2019.05.09
第4回ベンチャーM&Aサミット【4/6】
「第4回ベンチャーM&Aサミット ~投資ファンド、大解剖~」
当日の様子の一部をテキストにてお届けします。登壇者プロフィールはこちら
※ 買い手としての心がけ
来場者
私は今ベンチャー企業の経営企画室におりまして、買収する側の立場にいます。
ご登壇の皆さんはご経験豊富な方ばかりだと思いますので、新米の経営企画室長のような人が、今後何を一番重視しながら業務に励むべきかというところを伺いたいです。
M&Aの一連の流れで関わる専門領域の中で、まずはどこか一つに特化するべき、ですとか、もっとパーソナル的なところを磨くべきだ、ですとか、とにかく案件をこなすべき、ですとか、そういった皆さんの見識を頂戴できたらと思いました。
1.ソーシングのためのネットワーク
宮崎
たとえば買い手担当者として、会社を買収して、そこがちゃんと想定通りのキャッシュフローやシナジーを生めるような形にすることを目標にするのであれば、まずはいい案件を獲得しないといけないですよね。
他にも案件の評価、コミュニケーション、交渉をしたり、その過程のDDでいろんなチェックもしますし、それも弁護士さんや会計士さん、税理士さんによるレベルのばらつきもカバーする必要がありますし、そのあとにまだPMIもあるんですが…
とはいえ、おそらくまずはよい案件を獲得できるかどうかが肝になります。
でも、たとえば100件紹介してもらってその全部がいいなんてことはほぼなくて、玉石混交だと思います。うちでもそうですよ。
「ちょっとできないな」と思うものはお断りするわけですが、僕が「買ってもバリューが実現しないだろうな」と思った時点で、たぶん買い手は買わないんですよね。したがって、僕が「良い案件で希望条件を見ても買い手企業にとっても良いM&Aになりそうだな」と思わない場合は、買い手候補にもっていくどころか受注をしないようにしています。
なので、やはり(案件情報が)くるルートをいろんなところにちゃんと用意する必要があるかなと思いますね。ある人からの紹介はけっこういい案件が多いけど、ある人からくる紹介は全然ダメな案件ばかり、ということも結構あります。
この、M&A案件をソーシングするネットワークを作るのはすごく大事だと思います。これがひとつですね。
ふたつめはクロージングの前までの話で、簡単な評価をして、初期的な提案、LOI(意向表明)提示して、DDして売るところ。…ここはやっぱり僕の感覚では、総合格闘技的なところがあります。
たとえば対象会社の親会社が連結の子会社を二つ持っている状態で、その個別の財務諸表を見るとき。連結の会計には、未実現利益の消去というルールがあります。子会社が親会社にドーンと(サービス・商品を)売って利益が出ていたとしても、外部に売れていなければ利益は消さなきゃいけないんです。それを知らずに合算したPLで見ると失敗してしまいます。当たり前の話ですけど、会計の力がないとそういう判断ができない。
法務でもそうです。僕は毎回セルサイドDDをするんですが、その際はお客さんの対象会社、もしくはオーナーさんの名前で重要な契約を第三者としていないかを必ずチェックします。ディールが進んだとき問題になる契約ならやっぱり消去しないといけないですし、解決できないとしても認識はしておかないと、あとでトラブルになりますよね。
あとは、バリュエーションの段階になったとき、「周りが3倍から7倍のEBITDAって言ってるからやっぱり5倍だよね」という風に決めてしまうと買収競争に勝てない。だからファイナンスの力も必要です。
そういうことで総合力が必要になるので、やはり場数が必要です。
しかも、今の日本のM&Aマーケットはまだそんなに成熟していないので、知識がけっこう偏在している。それでまとめたのがこの本なんです。(笑)
…というのは半分冗談、半分本気で。プロからすれば一部分ではありますが、これを読めばけっこうわかるように仕上げたつもりです。
何をやらないといけないかを明らかにしたうえで経験を積んでいくといいんじゃないかなと思います。
細窪
経験を積むためにもネットワーキングは大事ですね。会計士、弁護士、M&Aの仲介会社もそうですし、それ以外にいろんな経営者の方々とも。
経営者仲間ではいろいろな集まりがあるので、そういうところに顔を出したりして、地道にネットワークを作っていくしかないですよね。そうやって作ったネットワークの中で一番いいと思う方をその都度選んでお願いすればいいんじゃないかと。
自分に専門性を付けると言っても限界があるので、やっぱりネットワークがすべてだなと思います。
O氏
そうですね、いろいろ大事なことはありますが、一番はコミュニケーションですかね。聞ける専門家をそれなりにおさえて、そこに聞く。
あと重要なのは、社内を調整することですね。今お勤めの会社がどれくらいの人数かにもよりますが、中のことを調整して、外のことは宮崎さんみたいな方に聞く。自分に身についていなくても、専門家に聞いて取り廻していく。
某企業はM&Aをしまくっていますが、そこのM&A担当者は役員とその担当者のみで実質的には切り廻していて、その方はすごくコミュニケーション能力の高い方でした。
社外の言ってることをちゃんと理解して、それを社内で調整して意思決定を迅速に行うことで、案件は死ぬほどできました。
そういう意味では対話は重要ですね。
2.M&A以外の選択肢
細窪
あとは、経営企画室の方であればミッションがいろいろあるでしょうし、別にM&Aがすべてではないと思います。
新しい事業を取り込む方法としては、事業提携だとか資本提携だとか、いろんなパターンがあると思いますので、まずはそういうことも広く考えて。
それでもやっぱりM&Aがいいとなったら、その中でも最初に20%だけ買ってあとでさらに買い足して51%以上にする…とか、M&Aにしてもいろんなパターンがありますから。
バイアウトファンドが買収する場合は最初からマジョリティを取るでしょうけど、事業会社が買収する場合は、買収のやり方にもいろんなパターンが考えられると思います。
冨岡
新しい事業を始める方法はM&Aだけじゃないよねというお話でしたが、それでいくと、ストックサンの株本さんにぜひ聞きたいんですが…
事業会社の方がM&Aを検討するときは、新規事業を自分たちで作れないからその選択になると思うんですが、外部のプロを雇うという形で作るパターンもありますよね。株本さんはそういう仕事をよくされている印象があります。
事業会社が新事業を立ち上げるときに外部のストックサンが入って、合弁かプロジェクトか何かしらの形で作っているんですよね。
株本
そうですね。先ほどご紹介した年収チャンネルも実は自社メディアではなく、オーナーが別でいて、そこからの受託で作っている新規事業という感じです。
※トーク開始前に、スポンサーである同社のサービスをご紹介いただいていました。
うちではだいたい30本くらい、一番低くて2~3千万、大きいやつだと1億前後の額(の依頼)をまるっと預けてもらって、それをPMごと巻き取ってフリーランスで回すという形を取っています。
結果が出なければそのまま切れるので、社員と違って撤退リスクが低い、撤退しやすいという理由でやっていることが多いです。
冨岡
年収チャンネルは初めてからどのくらいの期間でどのくらいのUUと会員数なんですか?
株本
年収チャンネルは初めてから7~8か月くらいです。学生のリストはチャンネル登録で3万人、LINEでリストを取っているもので1万5千人とかです。
投資は累計で7~8百万円くらいですね。
冨岡
となると、たとえばM&Aでメディアを買うのと、年収チャンネルを一緒に立ち上げるのではどっちがいいんだという比較もできるわけですね。
そういうことも検討されるといいかもしれませんね。
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