ではまだ20年くらいしか歴史がないんですが、今は非常に大きなファンドが沢山できています。
最大の特徴は、再生ファンドは別として、VCとは違ってキャッシュフローがちゃんと出ている会社に投資をして、さらにバリューを上げるところです。例えばグローバル展開を支援して、より大きな会社に売却する。あるいは他に買いたがっているファンドがあればそこに売却する、というのが典型的なパターンだと思います。
冨岡
ありがとうございます。
Oさん、実際にバイアウトファンドにお勤めされている観点から補足があれば、ぜひお願いします。
O氏
そうですね、出口としてはIPOを目指している会社を支援する点では(VCファンドと)競合していますし、実際にVCと入札でぶつかることもあります。
3.買い手としての「バイアウトファンド」
1. 買い方の違い
1. 買収スキーム①「LBO」
O氏
先ほど会社を大きくしてEXITというお話がありましたが、実際にはそれだけではなくて、お金を借りてファイナンスを活用した買収することもあります。
最低限そこで一定の株式価値の上昇を確保して、さらに事業成長を実現することでもう一段大きい株式価値の拡大を実現するような、ファイナンスと組み合わせて会社を大きくする手法も取ります。
逆に言えばお金を借りられる会社には、バイアウトファンドとして高い値段を付けやすい部分がありますね。
冨岡
そのあたり、ぜひもっと詳しく解説をお願いします。
LBOのような、ファンドでよく用いられるファイナンス的な手法がどういうものかも、なかなか一般的には知られていないところだと思いますので。
O氏
そうですね、LBO、レバレッジドバイアウトというのは、お金を借りてレバレッジをかけて買収する方法です。
このお金の借り方が特徴的で、買収対象の会社が稼いでいるキャッシュフローを担保にお金を借りるんです。なので、買い手としてはそこに何の与信も連帯保証も提供しません。あくまで買われる会社の力でお金を借りるというスタイルを活用するというのが、実際バイアウトではスタンダードな手法になっています。
会社としては負債を抱えるんですが、一般的なお金を借りる場合と違って、経営者個人が連帯保証をしてくださいということもなく、あくまで会社の信用力をベースにしてお金を借ります。
借りたお金と、その会社の将来への期待に対してわれわれが拠出する資本、この合計額を株主さんにお支払いするのが、いわゆるレバレッジドバイアウトという手法です。
だいたい半々くらい、例えば100億の企業を買おうと思ったら、50億は自分で出しますが50億はお金を借りて、セットで株主さんにお支払いするというのが一般的です。
冨岡
宮崎さん、実際にセルサイドを支援される際も、今ご説明のあった手法で買収されることは多いでしょうか。
宮崎
そうですね、けっこう多いです。バイアウトファンドが買い手になった場合はそうです。
売却のアドバイスをメインでやる中で、4~5年前から、ベンチャー企業をバイアウトファンドに売却する動きをもっと広めたほうがいいんじゃないかと思うようになったので、バイアウトファンドさんが買い手になることが多くて。
2. 買収スキーム②「ベンダーローン」
宮崎
問題は、バイアウトファンドさんが買えるラインがだいたい当期基準のEBITDA(≒営業利益)で2~3億くらいなんですが、ベンチャー企業で営業利益が3億出ている会社ってあんまりないんですよ。
買えない理由のひとつは、そのラインを超えないとLBOのローンがつきにくいからです。銀行からすると50億調達するローンを付けるのと、5億のローンを付けるのでは、やることは一緒なのにフィーが全然違ってくるので、やっぱり大きい案件をやりたがるんです。
だからそこにもいくつか仕組みが必要で、私がよく提案しているのはベンダーローンというものです。すごくシンプルに言うと、例えば10億円のトランザクション(取引)があったとすると、最初に買い手の会社は買収目的の子会社を作ってそこから5億円を売り主に払います。そして今度、売り手はさらにその5億円を買い手の作った会社に貸し付けるんです。
つまり、銀行じゃなく売り手が買い手に貸し付ける形になるので、銀行さんからローンが出なくても買うことができるんです。
他にもいろんなスキームを組み合わせていけば、LBOでは成立しなかった、規模が小さいベンチャー企業をバイアウトファンドへ売却するディールが実現できることがけっこうあるので、そこの知識はすごく大事かなと思います。
3. 「高く買われる」以外のメリットも
島袋
そういえば以前、Oさんの会社で有名なお菓子屋さんを100億で買収されましたよね。
こちらもまさにファンドに買収された事例かと思いますが。
O氏
この案件のハイバリュエーションの理由はいくつかありました。
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